最近では当たり前になってきたゴルフクラブの調整機能。弾道を変えるためのもの……と思いがちだが、実はもうひとつの「使い方」があるという。
低重心だけを極めてもボールは遠くに飛ばない
ゴルフクラブの説明書きを読んでいると、つい誤解してしまうことがある。たとえば低重心化という言葉。説明書きの多くに「低重心化を促進すると飛距離が出る」と書いてあるので、つい重心は低いほうがいいに決まっている!と早合点してしまうのだが、実際、開発者の話をよく聞いてみるとかなりニュアンスが違っていることに気づく。
「重心を深くするとフェース面上の重心が上がってしまうのが普通。でも、このクラブではクラウンを軽量のカーボンにし、ウェートをソールに集める努力をしているので大丈夫です。重心高さはこれによって適正に保たれています」と説明されることが多いのだ。決して、今は低重心ほどいいとはいっていないはずなのである。
数年前に、バックスピンを減らすことを目的に、ドライバーの重心をフェース方向に近づけた“浅重心”設計が流行った時期があったが、この作戦はうまくいかなかった。なぜなら、これによってバックスピンは減っても、いつもと同じロフトではボールが上がらずキャリーが出せなかったからだ。もちろんメーカーはこれを見越して“ロフト・アップ!”と、いつもよりも2度〜4度ロフトのついたヘッドを使うことを推奨したが、残念ながら12度や14度のドライバーはゴルファーには受け入れられなかったのだ。
効率よくボールを飛ばすには、ボール初速・打ち出し角度・バックスピンのバランスが“適正”になっていることが重要。低重心化を極め、バックスピンを減らしても、打ち出し角度が適正でなければ飛ばないのである。
自分の打点がわかれば、調整機能もシンプルに使える
さて、すっかり前置きが長くなったが、言いたいことは、最新のゴルフクラブは“適正”、“バランス”というワードを頭の片隅においてみてみるとよいのではないか?ということである。たとえば、モデル数がたくさんあって悩んでしまうアイアンも、自分の打点傾向(フェースの下目で当たるか、上目で当たるか)を把握し、フェース下ヒットが多ければ低重心のモデルを試してみる。それがインパクト条件のバランスをとり、弾道を適正化する早道だからだ。
難しいイメージのするメタルウッドのウェート可変機能も、自分の打点に重心(芯)を近づけるために使う、と考えればシンプルになる。写真のタイトリスト TS3ドライバーはソール後方にウェートバーが装着されているが、これがフェースの左右方向への重心移動を行うための機能だ。打点がトウにズレていれば、このバーのウェイトをトウ・バランスにする。こうすることで打点に重心が近づいて効率よく飛ばせるようになるのである。
クラブの性格を知るとともに自分の状況を知る努力もする。そうすればどんなクラブを買えばいいのか、あるいはどんな調整をすればいいのかがわかってくるはずである。自分を知るひとつのポイントが“打点”。それがわかれば近い重心のクラブを探す、あるいは芯が打点に近づくように調整を加える。そうすることでインパクト条件は適正化し、バランス良く安定して飛ばせるようになるのである。