2年前、渋野の課題は「長い距離からの3パット」だった
「2年くらい前から彼女を教えていますが、その頃はロングパットを簡単に3パットしてしまうのが課題でした。なので、パッティングの不安を解消しようと、今に至るまで取り組んできました」
そう語るのは渋野を指導する青木翔コーチ。渋野と青木の師弟は、2つのドリルを中心的にこの2年間取り組んできたという。ひとつめのドリルは、このようなものだ。
「ティを9本用意して、9つの場所から9球を打つドリルです。最初は1メートル、それが入れば1.5メートル、それが入れば3メートル……といったように距離を伸ばすなどして、9か所からカップインさせるまで終われないというドリルですが、最初終わるまで3時間かかっていたのが、今では30分で終わらせられるようになっています」(青木)
このドリルがユニークなのは、必ずしも9連続でカップインさせる必要はなく、「2回までミスしていい」というルールがあること。最初の1メートルをポロっと外しても続けられるが、その分後半の難しいパットにプレッシャーがかかるというわけ。
いわば9ホール、パー11のコースをプレーするようなもの。あくまでも練習だが、どこか実戦を思わせるプレッシャーを感じながら取り組めるという仕組みだ。
もうひとつ、朝に必ず行う練習があるという。
「ロングパットの練習ですね。7メートル、12メートル、15メートルの位置から、カップを中心とした1メートルの円の中に3球入れる練習です。長い距離からタッチを合わせるために、必ずこれをやってからスタートします」(青木)
サロンパスカップで長い距離のパットを気持ちいいほど決めていた渋野。タネを明かせば答えはシンプルで、きちんと準備をしていたというわけだ。
また、これらの練習はストロークではなく、あくまでも結果にこだわったドリルであることも注目に値する。手先の動きを気にせずに、とにかく目標にフォーカスする。そのことにより、勝負どころのパットでも臆せず入れられるようになったのだ。
コーチと二人三脚で続けた地道の練習の果てに、苦手だったパッティングを武器に変えた渋野日向子。サロンパスカップでは4日間平均飛距離が253.0ヤードと飛距離も十分。黄金世代からまた一人、楽しみな逸材が勝利をつかんだ。