バルスパー・チャンピオンシップは今年で19回目を迎えるPGAツアーでは比較的新しい大会です。2000年にタンパ・ベイ・クラシックという大会名で始まり、初期の頃は9月や10月など秋開催でWGCやプレジデンツカップと同週開催だったため、なかなかビッグネームが集まりにくい大会でした。2007年からは3月開催になり、年々選手層が厚くなってきている印象です。
2015年大会ではジョーダン・スピースが3人によるプレーオフを制して優勝。勢いに乗って1ヶ月後にマスターズも制しました。昨年はこの大会で2位タイになったP・リードがここで弾みをつけてマスターズ制覇へとつなげました。
昨年同じく2位タイに入ったタイガー・ウッズはマスターズへ向けての準備としてアップダウンのある林間コースという類似点があることから、この大会を初めてスケジュールに組み込んで来ました。近年はマスターズに向けて勢いをつける重要な1戦という位置づけになってきている感じがします。
会場のイニスブルック・リゾートは7340ヤード、パー71。先週のTPCソーグラス同様、フェアウェイが狭くてグリーンが小さく、典型的なショットメーカー向きのコースと言えます。スタッツで言うとストローク・ゲインド(SG)・ティ・トゥ・グリーン(ショットのスコアへの貢献度)が上位の選手が成績でも毎年上位を占めます。ティショットが難しくてグリーンも大きくないので、パーオン率70%を超える選手は毎年わずかしかいません。
このコースはグリーンに向かって打っていくショットのアングルが大事であること、パー3が5ホールあること、パーオン率が比較的低くてグリーン周りのアプローチが大事であることなどを考慮すると、アイアンショットとグリーン周りが上手い選手、スタッツとしてはストローク・ゲインド・アプローチやスクランブリング(編注:パーオンを逃したホールでパーよりいいスコアで上がる確率)などの数値が高い選手がイニスブルックに向いているということになりそうです。
メキシコ選手権の優勝後、再び世界ランキング1位に返り咲いたダスティン・ジョンソンは9年ぶりの参戦です。2008年と2010年と2回出場して2回とも予選落ちを喫していますが、当時とは比べものにならないくらい安定感のある選手へと変化しています。
当時のダスティン・ジョンソンは飛距離はあるけど、グリーン周りやパッティングに難があるタイプの選手でした。現在は飛距離に加えて、アイアンショットの精度、グリーン周りの技術、パッティング、どれを取ってもトップクラスの数字でまったく穴がありません。先週相性があまり良くなかったTPCソーグラスでも初めてトップ10入りして(5位タイ)、今はどの試合に行っても普通にプレーすれば優勝争いをしそうな気配です。
スタッツから見て最もこのコースに向いてそうなひとりがウェブ・シンプソン。フェアウェイキープ率が23位。SG・アプローチは17位。スクランブリングが10位でサンドセーブ率が5位とこのコースで重要だと思われる分野はいずれもトップクラス。2009年から2015年を除いて毎年出場していて、
トップ10に3度入っています。今季は予選落ちもなく非常に安定感が高く、上位争いをするのではないでしょうか。
歴代チャンピオンでもあり、今もっとも勢いのある選手のひとりがベテランのジム・フューリックです。2015年終盤から手首や肩など怪我が相次ぎ、昨年はライダーカップのキャプテンとしての仕事が最優先されたため、なかなか試合に集中しづらいここ数年でした。
2018シーズンの終盤には世界ランキングは300位以下まで落ちましたが、今季は健康状態もすっかり回復し、コンスタントに上位に食い込み、先週のザ・プレーヤーズ選手権の2位で世界ランキングは一気に57位まで上がってきて、次週のWGCマッチプレーの出場権を得ました。
ここからの2試合で50位以内まで上げれば2年ぶりのマスターズ出場権も得ることになります。フェアウェイキープ率は断トツ1位の81.2%で、SG・アプローチ、パーオン率、スクランブリングなどどれを取ってもトップクラスの数字です。今週優勝争いに加わって一気にマスターズ出場権を手繰り寄せることが出来るのか注目です。