先の見えない闘病生活のなかで憧れの人が励ましてくれたら? それほど心強いことはないだろう。タイガー・ウッズはマスターズでメジャー復活優勝を飾る直前、大腸ガンと闘う女性にビデオレターを送り励ましていた。

仲間の頼みに「協力するよ。自分にとっても必要なことなんだ」

米ツアーでアフリカ系の血を引くアメリカ人は現在タイガーとハロルド・ヴァーナー3世の2人だけ。「タイガーの一番のファン」を自認し練習ラウンドをよくともにするヴァーナーだが「これまでタイガーに頼みごとをしたことがなかった」という。

だがジュニア時代をともに過ごし名門ウェイクフォレストのゴルフ部で活躍した同じ年(29歳)のダニエル・メグスさんのことを思うと居ても立ってもいられなかった。大腸ガンで闘病中の彼女を励ますにはどうすればいいのか?

意を決してタイガーにメグスさんのことを話すと「協力するよ。自分にとっても必要なことなんだ」
とビデオレターを送って欲しいというヴァーナーの申し出を快諾してくれたというのだ。

「で、マスターズ直前に届いたビデオレターに感動した。最高に素晴らしいメッセージだった」(ヴァーナー)

17秒と決して長いメッセージではなかった。だがそこにすべてが詰まっていた。

画像: マスターズ直前に大腸ガンと闘う女性へビデオレターを送っていたというタイガー(写真は2019年のマスターズ 撮影/姉崎正)

マスターズ直前に大腸ガンと闘う女性へビデオレターを送っていたというタイガー(写真は2019年のマスターズ 撮影/姉崎正)

「ダニエル(メグスさん)、苦しい時期を過ごしていると思うけれど僕が君のことを応援していること、覚えておいて欲しい。強い気持ちを持って闘うことを止めないで! 一番大事なのは希望を失わないこと。我々にとってキミはインスピレーションなんだ。頑張って欲しい。お大事にね」

ヴァーナーによるとそのレターを受け取ったときメグスさんはタイガーがマスターズで勝つと予言したのだという。予言が現実となったときヴァーナーはメグスさんに電話をかけたが、2人は20秒間言葉が出なかったという。

「2人とも泣いていた。いろいろな思いがこみ上げてきて言葉にならなかった」(ヴァーナー)

「タイガー自身も腰痛と闘ってきた。想像を絶する辛い時期を乗り越えて再び栄冠を掴んだ。誰もまた彼がマスターズで勝つなんて思っていなかった。でも本人は希望を捨てなかった。それを思うと感慨深い」

徳を積むほど運が巡る。次なるメジャー全米プロに向けタイガーは着々と徳を積んでいるようだ。

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