不安を伴う技術は使わない
特殊な技術は迷う「心」、不安な「心」が出てこないように使うものです。これは球筋を打ち分けるときも同じです。基本的に、球筋を打ち分けるほうが、それをしないときよりも安心感がなくてはいけません。
たとえば、右にOBがあったとき、右に行かないように打てる技術のある人はそれを使います。それは、その技術を使ったほうが安心して打てるからです。
それと同じように球筋を打ち分けることで安心感が持てて初めて、ピンポジション別のマネジメントは生きてくる。球筋を打ち分けようとしたときに、普通に打つよりも難しいとか、ミスするんじゃないかと思っているようでは、失敗するために頭と技術を使っているようなもの。それではせっかくのマネジメントが無意味になってしまいます。
いくら練習場で自在に球筋を打ち分けられても、本番で不安を感じるようなら、それはやはり基本どおり、いつもと同じ球でピンの反対側、つまり、ピンが右のときは左、左のときは右、奥のときはその手前、手前のときはその奥を狙ったほうがいいのです。
ピンポジションによって球筋を打ち分けるというのは、ちょっと高度なマネジメントであって、あくまでそうすることによってメリットのある人のためのものです。基本的にほとんどのアマチュアの場合、ピンポジションによって、どうしても球筋を打ち分けなければいけないという状況、そうすることでワンストロークを縮めなければいけない状況というのは少ないと思います。
もちろん、それでは面白くない。もっと高度なテク ニックにも挑戦したいというレベルの人もいるでしょう。その場合にはミスが出る危険性も承知した上で使うべきだし、基本的には安心して使えるようになるくらいまで練習して欲しいと思います。
プレー前に集められる 情報は集めておく
ピンポジションを考えて攻めるためには、ホールごとにピンがどこに切ってあるのか、事前に確認をしておくことも大切です。
基本的にどこのコースでも、曜日ごと、もしくは週ごとにピンポジションを変えています。ピンを切る位置は、真ん中、手前、奥というように3分割していることもあるし、それを左右に分けて6分割していることもあります。
このとき、18ホールすべてが手前のピンだったり、すべてが奥のピンだったりすることはありません。ホールによって手前、奥、真ん中、左右がある程度分かれている。これを前もって把握してプレーするのです。状況にもよりますが、グリーンを狙う段階になって、「うわあ、ここはピンが手前なのか」なんて気づくと、心がざわついたりする。そういうことを避けたいわけです。
ゴルフというスポーツは、距離、風、ライなど、判断しなくてはいけないことがいっぱいあります。そういうことを、打つ段階になってあれこれ考えていたら、不安や迷いが生まれやすい。
ピンポジションで言えば、どのように攻めたらいいかを、その場になって考えているようでは「心」が出てきて上手くいかなくなる可能性もあります。攻め方を 速やかに判断して、球筋をイメージしたら、心が出てくる前にスウィングする。そのためには、前もって集められる情報は、なるべく集めておいたほうがいいわけです。
「本番に強くなるゴルフ」(ゴルフダイジェスト新書)より
撮影/岩井基剛