ボールを飛ばす動力源は、今も昔もゴルファーにしかない
先週はクラブの試打時における“弾道測定器”に依存しすぎないススメについて書いたが、今週も少しだけクラブを試打する時の考え方について記してみたい。
ゴルファーの間では、“飛ぶドライバーはどれ?”、“このドライバー飛んだよ!”という表現が当たり前にされているが、ご存知の通り、飛んでいくのはゴルフボールである。ドライバーは、あくまでもボールを飛ばすための道具という位置づけ(汗)。
さらにいえば、本当にゴルフボールを遠くに飛ばしたのはドライバーではなく、自分自身であるということに気づけるかどうかが、実はクラブ試打をする時の最も大切なポイントである(と個人的には思っている)。なぜなら、ボールを飛ばす動力源は、今も昔もゴルファーにしかないからである。
この30年、ひたすら続いてきたゴルフクラブの飛距離アップに対する進化の歩みは、ジェットエンジンなど他の動力源を搭載することではなく、ゴルファーが生み出すスピードをいかにロスさせないでボールに伝えるかにあった。複数のドライバーを打ち比べると、飛ぶものと飛ばないものがあると思うが、これは単にあなたのパワーロスを減らすことができたクラブか、できなかったクラブかということである。“このドライバー、飛ぶわ〜”ではなく、「合っているクラブを使えば、俺ってこんなに飛ばせるんだ!」というふうに思ってもらいたいのである。
もったいないだらけのアマチュアほど飛距離アップのチャンス!
ゴルフクラブ、とくにドライバーはこの30年で急速に変化し、もはや開発の余地がないところまで成熟してきたとみることもできるが、アマチュアゴルファーはプロゴルファーと比べ、スウィング効率が悪く、打点もバラツキがちだ。
人によっては男子プロみたいなパワーを持っているが、スウィング運動自体にロスが多いため、持ち前のパワーを飛距離につなげることができていない。あるいはスウィングスピードが速くても、ちゃんとフェースのいいところで当てられないために結局、ボールを飛ばせない。飛距離不足に悩むアマチュアの多くが、この2つの“もったいないロス”をダブルで抱えているのである。
ちなみに、高初速フェース、慣性モーメントアップなどのよく聞くクラブヘッドの進化は、もったいないロス後者の“芯に当たらなかった時”を軽減するためのもの。最初のスウィングによるパワーロスは基本的にはレッスンなどに通って解消するしかない。シャフト選び(長さ・重さ・硬さ)で改善の方向に導くこともできるが、根本的にはスイングによるところが大きいはずである。
今回の記事をまとめると、最も言いたいのは、望んでいるプラス(飛距離)とは、マイナスを減らすことで生み出されるものだということだ。クラブを替えて飛距離が伸びたのなら、それはもともとあなたにそれだけのボールを飛ばす能力があったということ。ゴルフクラブがそれを引き出したと言える。もちろん、自分が飛ばせたからといって、誰もが同じようになるわけではなく、同じクラブでも打つ人が変われば、逆にエネルギーロスを助長するモノになってしまうことだってあることを踏まえておきたい。
アマチュアゴルファーの望みは、ほとんどの人が現状“パワーロス”をたくさんしている、もったいない状態にあるということだ。スイング改善や合ったクラブに巡り合うことで、比較的簡単にもっともっと大きくボールを飛ばすことができるのである。効率のよいスイングと正確なインパクトができているプロゴルファーは、トレーニングを重ね自分の出力を上げていくしか、大きく飛距離を伸ばすことができないかもしれない。ゴルフクラブにエンジンがつくことは、この先もきっとないのだから。