ピンデッドに狙えるプロがミスをする理由
トップクラスのプロが照準を合わせてくるマスターズ。それにもかかわらず、複数回の出場経験がある選手がオーバーパーで予選落ちをしたり、信じられないような大叩きをすることがあります。テレビ中継ではなかなか伝わりにくい、オーガスタの難しさとはどういったところにあるのか。これまで谷原秀人や松山英樹のキャディとして6度、マスターズに出場した進藤大典さんに話を聞きました。
「オーガスタでのラウンドは、まるで採点種目です。コースが緻密に設計されているので、1打目はここ、2打目はここと攻略するルートが決まっていて、選手はいかにそのルートを守ってプレーするかを要求されます」
つまりプレーヤーにとって、常に気の抜けない状況が続く事になります。そしてコースにはそのルートを外させる罠がちりばめられているのです。例えば2016年、ジョーダン・スピースが「7打」を叩いた12番のパー3。ピンが右に切られている場合、ティショットをグリーン中央や左サイドに逃げるという選択肢はないと言います。
「逆サイドにつけると、場所によっては確実に3パットでしかカップインできない地点があります。左には逃げられない上に、上空の風が非常に読みづらい。迷いが出るとスピースのようにふかして距離をロスしてしまうのです」
超高速に仕上げられたグリーン、グリーン周りやフェアウェイの起伏。そして歴戦のプロキャディでも読み切れない風が、選手たちの前に立ちはだかっているのです。
「もしツアーが毎試合オーガスタのようなコンディションだとしたら、選手たちは精神的におかしくなってしまうと思います」
正確無比のコントロール性を持つトッププロたちは、テレビ画面からは感じ取りづらい罠に翻弄されているのです。
コース全体が計算されつくしている
罠がちりばめられているのはコース上だけではありません。18ホールでのスコアメイクという点でも選手を苦しめます。
「出だしの1番ホール。乗せるだけでも難しい砲台グリーンですが、ここでパーをとれれば、次以降ホールでバーディチャンスを“待つ”ことができます。でも1番でボギーをたたくと2番でバーディを“狙い”に行きたくなる。そうするとティショットで左のクリークが頭をよぎり、今度は右のバンカーが効いてくるんです」
その状況でつかまった球を打つのは、トッププロでも相当の精神力が必要です。このように絶対に成功させたいショットが序盤から途切れることはありません。ホール単体で攻略を考えるのではなく、18ホールを臨機応変にマネジメントする能力も求められるのです。
テレビ中継ではダイジェストだったり画面が切り替わるため、コース上の選手の苦悩までは伺い知ることはできません。それでも今回、進藤さんが“ネタバラし”をしてくれた罠に注目をすることで、より一層観戦が楽しくなることは間違いないでしょう。
さらに各ホールごとの難しさなどについても話を聞いてます。発売中の『週刊ゴルフダイジェスト』にて掲載をしていますので、そちらもチェックして眠れない週末を過ごしていただければと思います。