女子ツアーのドライビングディスタンスをみると、トップ10に入る選手は240ヤード以上飛ばしている。多くの男性ゴルファーは体格や腕力では負けていないものの、飛距離だけ劣ってしまうのは一体なぜか。プロゴルファー・増田哲仁の著書「これでいいの?これだけで飛ぶの?」から飛距離アップのヒントを紹介。

屈強な男性の犬かきよりも、女性スイマーのゆったりクロールのほうが速い

小柄な女子プロを見ていると、ゆったり振って250ヤードオーバー、という光景をよく目にします。多くの男性アベレージゴルファーは、彼女たちに体格や腕力では負けていないのに、なぜ飛距離だけ劣るのか。

それは、「腕打ち」と「全身スウィング」に違いがあるからです。小柄な女子プロは、道具の性能を活かして全身でスウィングをしているのに対し、体の大きな男性の多くが、道具の性能を無視して腕力で打とうとしています。

画像: 今季のドライビングディスタンス2位の松田鈴英。平均251.21ヤードを飛ばしている(写真は2019年のダイキンオーキッドレディス 撮影/姉崎正)

今季のドライビングディスタンス2位の松田鈴英。平均251.21ヤードを飛ばしている(写真は2019年のダイキンオーキッドレディス 撮影/姉崎正)

前述したとおり、スウィング中は、腕を振ることより、足先から手先までを連動させ、全身でアーク(ヘッドで描く円)を大きくすることが重要です。アークが大きくなれば、ヘッドがボールに伝えるパワーも多くなる。これは力学上、当然のことです。

たとえば、棚の上にあるモノが取れないとき、人は背伸びをして目いっぱい腕を上げますよね。それと同じように、体が小さいゴルファーは、トップで左足かかとをフォローで右足かかとを浮かしてでも、アークを大きくすれば、飛距離は確実にアップします。

クラブの性能を活かす「ゆったりクロール」で飛ばす

水泳にたとえるなら、「腕打ち」は犬掻きです。力を込めて腕だけじたばた動かしても、なかなか前進しない。

対する「全身スウィング」は、ゆったりしたクロール。屈強な男性の犬掻きより、女子スイマーのクロールのほうがはるかに速い。

力いっぱい腕の振りを速くしたほうが飛ぶと思うかもしれませんが、「ゆったりスウィング」のほうが、クラブの性能を十分に引き出せます。今のクラブは、シャフトもカーボンで柔らかく、ムチのようにしなりがあります。ですから、腕力で「叩く」意識がなくても、全身で「振る」意識さえあれば遠くへ、正確に飛ばせるのです。

また、練習場の平らなライで、ある1カ所に置かれた球を打つことなら「腕打ち」でもできますが、ライが微妙に傾斜していたり、球の位置がズレたりすると、たちまちミスショットするという欠点があります。急なつま先下がりのライで空振りする人などは、たいていが「腕打ち」のアマチュアです。

画像: クラブを逆さに持って素振りすれば、腕打ちの人、手首をこねてしまう人、体重移動が上手くできない人には効果てきめん。握力があまり使えない状態にすると、全身の筋肉で飛ばすことが自然に身につく

クラブを逆さに持って素振りすれば、腕打ちの人、手首をこねてしまう人、体重移動が上手くできない人には効果てきめん。握力があまり使えない状態にすると、全身の筋肉で飛ばすことが自然に身につく

それを改善するために、練習場では方向やスタンスは同じまま、球の位置だけ変えて、どれも真っすぐに飛ばす練習をしてみてください。クラブはミドルアイアン。飛距離はまちまちでも、真っすぐ飛ばせば本番でもケガが少なくて済みます。

自分のベストポジションから飛球線なりに球1個分だけ前にズラして打ってみる。それができるようになったら、さらに球1個分前後にズラす。そして、 体の近くや遠くへ置いても目標方向へ自在に飛ばせるようになれば、いつの間にか「腕打ち」の傾向は弱まり、「全身スウィング」で球を飛ばせるようになっているはずです。

まずは、全身を躍動させて、気持ちよく振ってみること。最初はミスショットが出ますが、それでいいのです。芯に当てることに気を奪われて小さくまとまらず、自然に球を捉えるようになるまで、大きなスウィングを続けてみてください。遠回りしているように見えて、実は、それこそが、飛距離もスコアも未知の領域へたどり着く近道なのです。

「これでいいの?これだけで飛ぶの?」(ゴルフダイジェスト新書)より

撮影/小林司

画像: あなたのドライバーが芯を食わないのはなぜ?アマチュアに多いドライバーの勘違い、教えます youtu.be

あなたのドライバーが芯を食わないのはなぜ?アマチュアに多いドライバーの勘違い、教えます

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