正しいスイングは正しい構え方(アドレス)から
「うまくボールを打つためにはスイングの前段階、ボールに対する構え=アドレスが非常に重要です。ここさえしっかりしていれば、初心者でもひとまず前に飛ばせる可能性が高まる。しっかりと正しいアドレスの手順を覚えておきましょう」
そう語るのはプロゴルファーの中村修。握り方から構え方、振り方、練習法に至るまでのすべてを、網羅的に教えてもらおう。まずは構え方からだ。
ちなみに、ゴルフは最大で14本のクラブを使用して行うゲームだが、その中からもっとも中間的な番手である7番、あるいは8番アイアンを使って、以下のハウツーを実践することを想定している。
「まず、ボールが体の中心に来るように両足を揃えて立ちましょう。そのポジションから片足ずつ開いてまっすぐ構えます。そのあとで、左右の足を同じくらい、肩幅程度まで開きます」(中村修、以下同)
これでスタンスが完成。続いて、ゴルフのアドレスに特有な「前傾姿勢」を作っていく。
「軽くひざを曲げ、両足の付け根辺りから上半身を前傾させていきます。このとき腰が反りすぎたり、丸くなりすぎるのは良くないです。まっすぐな状態で構えて、背筋も同様にまっすぐな状態を維持したまま倒していきましょう。普段角度はまったく意識しませんが、あえて言うなら25〜30度くらい体を倒すイメージです」
スタンスの種類や、ライによって取るべきスタンスについて詳しくはこちら↓
スイングに影響大! ゴルフクラブのもっとも自然な握り方
前傾姿勢をとったらクラブを構えるわけだが、ここで重要なのが「手元の位置」の決め方だ。
「まず、腕や手首に力を入れずにだらんと下げてみましょう。そのとき自然に作られる手首の角度や位置がアドレスの手の形になりますので、そのままの形で、体の中心でクラブを握ったら、ほんの少し手元の位置は左脚ももの内側に構えるのがポイント。左手の親指をグリップの上に乗せ、その親指を右手のひらで包み込むように握ってください」
プロゴルファーは、右手小指と左手の人差し指を絡めるように握ったり、右手小指を左手の人差し指と中指の間に乗せたりしてグリップするが、このように複雑に握る必要はない。グリップの上に置いた左手親指を包むことだけ気をつけて、あとは自然な形で握ろう。
前傾して、ダランと手を垂らし、その位置でクラブを持つ。そして、持ったクラブをソール(地面に着ける)すれば、そこが自ずと正しいボール位置となる。左右の足を同じ幅に広げてスタンスを取ると、自然とボール位置も体のほぼ中心となっているはずだ。
「このとき注意したいのは、ボールに注目しすぎて頭が下がってしまうこと。それを意識しすぎて不自然に上げてしまうのも良くない形です。首は背骨と同様にまっすぐの状態で、目線だけでボールを見るようにしましょう」
カッコいいアドレスの作り方については、こちらもご覧ください↓
使うクラブによってボールの位置は変化することを知っておこう
以上でアドレスが完成。基本的にこのやり方はどの番手にも通ずるものだが、クラブの長さによって多少の調整が必要な場合がある。たとえば、一番長いクラブであるドライバーの場合ではどうなるのだろうか。
「ドライバーは、クラブが長いぶん足の開き幅が変わってきます。左足はボールに対して靴一足分くらい、右足は肩幅がスタンスの内側に入る程度まで開きましょう」
ティアップして打つという点も、ドライバーと他のクラブとの大きな違い。アドレスに一工夫を加えることで、より飛距離が出せる形が作れるのだという。
「アドレスした後に体を少しだけ右側に傾けてあげましょう。ドライバーを打つ際はティアップされて地面よりも高い位置にボールがあるため、少し体を傾けることで下から上へ、アッパー軌道でボールをとらえやすくなります」
テークバック
クラブを正しく握り、構えたら、続いてはクラブを振り上げていく。この振り上げる動きのことを、テークバック、あるいはバックスイングという。その正しいやり方も把握しておこう。
「まずテークバックでは腕でもクラブでもなく、お腹(体幹)を中心として動かす意識が大切です。お腹とクラブの動きを合わせるように上げていきましょう。このとき、両肩と手元の3点を結んだ三角形をイメージして、それを崩さないように上げるのがポイントです」(中村)
