茨城県鉾田市のザ・ロイヤルゴルフクラブで開催された、第2回「アジア・太平洋女子アマチュア選手権」。3日目を終えて2位と2打差の首位でスタートした安田祐香(18歳)が、7バーディ、ノーボギーの65をマーク。2位の前年度チャンピオン、アタヤ・ティティクルと8打差をつける通算11アンダーでぶっちぎり優勝を果たした。
なお、今大会で優勝したことで今年の女子海外メジャー2大会(エビアン選手権、AIG全英女子オープン)の出場権を獲得。
が今年、日本人でただ一人出場した「オーガスタナショナル女子アマチュア」への出場権も獲得しているが、11月に行われる日本のプロテストに合格すれば辞退することとなる。
「最終日にこんなにスコアを伸ばせるとは思ってなかったし、一緒に回った二人も伸ばしてくるピリピリした展開になると思っていました。集中して出だし3連続バーディがきて、ピンチでもしっかりパーセーブできて、後半に入れたので優勝争いができたんじゃないかな、と思います」
朝イチの練習時から腰の痛みを抱えながらのラウンドとなったが、「今日1日頑張ろうと思った」とスタートした安田は、怒涛の3連続バーディで2位以下を大きく突き放し、ハーフを終えた時点で7打差をつけていた。
「焦らずにフェアウェイキープとグリーンオンをしていれば、バーディチャンスにもつくだろう」と心がけ、冷静にプレー。最後まで決して手綱を緩めることはなかった。もともとプレッシャーは感じるタイプではないというが、最後の1メートル弱のウィニングパットはちょっと緊張したという。優勝直後にはナショナルチームメンバーの吉田優利らにシャンパンファイトならぬ、“ウォーターファイト”で祝福され、表情一つ変えずにプレーしていた安田の表情が笑顔に変わった。
4月は日本人で唯一の出場を果たした第1回「オーガスタナショナル女子アマチュア」で堂々の3位タイに入ったのを皮切りに、海外メディアやゴルフファンにも「日本の安田」の存在感をアピールしたが、こうして同月に開催されたアジアの女子アマNo.1を決める大舞台で圧巻の優勝を遂げることができ、彼女のさらなる活躍は日本だけでなく海外にも多く届く1ヶ月となった。そして7〜8月には人生初の海外メジャーを経験する。
「いつかは出たい試合でした。全英は風とか難しそうですが、日本とは全然違うコースを回って、結果を気にせず自分の実力でどこまでいけるか、自分の実力がわかるので出てみたかったです」
今まではテレビで観ていた夢の舞台を、プロ入り前に経験できる幸せと喜び。令和は「成長の時代にしたい」と語ったが、海外メジャーを経験することでしか得られないこともたくさんある。
自分の今の実力は海外メジャーでも通用するのか、またどんなところを今後はもっと磨かなければいけないのか、飛距離やアイアンショットの精度など、世界で活躍するにはどのくらいのものが求められるのか。
まだ18歳の彼女の前には、数々の試練が待ち受けているだろうが、未知数の可能性も広がっている。安田ならその試練一つ一つに対峙しながら、練習を重ねて自分のものにしていく技術力と精神力がある。
また、今大会で優勝して大きな自信にはなったというが、一方で自分に足りないものが何かを学んだ1週間でもあった。世界女子アマランク10位で、前年度優勝のアタヤ・ティティクル(タイ・16歳)のプレーを目の当たりにし、「彼女はすごい選手だと思ったし、自分には勝てないものがあるな」と感じたという。
ティショットでドローやフェードの打ち分けができること、ミスパットが少ないこと、カップを通り越すくらいのパッティングがつねにできること。「今の自分には足りていない」と冷静に分析する力も備えている。
彼女の尊敬する選手は、元世界ランク1位にもなったことのある実力派のリュウ・ソヨン。日本女子オープンで一緒に回ったことがあり、もう一度回ってみたいという憧れの選手だが、ソヨンもまた常に冷静でショット力の高い選手。安田のイメージにもかぶる部分がある。強く応援される選手を目指したいという安田にとっては格好の目標となるだろう。
一見、常に冷静に物静かに見える可憐な容姿の彼女だが、コースを離れると意外と「落ち着いてない(笑)」性格らしい。
「今週は日本開催だし、注目を浴びるというのはとても嬉しい」と語り、注目を浴びたり、メディアの取材を受けることを楽しんでいるようだった。いつかは米LPGAツアーの選手となって、海外を転戦する選手になりたいというが、それに備えて英語での質問をできるだけ通訳なしで、自分で答えるようにしたい、という姿勢も見られた。
そして、少々驚きだったのは、優勝直後に日本人選手仲間だけでなく、韓国の選手も彼女を待ち受け、祝福していたことだ。安田だけでなく、他の日本人選手たちにも言えるのだが、日本語、韓国語、英語を交えてクラスメートの友達のようにキャッキャと会話する姿は、過去のプロたちにはあまりみられなかった光景である。
今の時代、世界のアマチュアが幼少の頃から同じ舞台で戦い、顔を合わせることも多いだけに、プロ入りの頃にはすっかり顔なじみになっているから、このようなムードも生まれる。海外ツアーに出ても、すでに自分を認めてくれる友達でありライバルが海外にもいる、というのは、今後の彼女のツアー人生にとって大きな糧となるはずである。
平成最後のアマチュアの大舞台を優勝で締めくくった安田祐香。間違いなく次世代のヒロインであり、プロ入り後も国内外で大いに活躍してくれるに違いない。