オーガスタで必要なものを知っている
タイガー・ウッズはツアー復帰後、出場する試合を絞ってきました。体の調子を見ながら、試合勘を失わないように調整しているように見えます。本人も以前から口にしていますが、目標はジャック・ニクラスのメジャー通算18勝。これにタイガーはあと4勝と迫っており、まずは今シーズンのメジャー初戦、マスターズでの優勝に期待がかかります。
タイガーはこれまでマスターズで4勝を挙げていますが、この経験が大きなアドバンテージなのは間違いありません。
「彼はオーガスタで勝つために必要なものを知っています。これまでの経験から、コース上で起こるさまざまな状況に対応することができるのです」
そう語るのは、かつてタイガーがコーチのハンク・ヘイニーとタッグを組んでいたころ、パッティングコーチを務めたマリウス・フィルマルターです。
私もマスターズの観戦に現地へ行ったことがありますが、山岳コースのような傾斜、グリーンの起伏、そして気まぐれに吹く風などテレビ画面では分からないプレーに影響する要素が多くあります。タイガーはこれまでの経験から、それらに対応する術を持っているのです。
「加えてタイガーのプレースタイルとコースの相性もいい。タイガーはパッティングに関してアーティストのような感性を持っています。そしてメカニカルな要素を融合させるスキルも持っています。十分に勝つ可能性があると考えています」(マリウス)
復帰直後は、クラブの運動量を増やしてオートマチックにボールを打っていましたが、最近では以前のように体でクラブをコントロールしています。また、パッティングも本調子ではありませんが、ジャスティン・トーマスのパッティングコーチ、マット・キレンにチェックを受け調子を上げてくるでしょう。トリッキーなオーガスタではボールを自在に操り、勝負どころのパットを決める強いタイガーの姿が見ることができるでしょう。
ガラスのグリーンを攻略したパッティング
マリウスがタイガーのコーチを務めたのは、2005年頃の全盛期。そのパッティング技術も世界一と言われていて、実際にストローク測定機器での計測上の数値も機械のように理想値を示したそうです。なぜそんな選手が、コーチを付けたのかと思われるかもしれません。
例えば、オーガスタのグリーンのセッティングは、ほかのコースのそれとは大きく異なります。そのためグリップの握り方、ボールポジション、アラインメントなど基礎的な部分をいかに再現性高くセットできるかが非常に重要になるのです。だからこそ高いレベルで再現性を高めていたタイガーも、少しのずれを把握するためにマリウスの指導を受けていたのです。
マリウスはPGAツアーに参戦していた時に、石川遼にもパッティングのアドバイスをしていました。他にもアーニー・エルスやビジェイ・シン、ブラッド・ファクソンら、多くのトップ選手のコーチを務めました。そのマリウスもチェックする基本的な部分はあるものの、パッティングには正解はないと言います。
「たとえば松山英樹のパッティングアドレスが、通常のプレーヤーよりボールに近かったとしましょう。でもそれは彼にとって、もっとも自然のストロークならば問題ありません。正解は人によって違うのです」
マリウスは最近では女子の世界ランクで2位につけるアリア・ジュタヌガンなどにも指導をしたと言います。長年トッププロから高い信頼を得ているのは、プレーヤーのわずかな誤差を見つける確かなる目をもっているからに違いありません。
タイガーをはじめとする世界の一流プレーヤーを指導してきたマリウスの日本初レッスンを今週の週刊ゴルフダイジェストで行っています。タイガーや石川遼に教えたパッティング技術も公開していますので是非ご覧ください!