賞金ランクとの相関がもっとも高いのはパー5の数値だが……
マスターズ優勝でグランドスラム達成となるロリー・マキロイが絶好調だ。私はゴルフファンに一押しプレイヤーを聞かれるたびに迷いなくマキロイと答えて続けてきた。2019年に入ってからの最近の6試合でも、全試合で6位以内という驚異の安定感を残しているだけに、マキロイがいよいよ本格化したのかと期待してしまう。
その安定感は何から生まれているのか2019シーズンのスタッツから紐解いてみる。
これだけの安定感なので、ある程度高いレベルでのバランスのいいスタッツを想像ができる。「パー5を制する者はゴルフを制する」、私が長年にわたりスタッツ分析をしてきて、はっきりと言えることだ。今回のマキロイも当然その通りのスタッツだろうと予想していた。
ただ、実際スタッツを見ていると、最もランキングに相関するパー5のスタッツは思っていたレベルではなく、ある程度の水準ではあるものの、マキロイのここまでの成績から想定されるレベルよりは低かったのだ。これには驚かされた。
パー5での平均スコアは4.58で65位だ。4.58という数値は前年比較だと33位タイに相当する。去年のマキロイの通年の成績は4.51で現時点の2019シーズンよりも良い。にもかかわらず、マキロイは前年よりも明らかに良い成績を収めている。これはスタッツ的には奇妙な現象だ。当然、2019年が終わって最終的なスタッツを見れば例年通り、似通った結果になるだろうが現時点でのマキロイの好調を支えるスタッツは何か? それも分析してみた。
短期間の活躍の場合、パッティング、アプローチの調子がかなり良くて高い次元のゴルフを維持するパターンがあるが、今回のマキロイはどうだろう。パーオン率は72.22%で16位タイと高い水準で、アイアンショットの精度の高さがうかがえる。だが、アプローチの指標は131位と良くない。パットの指標は57位でこれも平均より少しいい程度で、今シーズンの好調の原因にはなりえない。平均飛距離は312.3ヤードで5位だが、フェアウェイキープ率は59.6%で134位だ。飛ばすが曲げる、例年通りと言える。
曲げるが飛ばしてラフから寄せてバーディを奪っていた
いろいろ見ていると、マキロイが1位のスタッツがあった。それはフリンジ(カラー)もグリーンと考えたときのパーオン率だ。79.71%で全体1位、7%以上も通常のパーオン率よりも良くなっている。マキロイはグリーンを広く考え、マネジメントできているということが言えるだろう。
フリンジからのアプローチはトッププロの世界だと通年で100%を記録する選手が多数でるほど、簡単なアプローチだ。マキロイはそれを巧みに使っている、もしくは結果的に使えていたということが、このスタッツから言える。
他の分野で1位とまではいかなくとも、いい数値を出していたのがパー3、パー4の平均スコアだ。パー3では16位、パー4では4位でともにアンダーパーだ。ほとんどのプレーヤーが両方の数値でオーバーパーになることを考えるとこれはなかなか容易なことではない。75~150ヤードのラフからのショット精度平均値も良かった。これはパー4で曲げても距離を出してラフから寄せるというスタイルがはまっているスタッツと言える。
しかし1つの懸念があるとすれば今まで長い期間に渡りパー3、パー4においてアンダーパーで安定させたプレーヤーは極端に少なく、非常に難しいので、安定的にスコアを作るのがもっとも楽なパー5での成績をもう少し上げることはマストになってくる。ここが上がってこないと今後は少し苦しい戦いになってくるだろう。
また、マキロイのように飛ばしてラフから寄せてバーディを奪うスタイルはアマチュアには参考にならない攻め方だが、マキロイ流、フリンジをグリーンとして把握して楽に攻めるというマネージメントは、アマチュアにこそとくに参考になるものだろう。さらに言うなら、アマチュアの方はフリンジだけでなく、花道までもグリーンとしてとらえるぐらいの気持ちで良いだろう。
マキロイは自分の長所、短所を理解し、そのマネジメントがうまくできているということが、スタッツから見受けられる。マスターズをこの調子で制してグランドスラム達成、そしてマキロイ時代突入にするのか? パー5での成績にまだ伸びしろがある中、他でカバーしつつ、これだけの成績を出している現状を考えると、期待は高まるばかりだ。