三角形を維持しながら左腕が地面と平行になるくらいまで上げれば、お腹は右側を向き、自然と腕・クラブに角度がついているはず。その位置がトップだ。
トップと切り返し
トップとはクラブがもっとも大きく振り上げられた瞬間のポジションのこと。このポジションまできたらテークバックは終わり、クラブはダウンスイングへと移行していく。そして、テークバックからダウンスイングへの移行の瞬間、それを「切り返し」と呼ぶ。
ただ、実際は、切り返しの動き自体はクラブが上がり切る前に行うのが正しいイメージとなる。
テレビで見るプロゴルファーは写真A右の位置までクラブを振り上げているように見えるが、実際は写真A左の位置までクラブを上げれば体の動きとしては完了。そこから先はクラブに働く遠心力の作用によって、体が“動かされる”というのが正解だ。ましてや手の動きだけでクラブを持ち上げる動きは必要ない。
「写真A右のように、振り上げすぎてトップが大きくなるのは良くない形です。三角形を維持しつつ上げられるポジションであることが大事ですね」
「左腕が地面と平行まで上がったなと思ったら、そのタイミングで切り返しに入りましょう」と中村。やり方はカンタンで、クラブを振り上げる際に右足寄りに動いた左ひざを、元の位置に戻す。それだけでいい。
「切り返しの反動で意識せずとも手元が少し上がり、ダウンスイングへの勢いがついていきます。ですので、意識的には写真B左の位置でクラブを上げ終えても、実際は写真B右のようにそれよりも手元の位置は高くなりますが、それで正解。問題ありません」
やや難しく感じられるかもしれないが、この切り返しはゴルフスイングでもっとも複雑なパートと言ってもいい部分。ひとまず、「左腕が地面と平行になったら、左ひざを元の位置に戻す」ことだけでも意識しておこう。
ダウンスイングからインパクトへ
続いてはダウンスイングへと移行していく。ここで重要となってくるのは体を動かす順序だ。
「左ひざ→腰→腕→クラブと動かしていくのが、クラブヘッドを加速させ、より飛ばすために理想的な動きの順番です。これがたとえばいきなりクラブから下ろしてしまうと、タメが作れずにヘッドがうまく加速しないうえ、手だけでクラブを動かしてしまうので軌道もズレてしまいます」
どうしても、目の前にあるボールを打ちに行こうとして振り上げたクラブを腕の力で引き下ろしたくなってしまうものだが、前述したようにまずは左ひざをアドレスの位置に戻すことを意識し、なるべく下半身の動きを主にスイングするのが成功への近道となる。
ゴルフの正しいスイングにおいて、正しいインパクトとは、クラブヘッドのフェース面が適度な入射角でボールに対して直角にあたり、ボールが真っすぐに飛んでいくこと。だが、完全なるスクェアヒットはそう簡単にできるものではなく、ましてや意識できるものではない。
始動からフィニッシュまでわずか2秒程度というゴルフスイングにおいて、インパクトはまさに一瞬であり、そこを小細工することは不可能。“スイング”という言葉のとおり振り抜くことを意識して、“当てる”イメージは(たとえ最初は上手に当てられないとしても)持たないほうが結果にはつながりやすいだろう。
フォローからフィニッシュ
インパクト後でのフォロースルーでは、ボールを打った勢いで体が起き上がってしまったり、目標方向につっこんでしまわないように「頭の位置」に注意しよう。
「頭とボールの距離を変えないように意識するとスムーズに振り抜けるし、起き上がりやつっこみも防げます。この距離関係が変わらなければ、顔は打ち出し方向を向いてもオッケーです」
フォロースルーから手元を左耳辺りまで上げていけばフィニッシュの形に。「右肩がターゲットを向くようなイメージを持つとカッコよく決まりますよ」と中村。無理のない範囲で、最後まで体を回し続けて、左足一本で立てるくらいの状態が理想のフィニッシュの姿勢だ。
このとき、飛んでいくボールがしっかりと想定していたとおりに飛んでいれば万事OK。逆に、ボールがあらぬ方向に飛んだり、曲がったりした場合、次のショットは曲がった先から打つ必要があるため、落ちどころをよく確認しておこう。
オススメの練習法
以上が正しい構え方、持ち方、振り方の概要。それがわかって「よし、ボールを打とう!」と意気込んでみたはいいものの、やっぱり上手く打てない。そんなケースも非常に多くあるはずだ。そんな初心者ゴルファーにオススメしたい練習法を次に紹介しよう。
