男子ゴルフ世界ランキングで2位(3月8日時点)のジョン・ラーム。4月のマスターズに堂々たる優勝候補として臨む、現時点でのスペイン人最強のスウィングを、プロゴルファー・中村修が解説。

コンパクトトップながら飛距離は楽々300ヤード超え

今季絶好調のジョン・ラーム。1月の「ファーマーズインシュランスオープン」で2位、「フェニックスオープン」でも9位、2月の「WGCメキシコ選手権」でも3位と安定しています。188センチ100キロと分厚い体の持ち主で、2017年の全米オープンで本人と握手をしましたが、まるでキャッチャーミットで握り返されたような感触でした。

画像: 2020年、好調をキープし続けているジョン・ラーム(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/有原裕晶)

2020年、好調をキープし続けているジョン・ラーム(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/有原裕晶)

今季はメジャーに手が届くところまですべての面でレベルアップしているようです。コンパクトなテークバックから豪快に振りぬくと、飛距離は優に300ヤードを超えてきます。体の分厚さも相まって、「排気量の大きいアメ車のようなスウィング」という表現がピッタリです。スウィングをじっくり見ていきましょう。

まずアドレスを見ると、やや広めのスタンスで左グリップは左手甲がターゲットを向く、ウィーク気味に握ります(写真A)。テークバックは手首を親指側に折らないノーコック気味に、両腕を伸ばしたまま手が体から遠くなるように、ワイドに始動しています。

画像: 写真A:スタンスをやや広く取り、ワイドにクラブを上げていく(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

写真A:スタンスをやや広く取り、ワイドにクラブを上げていく(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

写真B左の画像がトップの位置で今にも切り返す瞬間ですが、非常にコンパクトですね。テークバックが小さいと飛ばせないと思いがちですが、彼の場合はテークバックでワイドに上げることでしっかりと下半身から背中にかけての筋肉が伸張されています。

ウィークに握った左手グリップは、切り返しの時点で手のひら側に折れるように掌屈しフェースが閉じた状態を作っています。そこから左サイドへ踏み込み、流れるようにエネルギーをクラブに伝えていきます。

画像: 写真B:切り返し直前の画像が左。非常にコンパクトなトップであることがわかる(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

写真B:切り返し直前の画像が左。非常にコンパクトなトップであることがわかる(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

分厚い体でためたエネルギーがすべてクラブヘッドに伝わっているかのようなスウィングです。トップからの切り返しでの掌屈の動きでフェースが閉じてきているので、インパクトに向けてフェースを閉じる量は非常に少なくなっています。そのため、インパクト直後(写真C右)でもフェースを返さずに打っているように見えています。

画像: 写真C:切り返しでフェースが閉じてくるので、フェースを返す動きは少なめ。踏み込んだ左足をインパクトで伸ばすことでより強い回転力を生み出している(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

写真C:切り返しでフェースが閉じてくるので、フェースを返す動きは少なめ。踏み込んだ左足をインパクトで伸ばすことでより強い回転力を生み出している(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

下半身に目を向けると、踏み込んだ左足がインパクトでは伸ばされ、左の肩を支点としたより強い回転力に結びついています。自分にマッチした叩いても曲がりにくいスウィングを身につけたことが安定した成績につながっているのは間違いないようです。

フィル・ミケルソンの後輩でアリゾナ州立大からプロ転向し、世界ランク2位にまで登ってきたジョン・ラーム。粗削りでショートテンパーなところがラームらしくもありましたが、25歳になっていよいよメジャーに手が届くシーズンになりそうです。

セベ・バレステロス、ホセ・マリア・オラサバル、セルヒオ・ガルシアに続く、グリーンジャケットに袖を通す4人目のスペイン人となるのでしょうか。まずはマスターズで彼のゴルフに注目してみます。

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