6年前、ジャンボのエージシュートを機に発売された
リゾートトラストレディスで初優勝を果たした黄金世代の一角、原英莉花。今年は契約先であるミズノの看板プロとして、新ドライバー「Mizuno Pro」の広告にも大きく登場しており、その期待の高さが伺える。
バッグの中がほぼミズノで占められる原のクラブセッティングの中で、異彩を放っているのが、銅色のキャビティタイプのウェッジ。師匠の尾崎将司も愛用するマスダゴルフ「M425」だ。
このクラブが発売されたのは、なんと6年前。2013年のつるやオープン初日に、尾崎将司がレギュラーツアーで初のエージシュートを達成した。その際に使用していたプロトタイプウェッジをベースに市販化されたものだ。ちなみにその時のスコアは9アンダー「62」。尾崎が66歳のときだった。
開発者のマスダゴルフ、増田雄二氏は「そのときは市販することなどまったく考えていなくて、とにかくツアーの開幕に間に合わせなければ、という一心で制作しました。形状はもちろんですが、ジャンボさんのこれまでのノウハウがつまったウェッジになっています」と教えてくれた。
キャビティにすることで、ヘッドはプロが使用するウェッジとしては大ぶりになっている。そして、何と言っても往年の「J’s」を思わせる強いグースネックが特徴だ。強い頃の尾崎を知るオールドファンにとっては、思わずニヤリとしてしまう“顔”に仕上がっている。
6年もの長きの間、異例のロングセラーになっているこのクラブだが、増田氏は当初、発売を躊躇したのだという。「今は少し増えてきましたが、当時は市場にグースネックのウェッジがほぼ存在していませんでした。ニーズがあるのかどうかわかりかねたのです。しかし、エージシュート以降、要望が非常に多かったため、発売に踏み切りました。ジャンボさんのおかげですね」(増田氏)。
実は筆者も長年、このクラブを愛用している一人だ。もちろん、プロのレベルとは比べるべくもないが、構えやすく、打ち出し方向のイメージが湧きやすい。良い打ち方をクラブが教えてくれるような気持ちにさせてくれるのだ。そして、スピンが強烈にかかる。
尾崎に教えを請いに来るプロたちの多くが、まずこのウェッジを渡されてアプローチをする。そして、ジャンボ流のテクニックを伝授されるのだ。このウェッジは弟子入りのいわば通過儀礼となっている。原英莉花もその一人で、ウェッジのバックフェースには、“Jumbo”の刻印がある。SWはキャビティ内にジャンボのマークが入った今年からの特注モデルだ。
毎年、様々なメーカーから新たなモデルが登場する中で、6年も販売が続いているのは、使いたいと思う人が後を絶たないからだろう。原の活躍で、そんなゴルファーがまた増えるかもしれない。