女子ツアーの場合、3日間競技であれば、試合が行われるのは週末の金、土、日曜。月曜が移動日で火曜と水曜が練習日、木曜がプロアマ戦というのが通常のスケジュールだ。選手は練習日からコースへ入り、ドライビングレンジやアプローチ練習場、練習グリーンで調整したり、コースへ出て練習ラウンドを行う。
その練習ラウンドでは、キャディは試合に向けてどんな準備をしているのだろう。木村翔キャディに聞いてみると、
「多くの試合は大会ごとに開催されるコースは毎年同じで、ピンポジションも毎年同じような位置に切られます。初日はここで、2日目はここらへん、みたいな。キャディも選手もコースとピンポジをおおむね把握しているので、練習ラウンドで3日間の戦略をある程度、立てることができるんです。あとは細かいチェックですよね。たとえば、去年よりラフが少し深くなっているねとか、新しいバンカーができているとか」(木村、以下同)。
ただ、出場するすべての女子プロが練習日の2日間とも18ホールをラウンドするとは限らない。ショットの調整を重点的にやりたいとか、アウトとインを2日に分けて練習ラウンドを行うプロもいる。
「たとえば、プロが午後コースへ来て、ハーフだけラウンドするというときは、(自分は)午前中からコースへ来て、その日ラウンドしないほうの9ホールを、一人で歩いて回ることもあります。新設された試合とか、開催コースが前年と変更になって、まったく知らないコースだったりすれば、より入念に隅から隅まで細かくチェックしないといけないので、そういうときも空いた時間に一人で歩いて回ります」
練習ラウンドではその試合でバッグを担ぐ選手の飛距離や球筋を考えながら、すべてのホールの攻略ルートを組み立てていくのだとか。
「飛距離の出る人、出ない人。ドローが持ち球の選手もいれば、フェードが持ち球の選手もいます。ボク自身もずっとゴルフをやってきたので、選手との練習ラウンドや一人でコースを歩いて回るときは、その選手の気持ちになって、このホールのティショットはあそこの木をターゲットにしようとか、目印になるものを探すんです。ボクが気を付けているのは、できる限り難しくならないように、選手にストレスがかからない攻略ルートを組み立てることです」
コース設計家が設定したベストルートが、必ずしもすべての選手のベストではないと木村キャディ。「たとえば、グリーンを狙う場合でも、選手は持ち球によって好きなアングル、嫌いなアングルがあるし、ピン位置の得意不得意もあります。それぞれの選手にとってのベストルート、ベストポジションを見つけて、いかに選手に気持ちよくラウンドしてもらうか。常にそれを考えているんです」。
距離や力加減の微妙な調節が必要になるような、複雑な攻略ルートにならないようにも気を付けていると木村キャディ。
「たとえば、今季の開幕戦で優勝した比嘉真美子プロなどは、持ち球がほぼストレートで、いつでもマン振りしていくタイプ。基本的に女子プロにはそういうタイプの選手が多いですね。100%で振ろうとすれば、100%以上にはならないし、スウィングがゆるむこともないですよね。これが80%で振ろうと考えると、それが90%にもなれば、70%にもなってしまう。100%のほうが選手も迷いなく振れるし、再現性も高くなります。選手が常に100%で攻めていけるように攻略ルートを考えるし、選手にもできる限り加減をしないようにとアドバイスしたりもします。これはアマチュアの方にも参考になると思います」