3番ウッドの次に飛ぶ「適正弾道・適正飛距離」を求めてる?
「TS4は、TSシリーズのなかでもとも重心が浅く、ヘッド体積も430ccと小さいのが特徴のヘッドです。小さいヘッドはコントロールが効きやすい。上下左右に球筋をコントロールするのがやりやすいというのも特徴のクラブです」
と語るのは、タイトリストの契約プロで同社のドライバーを熟知するプロゴルファー・堀越良和。堀越は、続けてアダム・スコット自身のスウィングとの相性をこう分析する。
「あくまで私見ですが、アダムは入射角がマイナス、すなわちややダウンブローにヘッドを入れてくる選手です。そして、アダムのヘッドはロフトが8.5度や9.5度ではなく、10.5度。そこから見えてくるのは、弾道が高すぎず、スピンも少なすぎない弾道へのこだわりではないでしょうか」
重心が浅いクラブはスピンが減りやすいが、シャフトの軸線から重心が近い分コントロールしやすい。その上でロフトをやや寝かせることで、適正なスピンを確保。ややダウンブローに打ち込むことで、低スピン過ぎない強弾道を打っているというわけだ。
クラブコーディネーターとして多くのメディアに登場する鹿又芳典も、アダムが“小ぶりヘッド”を採用する理由を「コントロール性だと思います」と言う。
「アマチュアにとって、ドライバーは飛べば飛んだほうがいいクラブですが、一部のPGAツアーの選手にとって、縦の距離がコントロールできないくらい飛びすぎてしまうのは困りもの。縦の距離、そして球筋の上下左右のコントロールをするときに、小ぶりヘッドのほうがやりやすいのではないでしょうか」(鹿又)
松山英樹がヘッド体積435ccのM5ツアーを使ったり、ジャスティン・ローズが契約する本間ゴルフのニューモデル・TR20にも460ccと440cc、ふたつの設定があるのも、そのあたりに理由があるのかもしれない。
鹿又によれば、海外のクラブメーカーのスタッフとディスカッションをすると、「選手たちからは、飛びと安定性の両立を求められる」という声が多く聞かれるのだという。300ヤードを楽々越す男たちにとっては飛距離“だけ”では不十分で、当たり前だが安定性も必要なのだ。
そして、飛びすぎない、安定性のあるドライバーとはどんなクラブかといえば、「3番ウッドの次に飛ぶクラブとしてのドライバー」だと鹿又。きちんと打ちたい距離が打てる。その性能をドライバーにも求めると、コントロール性能の高い小ぶりヘッドがやりやすくなってくる。
鹿又は、この発想はアマチュアゴルファーの、それも中上級者にとっては、カタチを変えて大いに参考になるという。
「要は、飛距離だけでなく、飛距離+安定性でドライバーを選ぶという発想ですよね。たとえば、最近のモデルだとミズノのST200シリーズは、スピードと安定性を両立させている印象です。多少スピンが入り、球がつかまり、コントロール性もあって。もっといえばゼクシオのようなやさしいクラブに、自分に合うシャフトを組み合わせてみるのも面白い発想です」(鹿又)
ヘッドスピードのあるゴルファーにとっては、とにかくスピン量の少ないヘッドのほうが飛ぶ可能性は高い。しかし、コースで使うことを考えれば、つねに安定して飛ばせるクラブのほうがスコアアップにつながる可能性は大いにある。
飛び+安定性でドライバーを選ぶ。アダム・スコットら一部のトップ選手の考え方は、意外とアマチュアゴルファーも参考にすべきかもしれない。