重さの感覚さえ合えば、十分使えるTWアイアン
タイガー・ウッズと同じアイアンを自分も使えるだろうか? と考えるアマチュアは多いだろう。使える=青天井に飛ぶということでなければ、基本的には誰もが使えるヘッドであるといえるだろう。あえて“ヘッド”と書いたのは、ダイナミックゴールド・ツアーイシュースチールが装着された本モデルの重さ(#5 総重量約435g/D3)には、振れる/振れないがあるだろうと思うからだ。
正直に言えば、長さが45インチ以上あって、総重量300グラム以下のドライバーと組み合わせるには、少し重たすぎるアイアンのスペックだ。振り感が違いすぎて、ドライバーの調子がいい時ほどアイアンのダフリが増えそうな感じである。
ちなみにタイガー・ウッズのドライバーは、テーラーメイドのM5にディアマナD+60(硬さTX)を装着したもの。総重量的には320グラムを超えるだろう。こうしたドライバーが、感覚的に“ヘビー”だと感じるようであれば、今回のTWアイアンもいささかトゥ・マッチ・ヘビーとなるような気がする。
繰り返して書くが、ハードではなく、“ヘビー”だと感じる人はいるだろうと思う。ヘッド自体はロフトも#7で35度とノーマルロフトに近いので、使えない、ということはまったくない。むしろしっかりスピンも入って安定した結果が望めそうだ。
新時代は自分の打点に興味を持ってみてはどうだろう?
このテーラーメイド初のタイガーモデル『P・7TW』は、ご覧のように正統派マッスルに見えて、番手ごとにタングステンウェイトが圧入されている。こうしたオールドタイプのブレードアイアンに高比重金属を埋め込むのはこれが初めてではなく、むしろナイキ時代に製作されたウッズ専用『Vrプロ・フォージドTWプロト』の構造を今モデルでも踏襲したカタチだ。
ナイキ時代に開発担当に聞いたところでは、「ウッズのアイアン打点を分析したところ、ややトゥ打点だった。この打点にヘッド重心を近づけるために、タングステンウェイトを番手別配置した」とのことだった。ネック長もあるブレードアイアンはヒール重心/高重心になりやすいが、バックフェースにタングステンを埋め込むことで、重心を少しだけフェースセンター方向に移動したのである。
「打点にヘッド重心を合わせる」。
実はこれが最近のトレンドである。タイトリストの『ボーケイデザインフォージドウェッジ』は、ブレード内部に軽いチタンや重たいタングステンを鍛造配置することで、各ロフトの重心をフェースセンター付近に持ってきている。これもウェッジショットの打点とヘッド重心を近づけるための工夫だ。
また、テーラーメイドの『M5』やピンの『G410 PLUS』など動かせるウェイト機能を有するドライバーでも、打点にヘッド重心を近づけるためにウェイトを移動させる、という説明をしている。ウェイトの可変はドローやフェードといった弾道調整のために使うイメージがあるかもしれないが、現在では打点とヘッド重心を近づけることに使われる。そうすることでエネルギーロスが少なく、余計なギア効果も発生しないため、直進性の高い弾道が生み出せるとされているのだ。
もちろん、ウッズがアイアンの打点とヘッド重心を一致させ、とにかくまっすぐにボールを打ちたい! などと思ってはいないことは明らかだ。スピンコントロールして、ボールを曲げていく、それが王者の真骨頂だからである。それでも、従来の形状だけで行うヘッド設計では、自身の打点とヘッド重心が離れ過ぎていた。曲げたくないショットでもわずかにサイドスピンが入ってしまっていたのではないかと推察する。
「打点にヘッド重心を合わせる」ことで、安定感を高め、効率のよい結果を導き出すのが、直近の30年を経て編み出されてきた現代クラブの基本である。では、あなたは自分の打点を知っているだろうか? 最適な道具選びのため、望んでいる打球結果を得るためにも、迎えた新しい「令和」の時代は、自分の打点を知ることから始めてみてはいかがだろうか?