スウィング中の「上下動」は悪い動きの代表例ともいえるが、最新のバイオメカニクスを生かしたスウィングにおいては、むしろ飛ばしに必須な動きなのだとか。2019年のレッスン・オブ・ザ・イヤーを受賞したヤン・フー・クォン教授と吉田洋一郎プロの共著「驚異の反力打法~飛ばしたいならバイオメカ」から、上下動の必要性について教えてもらおう。

ジャスティン・トーマスのジャンプする動き

「地面反力」を使ったスウィングの例として、インパクトでジャンプするような動作が挙げられます。実際、ジャスティン・トーマスやレクシー・トンプソンなど、そういった動きが顕著な選手には飛ばし屋が多く、彼らが「地面反力」をうまく使ってスウィングしているのも事実です。これは、ジャンプしながら360度回転するような動きで回転速度を上げていることを考えれば納得がいくと思います。

「ジャンプするような上下動をしたらボールに当たらないのではないか」と考える人も多いでしょうし、実際にスウィングするうえでは最初は恐怖感があるかもしれません。

ですがよく考えてみてください。スウィング中には腕やクラブなどの重量物が上下に動くうえ、ダウンスウィングではそれに回転の力が加わって下りてくるわけですから、スウィング中に上下方向の大きなパワーの変化が起こっていることは自明です。

これを、体自体を上下に動かさずに踏ん張って振るのと、クラブと体とが引っ張り合いながらバランスを取って振るのとでは、どちらがスピードを出せるでしょうか。ゆっくりで精密な動きが求められるのであれば、踏ん張って振ってもいいかもしれませんが、ゴルフスウィングにはある程度のスピードが必要です。

画像: 写真のジャスティン・トーマスのように、インパクトの手(グリップ)の位置はアドレスよりも高くなる のが自然。上下動することで、腕やクラブと体は引っ張り合いながらバランスを取っている

写真のジャスティン・トーマスのように、インパクトの手(グリップ)の位置はアドレスよりも高くなる のが自然。上下動することで、腕やクラブと体は引っ張り合いながらバランスを取っている

クラブにスピードがついているのに上下動を抑えようとしたら、むしろクラブに体が引っ張られて前のめりになり、ダフってしまうはずです。

さらに、ダウンスウィングからインパクトでは、シャフトが下方向にしなる「トウダウン」も起こります。ですので、厳密にアドレスと同じ高さを保ってインパクトしようとするとダフってしまいます。トッププレーヤーのスウィングを見ても、インパクトではアドレスよりも若干手元が高い位置にあるのが普通です。

このように上下動が避けられない以上、それを積極的に使ってスピードを上げつつ、そのなかで再現性の高いインパクトを目指すほうが合理的なのです。そして実際、すべてのプレーヤーが上下動をコントロールしながらスウィングしています。

プロゴルファーや上級者には、「体の上下動を抑えて振る」と表現する人も多くいます。しかしそういう人でさえ、実は腕やクラブと体のバランスを取るために(意識的にせよ無意識にせよ)上下動を行っていて、その結果「上下動が小さく見えるように」スウィングすることを目指しているのだと考えてください。「インパクトで手元を低く」と言う人のスウィングにも必ず「トウダウン」は発生してい て、それでも上手く当たるように振っているのです。

もちろん、彼ら自身はそういう感覚でスウィングしてうまく打っているのでしょうし、それ自体が間違っているわけではありません。

しかし、「上下動のないスウィング」はあり得ず、それを制御するために上下の動きは必要だとい うことを理解してください。

「驚異の反力打法~飛ばしたいならバイオメカ」(ゴルフダイジェスト社)より 

撮影/姉崎正

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