実は仲良し、アダムとカイマー
先週のメモリアルトーナメントで、最終日、最終組で戦ったアダム・スコット(38)とマーティン・カイマー(34)。最終日に64の好スコアをマークしたパトリック・カントレーの逆転優勝に終わったので、この2人の優勝とはならなかったが、しばらく勝利のない2人にとっては、来たる全米オープンに向けて、明るい兆しが見えた大会でもあった。
38歳のオーストラリア人であるアダムと、34歳のドイツ人であるカイマー。一見、何の共通点もなさそうに見えるが、メジャーで優勝し、世界ランク1位にまで上り詰めた選手でありながら、ここ数年優勝していないという点では非常に似ている。
カイマーは2014年全米オープン以来優勝していないし、アダムは16年WGCキャデラック選手権以来、優勝から見放されている。
そして背格好も、立ち居振る舞いも、よく見ると似ているこの2人は、長年に渡って、時々夕食を共にする間柄であり、カイマーはアダムの言葉に耳を傾け、ゴルフにおいて、そして人生において、メンターのように尊敬している。
「僕はアダムと一緒に時間を過ごすのが好きだ。彼はジェントルマンだし、非常にナイスガイ。それは彼の言葉の端々や振る舞い方に現れている。そして間違いなくワールドクラスの選手だ。一緒に彼と話をしていると、人生に対する態度や、アメリカでの生活にうまく適合しながら、いかにPGAツアーで戦っていくのかについて勉強になる。違う国から来たら、当然文化も違うし、そういうことについて僕たちは話をすることもある。人として、1人のゴルファーとして本当に尊敬しているんだ」
両者とも話し方はとても穏やかで、せっかちなタイプではない。カイマー自身もジェントルマンであり、いつも微笑みを称えて挨拶してくれる温厚な性格だ。
以前、アダムは「普段からクイックな動作がスウィング中に入らないようにするために、話し方もゆっくりにしている」と語っていたことがあったが、彼もカイマーも穏やかに静かに話をする。きっとそんなリズムというか、波長が合うのだろうと思う。
アダムは逆にカイマーについて「彼はドイツ人だから、はっきりものをいうし、どちらかというと僕が聞き役。決して親友とは言わないが、マーティンのことが好きだし、すごく仕事熱心なんだ。一緒にプレーしていても回りやすいよ」と語っている。
さて、この「メモリアルで優勝し損ねた」2人。どちらも連日60台の好スコアを叩き出し、非常にいいプレーができているように見えるが、ホストのジャック・ニクラスによれば、2位のアダムと3位のカイマーの2人の間には大きな差があるという。
「アダムは非常にいいプレーをしていたし、我慢強かった。マーティン・カイマーも素晴らしかったけれど、ただ9番ホールの2打目、彼はやってはいけないミスを犯した。ティショットもあまりよくなかった上、2打目も失敗し、優勝争いから遠ざかってしまった。しばらく優勝していないと、どうしてもプッシュをかけたくなる傾向にかられるよね」
毎年最終日には、18番グリーン周りでニクラスはプレーヤー一人一人に声をかけて迎え入れるのが習慣になっているが、アダムに“今日はいいプレーをしたね”と声をかけると、彼も“そうなんですよ、64で回れました”と語ったという。
ニクラスはそういう彼に対し、「アダムは優勝してもおかしくないプレーをしていた。パトリックがいなければ、優勝していただろうね」と絶賛。一方で、カイマーのプレーに関しては、
「彼はいくつかミスを犯していたが、あとで振り返れば“本当にあんなことする必要はなかった”と後悔するようなミスをしていた。“9番は、とにかく出してカップ近くに寄せてパーを拾うチャンスを残せばよかった”、とか“15番でやったようなミスなんて、過去一度もしたことないよ”とか….とにかく彼はいくつかのショットで自滅してしまった。まぁ、優勝していないときはどうしても自分を追い込んでしまうものだが、そういう時こそ我慢しなければならない。他の選手たちも自分と同様にたくさん問題を抱えながらプレーしていることに気づかないといけないし、たった1ホールや1打で試合に優勝することはできないが、その1ホール、1打で負けてしまうこともある。アダムはいいプレーをしていたが、マーティンは自分のプレーを振り返り、反省した方がいい」
とカイマーのプレーぶりには苦言を呈している。
アダムが復活優勝を遂げるのは時間の問題、という領域にまで戻りつつあるようだが、カイマーは精神面や考え方において、少し見直すべきポイントがあるようだ。だがいずれにせよ、彼らが上昇気流に乗り、未勝利の状態から脱出しつつあるのは間違いなさそうである。