笑うことで感情がポジティブになる「顔面フィードバック仮説」
最初に彼女のメンタルの特徴はなんといってもスマイリングシンデレラと呼ばれる笑顔にあるでしょう。実は感情のセルフコントロールにおいて、「笑顔」は猛烈にプラスに働くのです。
一般的には感情が表情に表れると考えられていますが逆の説があります。その説は表情が感情を生み出すという「顔面フィードバック仮説」です。これはアメリカの心理学者トムキンスが発表した仮説で顔の表情筋が刺激されると、それが脳にフィードバックされ、その感情が生まれるといい、感情は「表情をつくる」ことで変えられるということになります。また、脳医学にもとづいた脳の仕組みとしても、笑顔を浮かべていると、否定的なことや暗いことは考えにくいと言われており、これは顔の筋肉と脳のA10神経群が密接に関係しているからと言われています。
つまり、意識的に笑顔をつくること脳は楽しいと勘違いし、感情もポジティブになりやすいのです。渋野選手は8月6日の帰国会見で「プロゴルファーはギャラリーに見せる競技なので、その方に楽しんでもらう為には自分が心の底から楽しんで笑顔でやらないといけないと思うので、そこは心がけています」と語っています。
この言葉からもわかるように渋野選手はどんなときでも笑顔でのプレーを意識することで仮にイライラや焦り、プレッシャーを感じたとしても、また大舞台での優勝争いという状況でも自然体なメンタルを維持することにつながっていたのではないかと考えられます。
お菓子を食べることでリラックスのスイッチが入る
また、渋野選手がプレーに中におりぎりやお菓子を食べていたことが話題となりました。会見では単独首位で迎えた最終日について「最後のほうは緊張したが、お菓子を食べて緊張を和らげた」と語っています。お菓子を食べることがリラックス効果につながっていたということですがなぜ、リラックスできたのでしょうか?
これはパブロフの犬で有名な条件反射で考えると分かりやすいでしょう。「パブロフの犬」とはある犬にエサを与えるときに必ずベルを鳴らすようにしたところ、後にエサが無くてもベルを鳴らすと犬がよだれをたらすようになったというもの。(※パブロフ博士が1902年に発見し、条件反射のたとえとして用いられる)
ベルを鳴らす→エサを与えることを何度も繰り返すと犬はエサがなくても「ベルの音という刺激」に対して、「よだれをたらすという反応」をするようになったということです。
私たちも“おふくろの味(刺激)”を食べると安心感(反応)を覚えたりしますよね。それは過去に母親が作ってくれた料理を食べているきに目の前にいる母親がいるという安心感や親しみのある味を何度も無意識的に感じてきたからです。
ですので久しぶりに実家に帰って食べるおふくろの味(刺激)に安心感(反応)を覚えるわけです。渋野選手も練習ラウンドの休憩時やオフの時間などリラックス状態のときに食べているお菓子を試合中に食べることで、いつもの慣れたお菓子を食べる(刺激)でリラックス状態(反応)につながっていたというように考えられます。
他にも偉業達成の裏に隠されたメンタルの要素はまだまだありそうです。次回以降に引き続き、解説していければと思います。