2019年8月5日。2つの国産ブランドがニュードライバーの記者発表を行なった。ブリヂストンの『TOUR B JGR』と、ヤマハの『RMX(リミックス)』である。近年はキャロウェイ、テーラーメイド、PING、タイトリストの海外ドライバーに人気が集まり、苦戦を強いられている日本メーカーのドライバー。この秋のニューモデルで復権の糸口をつかめるかどうか、ギアライター・高梨祥明が考えた。

事前のプロモーションにまずは成功!? 秋商戦にかける国産2社

ブリヂストンの『TOUR B JGR』は女子ツアーで早くからプロモーションを行ない、旬な女子プロのリアルな飛距離アップ効果(+20ヤードのプロも!)をティザー的に発信することで期待感を高めてきた。そして、SP-CORと書かれたソールのネジ構造を意味ありげに見せることで、“アレはなんだ!?”とギア好きの耳目を惹きつけながら記者発表の日を迎えた。

画像: フェースの内側を特殊ネジで支える、NEW JGRドライバーの“サスペンション・コア”

フェースの内側を特殊ネジで支える、NEW JGRドライバーの“サスペンション・コア”

一方のヤマハは、強烈、いや辛辣ともいえる契約プロのコメントを収めたティザー動画で話題を作った。その内容は“海外ブランドのドライバーに比べ、ヤマハのドライバーは飛んでいない。技術的にも遅れている”という、かなりドキッとするもの。いまひとつ結果(飛び)に結びついていなかったこれまでのドライバー開発を自ら“テクノロジーごっこ”と表現し、ゼロベースでニューモデル開発を行なう姿勢を鮮明に打ち出したのだ。

事前の興味喚起に知恵と労力を注ぐ。まさにSNS時代のマーケット戦略に個人的にもすっかり乗せられた気分がする。

最新ドライバーの“微妙な差”を見極める最も簡単な方法

両ブランドの新ドライバーの概要を要約すると、「フェースの芯だけでなく、その周辺でも同等のボール初速を出すことに新技術を使って挑戦。そしてめでたく大きな革新を達成した!」ということになる。

『TOUR B JGR』は、ソールから挿入・固定した特殊なネジがフェース裏側の一点を押すように支えることで、フェースセンター以外でも高い初速アップ効果を達成する“SP-COR(サスペンション・コア)”がその基幹テクノロジー。

『RMX(リミックス)』は、フェースの外周部を内側からぐるりと補強し、フェースの中心部をより大きくたわませることで高初速エリアを拡大する“ブーストリング”という新技術を導入した。

ボールを効率良く飛ばすための3大要素(初速・打ち出し角度・スピン量)のうち、エンジンともいえるボール初速をとにかくフェースの広範囲でアップさせる。それが隆盛を極める海外ブランドの“飛距離”に対抗するための大きなファクターである、としたのだ。もちろん、すべてのクラブメーカーがもともとそこに注力しており、それだけでは海外ドライバーを打ちのめす秘策とはならないことは明白。結局は初速アップ以外のどこに差別化できるポイントを持っているか、が勝負の分かれ目になるだろう。

画像: 慣性モーメント5760g・cm2と外ブラを上回る超巨大慣性モーメントを有したRMX 220ドライバー

慣性モーメント5760g・cm2と外ブラを上回る超巨大慣性モーメントを有したRMX 220ドライバー

個人的には、最新ドライバーのポテンシャルを量るときに最も重要視したいのは、ヘッドの構造云々ではなく、クラブ全体での“振りやすさ”だと思っている。違和感なく構えられ、スムーズに始動でき、気持ち良く振り切れる。非常に感覚的だが、そんなドライバーが見つかれば、高性能ヘッドの高初速機能をより引き出せると思うのだ。振りやすさを左右するのは、重心設計であり、慣性モーメントの大きさであり、ヘッド重量であり、長さであり、総重量だ。つまり、ひとつのテクノロジーではなく、クラブは総合力だということだ。とにかく先入観を持つことなく、打ってみることが大事だと思う。

海外ブランドのドライバーに難点があるとすれば、ヘッドが重たく、慣性モーメントが大きいため、振り切ることに大きな力が必要になるという点だ。ヤマハの『RMX(リミックス)』を打ってみると、巨大な慣性モーメントヘッドの割に“振りやすい”と感じることができた。おそらく、これが日本ブランドらしい配慮、差別化すべき点という気がする。もちろん、海外ブランドもこれには気づいていて、タイトリストなどは『TS1』ドライバーで思い切った軽量化を図り、高慣性モーメントヘッドでも振りやすく、パワフル弾道! という新機軸を打ち出している。

国内ブランドが海外ブランドに寄っていき、振りやすさの面では海外ブランドが日本ブランドに寄ってくる。その結果、同じようなドライバーが市場に溢れかえることになる。この傾向はこの先も加速していくに違いない。すべてのクラブメーカーが“最大飛距離”というゴールを見据えて開発している以上、もはやドライバーに国産も外ブラもないのだ。どれを使えば、一番飛ぶのか。その答えは、打ってみればわかる。最新ドライバーの“微妙な違い”は、自分で構え、打ち、感じるしかない。最適ドライバーは人気ではなく、自分で決める時代である。

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