考えさせて継続をうながすコーチの元で開花した
――ともにアスリートの両親から受け継いだ才能だけを頼りにゴルフをしていた渋野だったが、約2年前から青木翔プロに指導を受け、ゴルフが一気に飛躍したという。どんな練習をしているのか、同行させてもらった。
週刊ゴルフダイジェスト(以下GD):青木プロに、何を一番よく言われますか。
渋野日向子プロ(以下渋野):“振れ”って言われます(笑)。ザックリとしたイメージ的な話が多いですかね。
青木翔コーチ(以下青木):細い体の動きをどうこうするって、頭ではわかっていても、人間はロボットじゃないので、できないじゃないですか。ボクはなるべく難しく考えさせずに感覚的にわかるように指導しています。
GD:今は弾道測定器とか数値化してレッスンするコーチが多いなか、ある意味めずらしいですよね。
青木:そうかもしれませんが、ボクも元々はプレーヤーだったんで、選手たちの気持ちがわかるんですよ。頭ではわかっていても、できることとできないことがあるってことを。
ボクのレッスンのモットーは「1言って10できる選手」を育てることです。だから、あれこれ言わず、まずはひとつのことを徹底的にやって自問自答させる。これが、選手が成長するコーチングだと思ってるんです。
渋野:習いはじめから、頭を抑えるだけですもんね(笑)。
青木:それは渋野がインパクトで伸び上がってたから。現にフックの度合いが減ってきただろ?
渋野:そうですね(笑)。
青木:もちろん、感覚を養うヒントやドリルもさせますけど、やるのは選手。ボクの操り人形では自立できません。継続を支えるコーチでありたいんです。
前傾角が保てるようになった
――青木プロに師事してからずっと頭に手を置かれてショット練習を続けた渋野。すると驚くほどインパクトの形に違いが現れた。
GD:一年前のインパクトと今をくらべると別人ですね!
渋野:ですよね! 私もそう思います(笑)。
青木:以前は上体が伸び上がっていたので、クラブがインサイドから入りすぎて、フックの度合いが大きかったんです。今は、体の右サイドでボールを押し込めているので、球質が強く、距離も出るようになりました。
GD:頭に手を置くレッスン、あなどれないですね。
渋野:始めた当初はダフッてばかりでした。昔は感覚的に、ダフらないように伸び上がって調整していたんですね。
青木:以前の彼女は、上体を起こしてヘッドの通り道を作っていたんですけど、前傾の意識を持つようになってダウンでヘッドをリリースするタイミングを覚えました。いままでは、腕力や筋力に頼って打っていましたが、効率よくパワーが出せる体の使い方を覚えたことで、方向性も飛距離も身につけたんです。でも、まだ発展途上ですけどね。
渋野:明らかに球筋が変わったから、「頭に手をポン練習」の成果があったんですね(笑)。
週刊ゴルフダイジェスト2019年6月18日号より 撮影/大澤進二 ※一部改変