まずは全米プロでトップ10に入った選手と、彼らが使用したドライバーを見てみよう。
優勝 ブルックス・ケプカ/M5
2位 ダスティン・ジョンソン/M6
3T マット・ウォレス/G410プラス
3T ジョーダン・スピース/TS3
3T パトリック・カントレー/917D2
6 ルーク・リスト/M6
7 カン・スン/TS3
8T エリック・ヴァン・ローエン/エピックフラッシュ
8T マット・クーチャー/ツアーB JGR
8T ロリー・マキロイ/M5
8T ゲーリー・ウッドランド/G410プラス
8T シェーン・ローリー/スリクソンZ585
8T アダム・スコット/TS3
モデル別の使用数は、以下のようになる。
タイトリスト:4名
テーラーメイド:4名
ピン:2名
キャロウェイ:1名
ブリヂストン:1名
スリクソン:1名
このうち、使用数が3でもっとも多かったのが、タイトリストのTS3。この結果について、ギアに詳しいプロゴルファー・永井延宏は言う。
「最近の世界のツアーは、ティイングエリアからフェアウェイバンカーをしっかり見せるセッティングが主流です。280〜300ヤード地点にあるバンカー越えを狙うか、避けるかを戦略上のターゲットにしている。そのため、弾道の打ち分けができるドライバーであり、ティショット術が求められています」(永井、以下同)
そういった300ヤード前後のボールコントロールが余力を持ってできるのがブルックス・ケプカでありダスティン・ジョンソンだと永井は指摘。そして、そのようなコントロールがしやすいのがケプカが使うM5であり、トップ10のうち3名が使用したTS3だという。
「全米プロのようなセッティングでは、曲げて攻める、危険なところを避けながら打つ必要がありますが、打感が軟らかく操作性に優れたTS3はそれがやりやすいのでしょう。M5にも同じことが言えると思います」
さて、もうひとつ注目なのが、トップ10に2人の使用者を送り込んだのがピンのG410プラス。こちらは一転、基本的には操作するというよりも曲げずに飛ばすドライバーであり、ヘッドスピードの遅いアベレージゴルファーでも使用可能な“やさしい”クラブだ。
「やさしいとはボールのつかまりの良さ、上がりやすさに加え、ヘッドの大きさも挙げられると思いますが、海外選手はそもそもボリューム感のあるヘッドを好む傾向があります。このあたり小ぶりを好む日本人とは『顔がいい』という感覚も違うんだと思います」
300ヤード先のバンカーを避けるなら操作性が求められるが、越すほうを多く選ぶならば、曲がらないヘッドを思い切り叩くほうがいい、そんな戦略も存在するのかもしれない。
いずれにせよ、操作性がいいと言ってもそれはあくまでも460cc級のヘッドサイズでの話であり、440cc以下の小ぶりヘッドを使う選手はマレ。一方で、アイアンはマッスルバックなどシャープな形状が人気だ。
「ドライバーとアイアンで求めるものが違うんでしょう。ドライバーはグラマラスな美女。アイアンはスレンダー美女を求めているように見えます(笑)」
M5のドライバーにミズノのJPX919ツアーアイアンを合わせて勝利を挙げたケプカのセッティングは、その代表例と言えるかもしれない。
300ヤード先のバンカーをターゲットにティショットを放つための大型ドライバー。その先の厳しいピンを狙うための小ぶりアイアン。この組み合わせが、今の世界のゴルフ界の潮流のようだ。