「不屈の闘志。こんな男は他にいない」とタイガーを称えた大統領だったが……
日本もそうだが5月のワシントンDCは素晴らしい。授与式が行われたホワイトハウスのローズガーデンには白バラやマグノリア(モクレン)がたわわに実りやさしい日差しが木々を通して地上に差す、
えもいわれぬ穏やかな午後だった。
マスターズでの復活優勝に「不屈の闘志。こんな男は他にいない」と称えたトランプ大統領はさっそく美しく輝く勲章をタイガーにかけるのだが、どうもうまくいかない。左側のリボンがねじれてゆがみ、さまにならない。
なぜだ? 大統領が仮に不器用なのだとしたら誰かがきちんとメダルのかけ方をレクチャーすべきだったのではないか?
そんな思いをよそに感動的なセレモニーはつつがなく執り行われ、タイガーは「良いときも悪いときも支え続けてくれた皆さんに感謝します。初めてマスターズに優勝した97年、そこには父がいました。22年が経った今年父はおらず母や子供たちが出迎えてくれました。今回の復活優勝は自分のゴルフ人生のハイライトです」とスピーチ。
ときに母クルティダさんの話になると「ママ、愛しているよ」と目を見て思いを伝え、会場を埋めた100名のゲストを感動させた。
だからこそリボンのねじれが気になる! 気になって仕方ない。
まぁ、終わってしまったことは仕方ないので話を進めるとゴルフ界でこの勲章を受けたのはアーノルド・パーマー、ジャック・ニクラス、チャーリー・シフォードについで4人目。パーマーとシフォードはすでにこの世を去っている。
タイガーにとってシフォードへの思い入れは強い。黒人初のプロゴルファーである彼が道を切り開いてくれたからこそアフリカ系の血を引くタイガーもゴルフという世界で名声を築くことができたのだ。
シフォードが自由勲章を授与されたのは黒人初の大統領オバマ氏から。92歳でこの世を去る8週間前のできごとだった。
「僕にとって彼は本物のおじいちゃんのような存在でした。息子のチャーリーという名前はシフォードのファーストネームをいただいたもの」(タイガー)
シフォードもタイガーの父アールさんも人種差別と闘い不屈の闘志を身につけた人物。タイガーの11年ぶりのメジャー復活優勝には脈々と闘いの歴史が引き継がれていたことが改めて浮き彫りになった。
こんなに素敵なセレモニーだったに願わくばリボンがねじれていないタイガーが見たかった。しつこくてすみません。