待ちに待った全英オープンがいよいよ開幕。月曜の練習日から現地取材を行う週刊ゴルフダイジェストの特派記者が、自らの目で見た「ロイヤルポートラッシュGC」の難しさ、そして選手たちの練ランの様子をレポート!

設計は川奈を造ったアリソンの師匠、ハリー・コルト

月曜、火曜と穏やかな天気でよかったのですが、一方で“1日に四季がある”といわれるイギリスっぽさがなく、物足りなさを感じていました。昨日(水曜)になってようやく雨風が強くなり、それに伴って(?)ギャラリーも急増。いよいよ68年ぶりの北アイルランドで開催される全英オープン開幕に向け、出場プロ、会場、そして天候も整いました。

さて、今年はアイルランド島の北端にあるロイヤルポートラッシュGC・ダンルースCで開催されます。設計は“近代コース設計の父”と呼ばれるハリー・コルト……なのですが、日本に設計コースがないので「誰?」となる人も多いはず。

調べてみると川奈GC富士Cや廣野GCなどを造り、井上誠一や上田治に多大な影響を与えたC・H・アリソンの先生だそうで、そう言われると凄い人なんだと思えてきます。実際、コースに入ると、砲台グリーンやアゴの高いバンカーなど、日本の名門といわれるコースの原型をみているような気もしてきます。

そんな偉大な設計家の“最高傑作”との呼び声が高いロイヤルポートラッシュGCについては、現在コンビニや書店で発売中の弊社刊行の週刊ゴルフダイジェストで紹介しています。全英オープン観戦のお供にぜひご覧いただきたいのですが、その記事を編集した私が実際に現地で感じたことをお届けします。

誌面を作るためにロイヤルポートラッシュGCの写真をいろいろみましたが、「写真でみる以上にアップダウンがキツイ」というのが第一印象。さらにフェアウェイのアンジュレーション(うねり)もポテトチップス並にデコボコしていて、落下場所がワングリップ違えばキックでまったく違う方向へいってしまうほど。

また、試合に直接関係ないですが、ホール間のラフがギャラリー動線になっているのですが、そこは急こう配の連続。さすがに68年前の前回大会を観た、とはいいませんが、還暦を過ぎたであろうご夫婦が観戦しているのを見ると「この傾斜では雨や風で滑って怪我をするのでは?」と心配になるほどです。ジョン・デーリーのカート使用を許可されなかったのも、この地形ではカートを使用する人(もちろんジョン・デーリーのこと)が享受するメリットは大きいのでやむなしではないでしょうか。

そんななか、印象に残ったホールといえば、まず374ヤードの5番。コースで唯一の海に向かって打つホールで、その美しい景観はもちろん、右ドッグレッグでしかも若干打ち下ろしになので、ティ位置によってはダスティン・ジョンソンやチャン・キムなどの飛ばし屋ならワンオン狙いもあるのではないかとワクワクするホールです。

画像: 5番ティからショット練習をするダスティン・ジョンソン(右)とタイガー・ウッズ(左)。DJはドライバー、タイガーは2番アイアンを握っていた

5番ティからショット練習をするダスティン・ジョンソン(右)とタイガー・ウッズ(左)。DJはドライバー、タイガーは2番アイアンを握っていた

次は7番。隣のバレーCの6番を改造して組み込んだのですが、左右は砂丘で蛇行した“バレー”にフェアウェイを造り、ティイングエリアから見ると、1~6番までとは毛色が違うことに気づきます。280ヤード地点の右サイドにはアゴが高い特大バンカーがあり、天候が崩れるとアゲンストかつ左から風が吹くので危険です。

パー5なのでバーディ狙いのプレーヤーがほとんどですが、このバンカーにつかまったら良くてパー。練習ラウンドでは堀川未来夢や金谷拓実のティショットはこのバンカー横のフェアウェイだったので、風が吹くと餌食になる可能性が高く、精度とマネジメント能力が要求されます。

画像: 7番ホールは右サイドの特大バンカーを避けられるかがカギ

7番ホールは右サイドの特大バンカーを避けられるかがカギ

そして忘れてはいけないのが、「カラミティ・コーナー」と呼ばれている236ヤードと距離の長いパー3の16番でキーホールだと断言できます。

画像: 「カラミティ・コーナー」と呼ばれる16番ホールのティイングエリアからの1枚。右サイドが崖になっており、天候次第で難易度は様変わりする

「カラミティ・コーナー」と呼ばれる16番ホールのティイングエリアからの1枚。右サイドが崖になっており、天候次第で難易度は様変わりする

月曜、火曜と天候が穏やかだった練習日には右の崖に落とす選手はほぼ皆無だったのですが、天候が崩れた水曜はトラブルが続出。このホールは7番ホールと平行の位置関係にあり、アゲンストかつ左からの風が多い。

そうなるとティショットはドライバーでという選手も増えてきます。水曜のラウンドでは、あのセルヒオ・ガルシア、浅地洋佑、金谷などが実際にドライバーで打っていました。ちなみにドライバーだと曲がってしまうので結局グリーンオンしたのは数人のみ。どれだけ難しいか想像できますよね? 16番グリーン奥のギャラリースタンドに座って、全選手のボールの行方を観測してみたいと思える面白いホールです。

ほかにもというより、全ホールでドラマが起きそうなコースレイアウトはさすが井上誠一の大師匠であるハリー・コルト。眠れないだけでなく、目が離せない4日間がいよいよ始まります!

取材・文/山口哲平

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