現在、国内男子の賞金ランキングトップに君臨する石川遼。シーズン序盤で発症した腰痛からの復帰後は、「日本プロゴルフ選手権」「長嶋茂雄INVITATOIONAL セガサミーカップ」で2連勝を飾るなど、まさに完全復活。一体何が変わったのか?

曲がらず常時300ヤードの飛距離……「そりゃ、強いですよ(笑)」

開幕2戦目の「中日クラウンズ」を腰痛のため途中棄権すると、治療のためにその後ツアーを3試合欠場。一時は本人も「正直、シード権を失うことも覚悟した」と言うほどだったが、そんなどん底から見事に這い上がっての“V字回復”に成功した石川遼。

腰痛からの復帰以降複数回同組でプレーしている“弟分”の星野陸也は、ティショットの精度がこれまで以上にアップしたのを感じたという。

「曲がらないし、飛距離も出てる。一緒に回ったときには『アイアンも良くなった』とおっしゃっていて、実際にピンに“スジって”いましたからね。そりゃ強いわって正直、思いますよ(笑)。仮にちょっとアイアンが調子悪いときでも、あれだけ飛んで曲がらないティショットがあれば、どうにかなりますよね」(星野)

画像: 8月のツアー再開後の3試合もすべて2ケタアンダー。今や名実ともにツアーの大黒柱だ(写真は2019年のKBCオーガスタ 撮影/姉崎正)

8月のツアー再開後の3試合もすべて2ケタアンダー。今や名実ともにツアーの大黒柱だ(写真は2019年のKBCオーガスタ 撮影/姉崎正)

不振を極めたドライバーショット。それが曲がらなくなり、かつ飛距離も伸びたことがやはりV字復活の最大の要因だと分析。石川の杉並学院高校時代の2年後輩で、星野同様ここまで2試合の予選ラウンドを同組でプレーしている浅地洋佑も同様にドライバーの精度がアップした点と、それを支える肉体面の進化を感じたという。

「飛距離が伸びている気がしますよね。僕なんかキャリーでおいていかれちゃう。体も大きくなったような気がしますし、キレやスウィングスピードも上がっているような気がします。セガサミーのときも優勝しましたけど、あれだけ雨が降って地面が緩い状況なのに、キャリーで300ヤード普通に飛ばしていましたからね。競う側でもあるんですけど『すげえな』って思ってみてました」。

同僚プレーヤーたちは、やはり力強さを増したフィジカル面の安定とそれをベースに放たれるドライバーの飛距離と精度向上を、腰痛で離脱していたわずか1か月半程度の短期間で目に見える形で修正してきたことに石川遼の“凄み”を感じている模様だ。

ちなみに、同じ「セガサミー」での平均飛距離を昨年と比較すると、昨年が283.50ヤードで22位だったのに対し、今年は294.13ヤードで8位。同じ試合とはいえ条件は異なるので単純比較はできないが、それを差っ引いても明らかな飛距離アップと言えるだろう。

復帰初戦「日本ゴルフツアー選手権」以降、スウィングが一気に好転

では実際に技術面では、ツアー復帰前と復帰後ではどんな変化が見られたのだろうか?

松田鈴英や梅山知宏などツアー選手のコーチを務め、石川遼とは同級生でジュニア時代から親交のあるプロコーチ・黒宮幹仁は、腰痛からの復帰初戦となった「日本ゴルフツアー選手権」が行われた宍戸ヒルズCCで見たときから「変化」を感じていたという。

「素振りからだいぶ変わったなと。たぶん宍戸くらいからフェアウェイキープ率も上がっていると思うんですよ。2連勝した後に、久しぶりに会って『おめでとう』と言って、話をしたときも本人は『宍戸のあたりから兆しが見えてきた』と話していました」(黒宮)

画像: ”飛んで曲がらない”スウィング改造を果たした石川遼。好調の要因はフェアウェイキープ率にも表れている(写真は2019年の「長嶋茂雄INVITATOIONAL セガサミーカップ」 撮影/岡沢裕行)

”飛んで曲がらない”スウィング改造を果たした石川遼。好調の要因はフェアウェイキープ率にも表れている(写真は2019年の「長嶋茂雄INVITATOIONAL セガサミーカップ」 撮影/岡沢裕行)

スウィング面では、とくにフェースターンがよりスムーズになったことにより、インパクト時の効率があがり、それが飛距離増につながっていると指摘する。

「去年の一時期と今では全然違うスウィングで、今のほうが良くなってます。要因として挙げられるのは、フェース面の管理の仕方です。昨年のよくなかった時期と比べて、いい意味で体の向きと、クラブの向きが重ならなくなりました。スウィング中、クラブを少しシャット目に使うようになったことで、振り遅れもなく、今は気持ちよく振り抜ける感じになっていると思います。今まで積み重ねたトレーニングに、スウィングを変えてインパクトの効率が上がったことで、飛距離も出ているのだと思います」(黒宮)

あと2,3勝はできる!

2017年は、石川が米ツアーでシードを失って日本ツアーに後半戦から参戦した年だが、その年の石川のデータを見ると平均飛距離281.35ヤードに対し、フェアウェイキープ率は39.68%と、今とは別人のような数字になっている(今年は現時点で平均304.54ヤードで、57.74%)。

腰痛から復帰後のツアーで大会ごとのフェアウェイキープ率を見ると、概ね20〜40位前後の数字が並ぶ。飛距離アップすればフェアウェイキープ率は下がるのが必然の中、フェアウェイキープ率の数字も良化しているのは、星野や浅地が証言するように飛んで曲がらなくなっている証拠だろう。

300ヤード飛んで曲がらなければ、セカンドショットはショートアイアンで狙えるケースも多くあるだろう。そして、石川は米ツアー参戦当時から世界最高レベルだったショートアイアンの切れ味の持ち主。プロが教えを乞うほどのショートゲームの名手でもあり、パターの巧さは誰もが認めるところ……ということで、ドライバーというボトルネックがなくなったことで、星野曰く「そりゃ、強いですよ(笑)」という状態に入っている。

「本人のなかでは、まだ完璧じゃなく5、6割って感じかと思います。ゴルファーって100%はなくて、8割くらいがベストだと思いますが、6割の状態でもあと2、3勝はするんじゃないですかね。遼はジュニア時代から小技も上手いし、意識も高い。そしてなによりメンタルが強いですから」と黒宮は言う。

「完全復活」を遂げた姿だけではなく、ツアー後半戦では過去最高に進化を遂げた石川遼を見ることも期待できそうだ。

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