ピンが前後左右に振られて、グリーンは速く硬くて止まらない。そういうシビアなツアーセッティングでも、ここという場面ではピンを狙わなければスコアを伸ばせず、層が厚い上位グループに食い込めない。それが現在の女子ツアーだ。状況に応じて、球筋や弾道の高さ、スピン量、距離をコントロールする技術と精度が求められるステージなのだ。
「ボールの位置が変わることによって弾道をコントロールできます。ただし、ボールをただ単に“右足寄り”や“左足寄り”にセットするわけじゃありません。たとえば、単純に左足寄りにボールを置いちゃうと、右肩が下がってヘッドがアッパーに入るし、フェースがかぶって当たる。そうすると、球が“左上”に飛んでしまいます」(河本)
そこで練習のときに取り組んでいるのが、“自分が回る”ことだと言う。ボールに対して自分が右回り(反時計回り)に動けば、ターゲットに対してオープンスタンスとなり、自ずとカット気味に振れる。反対に、ボールを中心に左回り(時計回り)に動けば、ターゲットに対してクローズスタンスとなり自ずとイン→アウト気味に振れる。目澤コーチはこう解説する。
「正面の定位置からボールのポジションを見比べると、前者(右回り)は左寄りに、後者(左回り)は右寄りにセットしているように見えるのです。このようにスタンスや軌道が変わっても、フェースをターゲットに向けておけば、その方向に球が出ます。自分が右に回ってカット気味に打てば、球筋はフェード系、弾道は高め、スピン量は多め、距離はやや落とせる。自分が左に回れば、その逆になります」
河本の場合、SWでカット気味に打つとキャリー65Yくらい、イン→アウト気味に打つと85~90Yくらい飛ぶという。
「試合のときは基本的に、自分が左に回って打つドロー系はピンポジションが左奥とか2段グリーンの奥といった、スピンを抑えて手前から行っていいときしかやりません。とにかく、プレッシャーがかかる試合でも自然にこのやり方ができる脳ミソになるまで、メッチャ時間がかかったんです。でも、このやり方が身について、ゴルフが超シンプルになりました」
目澤コーチはそのメリットを話す。
「自分が回ることによって、結果的にボール位置や軌道が変わる。スウィングをいじるのではなく、常に“ワンモーション”でゴルフができるということです。アマチュアの皆さんも、初めは複雑に感じると思いますが、やってみるとすごくシンプルなはず。セットアップしたときに、球をコントロールするためにやることは終わっているのですから。それをスウィングの細かい動きで調整するのは難しくて、毎日のように練習してないといけないし、プロでもカンタンではないと思います」
撮影/有原裕晶