これまで、様々な課題に対応するためのメンタルテクニックをお伝えしてきました。しかし、実際にコースで試しても「なかなかうまくいかなかった」という方も中にはいるかと思います。
ゴルフのスウィングと同じでメンタルも本番だけ意識してもすぐには効果が出にくい場合もあります。実際にプロ選手をサポートするときには試合でうまくメンタルコントロールするために“日常でのメンタルトレーニング”をしてもらうことも多いのです。
実は仕事や家族との関わりなど日常生活から発生するイライラやあせり、プレッシャーなどを対処することはとても効率的なメンタルのトレーニングなるのです。たとえばどんな日常でのメンタルトレーニングがあるかというと、クルマの運転中、これは最高のメンタルトレーニングの場だとプロ選手にお伝えしています。
よく車の運転には性格が出ると言われますよね。少し自分が急いでいる状況で前の車が遅いスピードで走っている場合、あなたはどんな感情になり、どう運転に影響がでますか? イライラして車間距離をつめてしまったり、「遅い!」とイライラが声に出たりする。きっと誰にでもあることです。つまり、私たちは思い通りにいかないことにイライラするのです。
ゴルフでも同じだと思います。「~なショット、~なアプローチ、~なパッティング」をしたいという理想通りにならないことが続くとイライラしますよね。このように日常で起こる感情はゴルフで起こる感情と似通っていることも多いのです。ですので、日常での感情をコントロールする術を身につけることでゴルフ中の感情もコントロールしやすくしていきたいわけです。
それでは、実際に運転中に行えるメンタルテクニックである「アンコントロール」というスキルを紹介していきます。
アンコントロールとは「自分がコントロールできないことに気づくこと」です。たとえば、ある交差点がすごく渋滞し、そこにつかまっています。そんな状況になると「この交差点の青信号短すぎるだろう(怒)」と思いイライラしますよね。
しかし、客観的に考えれば青信号の長さを変えることも、他の車の数を減らすことも自分にコントロールできることではありませんよね。
他にも隣の車線のクルマがウィンカーなしで突然自分の前に車線変更してきて自分がブレーキを踏むことになったら「なんだ、この人。無理やり割り込んできて!(怒)」とイライラします。
しかし、これも客観的に考えるとその割り込んできた人の性格を変えることも運転マナーを変えることもできません。この交差点での渋滞も他人の割り込みも「自分がコントロールできないこと」なのです。私たちはコントロールできないことをどうにかしたいと思ったとき、イライラという感情が起こるのです。
そして、ここで使うメンタルテクニックが先に説明した「アンコントロール」です。交差点の信号の長さも他人の運転マナーも「自分はコントロールできないことに気づく」ことを意識していくわけです。
そうすると、不思議とそれ以上はイライラや焦りの感情は増幅せず、気持ちが落ち着いていくことが体感してもらえると思います。実際に、プロ選手たちは「運転中にアンコントロールだと気づくことでいちいちむかついたりイライラすることが半減しました」という声をもらうことも多いです。
このアンコントロールは筋トレと同じで日常で使えば使うほど思考パターンとして強化され、ゴルフでも使えるようになります。仕事の上司や部下、顧客との人間関係、重要なプレゼンや商談等でも私たちの身の回りには「自分がコントロールできないこと」が数多くあることに気がつくでしょう。
日常から「アンコントロール」を意識することで常日頃から平常心でいられるようにトレーニングし、ゴルフに活かするのも私がおすすめするメンタルトレーニングです。