トーナメント中継にはよくショット前にキャディが選手に助言しているシーンが映し出されるが、一体どんなことを伝えているのだろうか? 今シーズンキャリア5年目を迎えるプロキャディ・木村翔に聞いてみた。

「右OBが浅い」ことをプロにどう伝えるか?

テレビで女子プロのトーナメント中継を見たり、実際に試合会場で観戦していると、ショットの前にキャディがプロに攻め方のアドバイスをしているシーンをよく見かけますよね。ああいうときって、いったいどんなやり取りがされているのだろう。

そこで、今シーズンでプロキャディ5年目を迎える木村翔さんに聞いてみた。ちなみに、木村キャディの母親は、かつて国内女子ツアーで通算10勝を挙げた木村敏美プロ。小学6年生のときに『NEC軽井沢72ゴルフトーナメント』で母親のバックを担いだのが初めてのキャディ体験だ。

画像: ショット前、どんなやり取りが交わされている?(写真は2018年のアース・モンダミンカップでのペ・ヒギョンとキャディの木村 撮影/岡沢裕行)

ショット前、どんなやり取りが交わされている?(写真は2018年のアース・モンダミンカップでのペ・ヒギョンとキャディの木村 撮影/岡沢裕行)

埼玉栄高校卒業後は半年間、オーストラリアに留学。その後、ミズノに就職し、養老工場でクラフトマンをしていたが1年で“脱サラ”。2015年からプロキャディとして、主に女子プロのバッグを担いでいる。

「プロにはそれぞれ持ち球があるので、それを考慮しながら、どう狙ったらいいかをアドバイスします。あくまでもボクの場合ですが、たとえばティショットだと、女子ツアーはセッティングがシビアな数試合を除いて、フェアウェイさえしっかりとらえていれば、グリーンを狙えないことはありません。だから、基本の狙いはフェアウェイのセンター。そこへ運ぶために、どこへボールを打ち出していくのがベストかを、風の状況などを考えながらアドバイスしています」(木村、以下同)。

木村キャディのように、専属契約のプロを持たないプロキャディの場合、試合ごとにバッグを担ぐ選手が変わるので、アドバイスの仕方も当然、変わってくるという。

「たとえば、右から何本目の木とか、狙いをきっちり絞ったほうがいいタイプの選手もいれば、わりとアバウトに狙いを広くしたほうがいいタイプの選手もいます。基本的には、狙いをきっちり絞ってアドバイスしたほうがいい選手が、女子プロには多いですね」。

そのほうが、いまから打つべきショットを明確にイメージしやすいのだろう。アマチュアゴルファーはコースでもスウィングのことばかりが気になって、どんな球筋でどう狙っていくかがアバウトになりがち。狙いを狭く絞って、しっかり球筋をイメージしたほうが、結果としてスウィングも良くなりやすいのだ。

また、プロに狙い方をアドバイスするときに、木村キャディが気をつけていることがあるという。

「極力、余計な情報をプロに与えないようにしていますね。たとえば、右のOBが浅いホールのティショットで、『右にOBがあるから気をつけて』というような言い方をしてしまうと、プロに右OBを余計に印象づけることになってしまいます。右には絶対に打っちゃいけないような状況では、『左から風が吹いているみたい』とか、右へのミスに対してほんの少し警戒を促すようにします。実際には左から風が吹いていないときもありますよ。プロに思いきりよくスウィングしてもらうために、状況によってはそんなちょっとしたウソをつくこともあるんです」

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