月曜日の朝6時ラインがチリリと鳴った。池田勇太からである。祝福メールに対する返礼メール。大量のメールが届いているに違いないが必ず1通、1通丁寧に返信する律儀な男だ。
昨年は米ツアーに出場していたため舞台のザ・ロイヤルゴルフクラブは初見だった。3日目の設定は史上最長の8016ヤード。各選手がスコアメイクに苦しむなか、ひとり違うコースを回っているような1イーグル、8バーディの6アンダー66を叩き出し単独トップに躍り出た。
だが上がり2ホールでダブルボギー、ボギーを叩き「これじゃ台無し」と激怒。よく最終ホールがバーディなら「明日に繋がる」とゴルファーはいう。逆に上がりが悪いと「明日に不安が残る」。だが池田は悔しさをエネルギーに変え最終日も王道のゴルフを貫いた。
賞金王になり世界ランクトップ50に入り海外での試合を度々経験したここ数年、池田はさまざまな試行錯誤を繰り返してきた。海外で勝つためにどうすれば良いのか? 飛距離を伸ばしショットの精度を上げるにはどうすれば良いか?
やがて世界のトッププレーヤー並みの高くて滞空時間の長いショットを手に入れた。「(打球が)高ければ高いほどアドバンテージになる」とゴルフのスケールは一段と大きくなった。
いまどきの選手はバックスウィングとダウンスウィングの誤差が少ないいわゆるオンプレーンの“きれいな”スウィングが主流だ。そんななか池田は自分のスウィングを「きたない」と切り捨てる。バックスウィングをアウトに上げインサイドから下ろす変則スタイル。だがそれが強みだからこそ誰よりも勝ち続けているのだ。
池田はスウィングをビデオに撮って検証することはしない。理論は熟知しているが実際に頼りにするのは自らの感性と繊細な感覚。クラブに徹底的にこだわるのも、その感性や感覚を具現化するためなのだろう。
ゴルフのスケールが大きくなりすぎると、ときに国内は窮屈に感じることもある。だが8000ヤード超えのコースなら存分に「池田勇太のスタイルが出せると思った」。
腰痛で試合を休んでいる石川遼も今週のツアー選手権で復帰する。日本のゴルフ界は池田&石川の“ダブルI”が活躍してこそ盛り上がる。