「ボールを体の中心に置き、足を閉じて構えましょう。スタンスを極端に狭くすることで体重移動が減り、ボールをとらえやすくなりますし、クラブが走っていく感覚がわかってくると思います」
使用クラブは、「最初はピッチングウェッジでやってみましょう」と中村。ソール(クラブの底)に「P」とか「PW」と刻印されているクラブだ。
実際にボールを打って練習してもいいし、振り子のように繰り返し素振りをするだけでも効果的。上半身の力で打つのではなく、ヘッドの重さ、遠心力を感じながら打つのがポイントだ。
「このドリルではさらに、スイングの中でフェース面が開いて閉じる動作、『フェースローテーション』の感覚も学べます。フェースローテーションをすることによってクラブの運動量が増え、結果としてヘッドスピードが上がって飛距離につながります。ゴルフスイングの基本的な動作のひとつですが、足を閉じてスイングすることで、それも身につきやすくなります」
バックスイングでフェースが開き、ダウンスイングで閉じていく。この感覚をよりつかみやすくするには「グリップを柔らかく握りましょう」と中村。ギュッとクラブを握りしめずに、クラブフェースが開閉する感覚を意識してスイングしてみよう。
なお、ここでは詳述しないが、グリップの種類によってフェースローテーションの度合いも変わってくることも覚えておこう。
「慣れてきたら少しずつスタンスを広げていきましょう。スタンスを変えても振り幅はそのままです」
ピッチングウェッジできちんとボールに当てられるようになったら、7番アイアン、ドライバーとだんだん長いクラブでも挑戦してみよう。少しずつ振り幅を大きく、スイングスピードを速くしていけば、自然とクラブの特性を活かした効率の良いスイングができるようになるはずだ。
ドライバーとアイアン、フェアウェイウッドの違い
ドライバーとアイアン、フェアウェイウッドなどの打ち方の違いも把握しておこう。基本のスイング像は7番アイアンで説明したが、これは7番アイアンが14本のクラブの中間に位置する番手だからだと述べた。
基本的に、7番アイアンより下の番手(8番、9番、PW、ウェッジ類)となるほど、長さに応じてスタンス幅は少しずつ狭くなり、ボールとの距離は近くなっていく。そして、その分だけスイングの軌道は横振りから縦振りになっていく。
ただ、だからといってとくに打ち方を変える必要はない。とくにビギナークラスであれば、たとえば7番アイアンと9番アイアンのスイングはまったく同じというイメージで問題はなにもない。強いていえば、クラブが短くなるほどややボールが左に飛びやすくなることだけ頭に入れておくくらいで十分だ。
一方、7番アイアンより上の番手(6番、5番、ユーティリティ、フェアウェイウッド、ドライバー)はその逆で、少しずつスタンス幅が広くなり、ボールとの距離が遠くなり、スウィング軌道は横振りに近くなっていく。
ここでの注意点は、クラブは長くなれば長くなるほど取り扱いが難しくなるということ。ドライバーの次に長いクラブである3番ウッドがアマチュアにとってもっとも難易度が高いとよく言われるのは、その長さに主な原因がある。
一番長いクラブなんだからドライバーが最難では? と思われるかもしれないが、そこにはドライバー固有の事情がある。基本的に、ドライバーは唯一空中にティアップするのが前提のクラブ。その分だけ地面にあるボールを打つケースが多い3番ウッドに比べてボールを上げやすく、それがドライバーの難易度を(あくまで3番ウッドと比べてだが)下げている。
また、空中にあるボールを打つドライバーと他の番手は打ち方が決定的に異なる。ドライバーは、スイング軌道の最下点から最下点の先の間のポイントでとらえるのが基本であり、それ以外のクラブは最下点の手前から最下点の間のポイントでとらえるのが基本となる。
ただ、これもクラブの長さに応じて適宜スタンス幅を変え、ボールとの距離感を変え、ボール位置を変えていけば自然とそうなるという類のもの。過度に意識することはない。ただ、ドライバーとそれ以外のクラブでは、ボールをとらえるポイントが違うということは頭に入れておこう。
フェアウェイウッドの打ち方について詳しくはこちら↓
ダフる、トップするのはなんで? 解決策は?
