「ヤマハレディースオープン葛城」で通算12勝目を挙げた成田美寿々。難易度の高いコースの4日間の戦いで見せてくれたのは、安定感抜群の飛距離の出るドライバーショット、ピンを刺すアイアン、入るパッティングと3拍子揃った強い成田美寿々だった。その中でも印象的だったピンを刺すアイアンを、プロゴルファー・中村修が解説。

「不得意コースを克服し、さらに一段成長した」by井上透

画像: ツアー通算12勝目を挙げた成田美寿々(写真は2019年のヤマハレディースオープン 撮影/大澤進二)

ツアー通算12勝目を挙げた成田美寿々(写真は2019年のヤマハレディースオープン 撮影/大澤進二)

見事な勝利を収めた成田選手。苦手な葛城GCを舞台に、実力者のアン・ソンジュ選手を大逆転しての優勝は非常に印象的でした。その勝利について成田選手を指導する井上透コーチに話を聞きました。

「オフの間から、厳しいセッティングでも止められる、キレのあるコントロールショットを続けてきました。大きなスウィング改造をしているのではなく、飛距離の出る体の使い方、トレーニングをしてきましたが、(2オンに成功した)18番のティショットの飛距離、2打目を乗せた5番ウッドのショットには、“さすが成田美寿々だな”と思わされました」

苦手なコース、苦手なコンディションを克服できたことで、プレーヤーとしてのステップを一つ上がったのではと井上コーチ。コーチも下を巻くほどのプレーだったことがわかります。

必殺技は9番アイアンのライン出し

さて、その「ヤマハレディース」の練習日に、成田選手に「得意な距離やショットは?」と質問しました。帰ってきた答えは、「9番アイアンのライン出しです。ピンが左にあるときは、ドローでビタっと行きます」というもの。

実際に最終日の12番ホールは残り115ヤードから左手前の左に切ってあるピン対してビタっとつけてバーディ。16番では残り145ヤードで左奥のピンに対しても約3メートルにつけていました。優勝争いの一打を争うプレッシャーの中これができるんだから、なるほど得意ショットだと深く納得させられました。

では、そのような正確無比なショットをどのように放っているのでしょうか。写真を見ながら解説していきましょう。

まずは画像A。テークバックとダウンスウィングで、それぞれ手の高さが同じポジションにきた瞬間を見比べてみましょう。よく見ると、テークバックのフェースの向き(写真左)とダウンスウィングでのフェースの向き(写真右)が変わっていないことがわかります。

テークバックでフェースを開かないように上げ、その向きをキープしたまま体の回転でダウンスウィングしていることが見てとれます。

画像: 画像A/テークバックのフェース向きとダウンスウィングでのフェースの向きが同じ(写真は2019年ダイキンオーキッド 写真/姉崎正)

画像A/テークバックのフェース向きとダウンスウィングでのフェースの向きが同じ(写真は2019年ダイキンオーキッド 写真/姉崎正)

続いて、画像Bのインパクト直後の画像を見てみると、フェースのターンは抑えられて、急激なターンはしていません。これは、スウィング中フェースの向きはシャット目(開閉せず)に使い体の回転で打つタイプのスウィングをしていることを表しています。

印象的には、ボールを打つというより運んでいるように見えるスウィングで、非常に再現性も高い。だからこそ、左のピンをドローで狙っていけるのでしょう。

画像: 画像B/インパクトでフェースの開閉は少なくボールを運ぶように打つ(写真は2019年ダイキンオーキッド 写真/姉崎正)

画像B/インパクトでフェースの開閉は少なくボールを運ぶように打つ(写真は2019年ダイキンオーキッド 写真/姉崎正)

コーチの井上透氏が「目標にしている年間5勝を達成しない限り現実的ではない」と言う通り、オリンピック出場に向けては来年の6月時点で日本人上位2名の世界ランキングに入ることが絶対条件。チャンスはもちろんありますが、それには今シーズンの大活躍が必要です。

しかし、風やグリーンの速さなど難しいコンディションの中、通算28勝を誇るアン・ソンジュを相手に堂々とピンを攻め4打差を逆転し優勝した成田美寿々選手ならやってくれるんじゃないか。そんなことを感じさせる勝利だったのではないでしょうか。

画像: 女子プロ・幡野夏生のドライバーショットをトラックマンで計測!井上透コーチと本人が徹底解説!~これってどうしてる?#8~ youtu.be

女子プロ・幡野夏生のドライバーショットをトラックマンで計測!井上透コーチと本人が徹底解説!~これってどうしてる?#8~

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