マキロイはキャリー369ヤード、トータル392.7ヤード
HOLA! こんにちは。ケンジロウです。メキシコシティのチャプルテペックGCよりお届けしております。
事件は火曜日の午後、練習場で起きました。ダスティン ・ジョンソン(以下DJ)とロリー・マキロイ が練習場の奥の打席で横並びになって仲良く練習していました。2人ともトラックマンを打席の後ろに設置して、各クラブの飛距離(キャリー)を入念にチェックしていたんです。
ここ、メキシコシティの試合でトラックマンでの飛距離チェックはもはやお馴染みの光景。何せメキシコシティは標高2200メートルの場所にあるので、平地より球が飛びます。さらにこのチャプルテペックGCは市街地より200メートル高い場所にあるので、コースの標高は約2400メートルとなり、富士山の5号目地点でゴルフをしているようなものなんです。
DJもマキロイも二人とも球を打っては談笑し、関係者も交えて冗談を言い合うなど、和気あいあいの雰囲気でした。ところがマキロイがドライバーを手にしたときに状況が一変したのです。
マキロイが今年から使用しているSIMドライバーでスパーンと振りぬいた球は、練習場のはるか先に消えていきました。そして数秒してアイパッドの画面に出たマキロイのトラックマンデータを見て、その場にいた関係者一同驚きの声を上げました。
それもそのはず、キャリー369ヤード、トータル392.7ヤードというとんでもない数値。いくら高地にあるとはいえ、キャリー369ヤードはびっくりしますよね。
それを見ていたDJの顔色が変わったのは言うまでもありません。すぐさまこちらも新しいSIMドライバーのヘッドカバーを抜き、ボールをセットして、バチコーンと球を叩きました。
そしてDJの持つアイフォンに現れたデータは、キャリー362.6ヤードという結果で、マキロイには7ヤードほど及びません。その後もマキロイの記録に挑戦すべく、何度も振り回したDJでしたが、だいたい360ヤードの辺りを行ったり来たり。
一方のマキロイはときに370ヤード越えを出すなど、気分よく球を打って練習場を後にしました。この二人、飛距離はほとんど差がないはずですが高地に来ると差が出るのはなぜなんでしょう? その場にいたテーラーメイドのスタッフに話を聞いてみると、
「それは球の高さの問題だと思うよ。ロリーは球が高くて、DJのほうが球が低いからね、高地に来ると球が高いほうが飛距離の恩恵を受けやすいのさ。だいたいの選手はここに来ると普段の番手の飛距離に+15%して距離を計算するところ、ロリーは+17%で計算しているんだって」とのこと。
なるほど、面白いハナシ。つまり球の高い選手ほど、距離の影響を受けやすいということか。マキロイは上の数値を見てもわかりますが、アタックアングル(入射角)が5度近くあり、アッパーで当てているのがわかります。DJはそれがマイナス1度ぐらいですからね、明らかにマキロイと球の高さは違います。球の高いマキロイは高地に来ると「より飛んでしまう」のでしょうね。
実はこの高地での計算式、現場でもいろんな話が飛び交っています。ゲーリー・ウッドランドのキャディ、ブレナン・リトルが飛距離計算の早見表なるものを持っていたので、見せてもらいました。そこには12.5%と15%の二つの飛距離換算が載っていたんです。
「短いクラブは15%、長いクラブは12.5%の計算式で考えているんだ。球が高くて空中を浮遊する時間が長い短いクラブだと15%が大半だね。例えば残り150ヤードだったら、番手も短いし15%で計算してこの換算表見ると平地でいう127ヤード打てばいいと考える。190ヤードぐらいだと微妙だけど、それでも同じく15%。通常はフロリダだと7番アイアンだけど、ここでは160ヤード打てばいいから9番アイアンで打つよね。でもここのグリーンはフルショットだとスピンがかかって戻りやすいから、9番のスリークォーターで打つかな」(ブレナン)
番手によって飛距離換算の差が違うというのは日本から参戦している今平周吾、石川遼も感じていて、各番手のキャリーの距離をトラックマンで確認し、ヤーデージブックに書き込んでいました。
火曜日の夜には今平周吾の加藤大幸キャディ、石川遼の出口慎一郎キャディ、松山英樹の早藤将太キャディと三人の日本人キャディが集まって高地の飛距離問題に対して意見交換する姿も見られましたよ。その中で出た話を少しご紹介。
「ドライバーも打ち上げと打ち下ろしで飛距離の換算具合に差が出るよね。打ち下ろしは300ヤードが340ヤードになることもあるけど、打ち上げは意外とそこまでいかなかったりするし」(出口キャディ)
「アゲンストは意外と飛んでいっちゃうから気を付けないと。アゲンストだからって番手を上げると、いつもよりスピンが少ないからそのまま突き抜けちゃうよね」(加藤キャディ)
「同じ200ヤードだとしても松山先輩はいろんな球を打ちわけるから、なかなか単純な距離換算ではいかないですよね」(早藤キャディ)
「確かに“ビトウィーン”の距離をカットに打ったりして距離を抑えるタイプとインパクトの強弱で距離を変えるタイプとで高地での飛距離計算は違った答えになりそう」(加藤キャディ)
「僕は試合中に計算機を使っていいか確認したんですけど、一応オッケーでした。大っぴらに使わないでくれって言われましたけど」(早藤キャディ)
高地での飛距離問題はなかなか話がつきませんが、今回はこの辺で。以上、メキシコシティからお届けしました。
撮影/姉﨑正