「アイラブユー、タイガー!」タイガーへの歓声がすごい
数ホール離れた場所にいても、その歓声の大きさ、そして強度で“居場所”がわかる。他の選手のプレーを見ていても、吸い寄せられてしまう。マスターズ3日目、その中心には他を圧する存在感で、タイガー・ウッズがいます。
「レッツゴー、タイガー!」「アイラブユー、タイガー!」と、タイガーがスーパーショットを放つたびにパトロンたちから声がかかります。タイガーの復活優勝が観たい。タイガーに勝ってもらいたい。その気持ちが会場全体を覆い尽くしています。
しかし、今大会のデータをひもとくと、優勝の本命はタイガーとは言い難いのが正直なところ。では誰が、となれば、それは現在2打差でトップに立っているフランチェスコ・モリナリとなります。
まず、なんといってもここまでたったのボギーがひとつ。目の前で見ていても、憎たらしいくらいに穴がありません。
タイガーはパーオン率79.63%という極めて高い数字が示す通りアイアンの切れ味に強みがありますが、一方でティショット、パッティングは完璧とは言えません。とくに、勝負のカギを握る1.5〜3メートルのパットの指標を見ると、タイガーが60%なのに対し、モリナリは80%です。
明日は風が吹くことが予想され、その結果グリーン上でのパット勝負となったときに、この20%の差は大きい。タフなコンディションではタイガーの59.52%という低いフェアウェイキープ率(モリナリは78.57%)も不安材料です。
タイガーに集中するであろう歓声、その中でいつも通りのプレーができない懸念はありますが、モリナリはすでに自身が制した昨年の全英オープンでタイガーと同組での優勝争いをすでに経験済み。考えれば考えるほど、穴がありません。メジャーでの優勝経験のないトニー・フィナウはやりにくいかもしれませんが……。
また、最終組がスコアを伸ばせない展開となれば、今日土曜日のウェブ・シンプソンやトニー・フィナウのように、早いスタートで回ってノープレッシャーの中ビッグスコアを出した選手が大まくりをする可能性もありえると思います。
とはいえ、早いスタート、3サム、アウトイン同時スタートの2ウェイ方式となる明日は「いつもと違うマスターズ」。例年以上になにが起こるかわかりません。どんな結末が待っているのか、しかと見届けたいと思います。月曜にサスペンデッドとならない限り、ですが……。
撮影/姉崎正