フェアウェイキープ率がスコアに直結していた
今回も圧倒的な強さで全米プロ連覇の偉業を達成したブルックス・ケプカ。全米オープンも2度制しており、難しいセッティングに非常に強い選手です。
フェアウェイが狭くグリーンも小さい国内男子ツアーダンロップフェニックスでも連覇を達成していることからも、難易度はさらに高いもののべスページ・ブラックコースでの結果に驚きはありません。飛んで正確、ケプカの強さを一言でいえばそんなところでしょうか。
大会のスタッツを見てみると4日間を通したドライビングディスタンスは313ヤード(10位)、最終日は驚異の344.5ヤードを記録しています。ここで、ケプカの4日間の飛距離、フェアウェイキープ率、スコアを見てください。
初日 290.3ヤード/64.29%/63
2日目 311.4ヤード/71.43%/65
3日目 306.8ヤード/50%/70
最終日 344.5ヤード/42.86%/74
見ての通り、飛距離以上にフェアウェイキープ率とスコアの関係がよくわかります。7459ヤードパー70と長く、フェアウェイは狭く、ラフが深い今回のようなセッティングでは、ドライバーショットがフェアウェイをとらえることがとくに重要となります。
もちろん、フェアウェイをキープするだけでは戦えません。飛距離も当然のごとく求められる。結果的に、飛距離と正確性を兼ね備えた選手が勝つ確率が高くなる。飛んで正確なケプカのドライバーは、まさにメジャー王者にふさわしいものと言えるでしょう。
下半身の力で飛ばすから飛んで曲がらない
そんなケプカのスウィングを見てみましょう。
特徴的なのは左手の甲を手の平側に折りフェースをシャットに使う点です。トップでフェースは空を向き、この時点でボールをつかまえる形ができています。ダウンスウィングでクラブをスクェアに“戻す”動きが少なくなるため、より方向性が良くなります。
その一方、飛距離は犠牲になりますが、ケプカの場合恵まれた身体能力で、飛距離を十分以上に補っているのです。注目すべきは、飛ばしのエネルギーの源となる「横への移動」「回転」「縦の地面反力」のバランスです。
画像Aを見てください。ケプカの後ろにいる赤い服の人物に注目すると、トップでの左腰(写真左)が切り返し(写真右)ではターゲット方向に移動していることがわかります。この動きで、クラブを引き下ろしています。
続いて画像B。今度はベルトのバックルに注目して見てみましょう。トップでおよそ右斜め45度方向を向いたバックルは、ダウンスウィングではほぼ正面を向いています。ご覧になってわかるようにこの骨盤の回転はそれほど大きくはありません。
最後に画像Cで地面反力を見てみましょう。インパクト手前(写真左)では左ひざに余裕が見られますが、インパクト後(写真右)ではしっかりと左ひざが伸びています。
以上のことから、ケプカのスウィングは切り返しで横方向の動きを使い、回転力よりは地面反力を大きく使って飛ばすタイプと言えるでしょう。
プロレスラーのような腕の太さに目が行きますが、実際は上体の力に頼るのではなく、下半身の力をエネルギー源にして飛ばしていることが見てとれます。3つの力のすべてをバランス良く取り入れて効率よくスウィングしている印象です。
小手先に頼る動きがまったくないのでプレッシャーに強いのも納得ですし、基本的にはフェースを閉じたまま使うので、安定感にも納得がいきます。圧倒的な飛距離は、日頃のトレーニング、そして追求されたスウィング効率の成果でしょう。
スーパーマンのようなケプカのスウィングで真似できるポイントがあるとすれば、トップでのフェースの向きでしょうか。左手の甲をやや手の平側に折りながら上げ、トップでフェースが開かないことで、ダウンスウィングではフェースを急激に返すことなく振ることができます。
グリップの握り方にもよって開閉する度合いが変わってきますので、ややフックグリップで握ることがポイントになるでしょう。
これで全米プロと全米オープンのタイトルを2つずつ獲得したケプカ。ロリー・マキロイやジョーダン・スピースと並びグランドスラム達成にもっとも近いプレーヤーと言えるでしょう。
連覇がかかる来月の全米オープン、再来月の全英オープンの残り2つのメジャー大会では、いずれも優勝候補の筆頭となること間違いないでしょう。
撮影/姉崎正