さて、以下ではスイングした際に起こる代表的なミスについてもまとめておこう。まずはミスの代名詞ともいえるダフリ、トップ。ダフリとはボールの手前を打ってしまうミス。トップとはボールを地球とみなした場合の赤道にあたる線より上をヒットしてしまうミスで、いずれも打点のミスだ。ビギナーにつきものの空振りのミスも、このトップのミスの度合いが強いものとみなすことができる。
これらのミスには、「ヘッドアップしないようにしよう」とか「ボールをよく見よう」といったようなアドバイスがなされることが多くあるが、原因は様々なので一概に正解とは言えない。
ただ、打点のミスであるため、ボール位置の見直しは有効な対策となり得る。たとえばダフリがひどいならばボールを右足寄りに置いてみるといったように。ショットの前に素振りで芝を擦り、擦った跡の残る位置(最下点)にボールをセットしてみるといった対策も有効な方策となるだろう。
ダフらないスイングについて、詳しくはこちら↓
スライスする、フックするのはなんで? 解決策は?
ビギナーを悩ませる、右にボールが曲がっていくスライス。この原因は、基本的にはインパクトでフェース面が開いている(右を向いている)ことにある。正確には、インパクトでスイング軌道に対してフェース面が右を向いていることがスライスの原因となるのだが、ともかくフェースが開くとスライスになるのは間違いがない。
実はゴルフクラブのヘッドの重心はグリップの延長線上から離れた場所にあり、基本的にはそもそもフェースが開きやすい構造をしている。だからこそ、プロや上級者はインパクトでしっかりとボールをつかまえるため、スイング中にフェースが開かないようにしたり、インパクトでスクェアに戻ってくるように、テークバックでフェースを開き、ダウンスイングで閉じる動きを入れたりしている。
多かれ少なかれフェースを「閉じる」という独特の動作の習得が必要となり、これにはコツが必要となるため、前述した練習法などでフェースローテーションの感覚をつかむことが地道だがもっとも近道となる。
ゴルフクラブは基本的に長い番手ほどつかまりにくく(スライスしやすく)、短い番手ほどつかまりやすい(スライスしにくい)。なるべくならいきなりドライバーでフルスイングしようとせず、短い番手でボールをつかまえる練習をしておくと、先々がラクになるはずだ。
ゴルフクラブのヘッドの重心はグリップの延長線上から離れた場所にあり、基本的にはフェースが開きやすい構造をしている。
ゆえに、多くのビギナーがスライスに苦しむことになるのだが、なかには最初からフックが出るという人もいる。これは逆にインパクトでフェースが閉じている(クラブの軌道に対してフェースが閉じている)ことを主たる原因とするミス。ダウンスイングで手を返す動きが強すぎる、アドレスで極端にフェースを閉じて構えているといったことが、その要因としては考えられる。
オススメの動画
最後に、文字や写真よりも動画で見たい! という人向けに、オススメの動画をご紹介。この記事で紹介した内容とニュアンスにおいての違いがある場合もあるが、どちらでもより自分が納得できるもの、フィーリングの合うものを参考にしてもらえればいい。まずはグリップから。
続いてはアドレス。
クラブによって異なるボール位置の考え方は、動画だとわかりやすいはず。
スイングの全体像も、映像で把握するとよりイメージしやすい。
ゴルフスイングは難しい。その難しさが、上手くいかない、楽しくないにつながってゴルフを諦めるビギナーも決して少なくない。しかし、ちょっとしたコツをつかめば驚くほど急激に上手くなることがあるのもゴルフ。そして、技術はなくとも時折プロ顔負けのナイスショットが打ててしまうのもゴルフ。
難しい! と諦める前に、この記事を参考にしてちょっとずつの成功体験を積み重ね、ぜひともゴルフという長く楽しめ、深く味わえるゲームの面白さに浸っていただきたい!