世界屈指のショットメーカーながら、長くパットに悩んできたアダム・スコットが好調だ。今年のパッティングの指標は大幅改善。その理由は、新ルールで推奨される「ピン差しパット」にあった!

すべてのパットを「ピン差し」で行う

“ショットはいいのに、パットがね〜”……この苦悩のつぶやきが世界の誰よりも切実なのが、ショットメーカー、ベストスウィンガーとして世界でも1〜2を競うアダム・スコットだ。彼は約10年以上に渡りパットに苦しみ、長尺シャフトを使用するようになってマスターズでメジャー初優勝、世界ランク1位の座にもついたものの、やはり今でもパッティングに悩みを抱え続けている。

パターを変え、ライン読みに「エイムポイント」を活用しても、彼のショット力に見合うだけのパッティングができていないのが正直なところだ。

しかし、今年の彼のパッティングのスタッツを見ると、昨シーズンはストロークゲインド・パッティング(編注:パッティングのスコアに対する貢献度)の部門において-.285でツアー165位だったのが、今年はなんと .754で24位と急上昇している。これは一体どうしたことか。

今年のルール改正で「カップにピンを差したままプレーすることが可能」となったが、彼はこのルールを最大限に利用し、ロングパットのみならず、ショートパットもほとんどすべてピンを差したままパッティングしている。

ツアーのほとんどの選手たちが「ロングパットで、しかも下りのパットの場合はピンを挿すこともあるかもしれないが、基本的にはやりたいとは思わない」というのに対し、アダムは全パットにおいてピン差しパットをやる、と自身初戦のソニーオープンの練習日に宣言していたのだ。

画像: ショート、ロングパット、すべてのパッティングにおいてピンを挿したまま行っている(撮影/有原裕晶)

ショート、ロングパット、すべてのパッティングにおいてピンを挿したまま行っている(撮影/有原裕晶)

他のルール(例えばヒザの高さでのドロップなど)においては、普段はおっとり、穏やかに語るアダムにしては珍しく、手振り身振りを交えてやや興奮気味に「こんなルールはバカげている。ニーハイドロップなんかかっこ悪いし、なにもドロップなんてする必要はない。リプレースでいいはずだ!」と語気荒く語っていたが、ピン差しパットに関してだけは「(ピン差しは)全部やるよ!」と非常に肯定的に語っていたのにはつい笑ってしまった。

本人としてはこの「ピン差しパット」を、少しでもパットが入るように! と藁をもすがる思いでやってみようと思ったのだろう。それが今のところ功を奏し、劇的にパットが決まっている。先週のファーマーズインシュランスオープンに至っては、2日間連続で28パットを記録し、ストロークゲインドパッティングで全体の14位にランクしていた。その理由をアダムは次のように語っている。

「ボクと一緒に回る選手たちの多くはなぜピンを差してパッティングするのか?と聞いてくるが、実際それに対するいい答えはないんだ。科学的な回答は、ブライソン(・デシャンボー)に聞けばわかると思う。ただボクはカップの真ん中を狙う時に、真ん中に差さっているピンがあったほうが狙いやすいんじゃないかとは思ってるんだ。

(ピン差しパットが)入るのは、科学的なことよりも心理的なものが大きいのかもしれない。それも実証はできないけどね。ピンが差さっている状態というのは、バックボードがあるようなもの。切れるラインだったり、あるいは真っすぐなラインだったら、ピンに対して直角に狙っていく。それに途中で切れそうなラインの時は、左端と左側のスペースの真ん中との間を狙えばいい、というようにさらに狙い所を定めやすい」

画像: ピンを差したままパッティングしたほうが狙い所を定めやすいと話すアダム・スコット(撮影/有原裕晶)

ピンを差したままパッティングしたほうが狙い所を定めやすいと話すアダム・スコット(撮影/有原裕晶)

タイガー・ウッズは予選ラウンドの2日間をアダム・スコットの後ろの組で回っていたので、彼がピンを差しながらプレーしているのを見ていたが、自分もやってみようとは思わなかったようだ。だが、ここまでアダムのパットが劇的に決まっているなら、考え方を変えて「自分も取り入れてみよう」と思う選手も増えるかもしれない。

しかし、そもそものルール改正の目的である「スピーディにゴルフをする」という観点で言うと、他の選手がピンを抜いてパッティングしているところへ、わざわざいちいち差し直してパッティングする、と言うのは逆に時間がかることになるのではないか? と言う疑問も生じる。ニーハイドロップも含めこのルールもまた、時間を経て変更になる可能性もあるかもしれない、と個人的には思う。

TEXT/Eiko Oizumi

HONMA

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