前回、ヘンリク・ステンソンがティショットで多用するフェアウェイウッド、「ディアブロオクテインツアー」の13度について紹介した。
両サイドが狭いホールやドライバーが苦手な人はもちろん、ドッグレッグの曲がり角や池の手前などにボールを運びたいときに、ドライバーでは飛びすぎてしまうケースなどで、ティショットを成功させるためのギアの有効性は高い。
筆者は、20年来、ドライバーの代わりに打てるティショットギアを模索してきた。アイアン型UTを数多く打ち、大ぶりでティショットに向いていそうなフェアウェイウッドも色々と試したが、なかなか信頼して打つには至らなかった。
現代の460cc級ドライバーはどこに当たっても、前に飛んでくれそうな気がするし、実際、ミスの曲がり幅も小さくなっている。それに対して、これらのクラブは、ヘッドが小さくて、相対的にシャフトも長くなり、下手をするとドライバーよりかなり難しくなってしまうのだ。
3WやUTでティショットする場合、ミスすると、大きく飛距離を残すし、余計に曲がってしまうこともある。大型ヘッドのドライバーでは少なくなった、大きく弧を描くダグフックが、小ぶりなヘッドでは出てやすくなる側面もある。
それならラフでもなんでも良いから、ドライバーでどんと飛ばしたほうがマシだと考えるゴルファーは多いだろう。筆者もなんとなくしっくりこないまま、3Wとウッド型UTでのティショットを併用していたが、最近、テーラーメイドのミニドライバー「オリジナルワン」を購入し、この問題がずいぶん改善できた。
「オリジナルワン」は、275ccのミニドライバー。小さいながらカーボンクラウンや「ツイストフェース」など、最新テクノロジーが詰まったクラブだ。ドライバーだと思うと小さいが、スプーンだと思うとかなり大きく、構えても安心感がある。実際、スプーンよりはるかに曲がりに強く、スプーンよりも飛ぶ。スプーンがある程度打てる技量があれば、簡単なクラブと言っても過言ではない。
以前から、テーラーメイド「SLDR S Mini」(250cc)やキャロウェイ「ビッグバーサ1.5」(235cc)など、海外ではミニドライバーがラインナップされていた。これはドライバーが苦手な人に、短くて振りやすいクラブの提案をメーカーが行っているということだ。「オリジナルワン」の完成度の高さもこうした過去のクラブたちの蓄積があるように感じる。
使ってみて気づいたことだが、最大の利点は飛距離への欲を消せることだ。ドライバーの魅力は飛距離。多くのゴルファーが5ヤードでも前に飛ばしたいと願っている。仮に、少し飛距離を落としてもいいから、安定させたいと思っていても、ナイスショットしてそこそこの飛距離が出たら、振ったらもっと飛ばせるんじゃないかと考えてしまいがちだ。その飛びへの欲求を消すことは、簡単なことではない。少しでも遠くへ、前に飛ばしたいというのは、ゴルファーの根源的な欲求だからだ。
「オリジナルワン」は、昔のドライバーの大きさと長さ(※43.75インチ程度)だが、ドライバーと一緒に2本入れていて、いわば2番ウッドのような位置づけだ。つまり、飛ばしたいならドライバーを持てばいいので、これを持ってマン振りしてやろうなどとは思わない。ミニドライバーを手にした瞬間、“飛ばす必要はない”というスイッチが入れやすいのだ。
飛ばしへの欲求を、クラブを変えることでコントロールできるので、スイングのバランスも崩れにくくなる。いわば飛ぶドライバーと飛ばないドライバーの二刀流だ。今後、こうしたミニドライバーが、各メーカーから登場する可能性も少なくないだろう。大型ヘッドを持て余し、振りやすいティショットギアを求めているゴルファーは多いからだ。