僕が「コーチング」に行きついた理由
今、ゴルフのレッスンで圧倒的に主流なのはティーチングです。僕もレッスンを始めた当初は、クラブや体の動かし方などを細かく教えていました。
コーチとして独立して教えるようになったのは、今から8年ほど前です。
選手の成長が見えやすく、長期にわたって寄り添えるからという理由でジュニアをメインにレッスンを始めました。ジュニアはとても純粋で、どの子もみんな真剣です。
独立したての僕も「いいスコアで回らせたい」「試合にも勝ってほしい」と必死になっていて、時には感情的に怒ってしまうようなこともありました。
ですがその思いとは裏腹に、なかなか結果を出すことができません。そのためさらに厳しく教える、でも結果が出ないというような期間がしばらく続きました。いつしか成果を求めるあまり、技術を詰め込む教え方になってしまっていたのです。
選手が一生懸命取り組んでいても結果が出ないので、教え方に問題があります。でも当時の僕は、それを解決するだけの力がありませんでした。
そんな悩みを抱えて悶々としていたある日のこと、練習をしているジュニアたちを遠目から眺めていると、アレ?と引っかかることが。
彼らは僕が教えるときよりも、楽しそうに練習していたんです。あまりに楽しそうだったので、しばらく見ていることにしました。
いつもは気になることがあればすぐに教えていましたが、その日は少し我慢をして観察することに徹したんです。
結局、彼らは僕が教えているときと同じくらいの練習量を、自分たちでクリアしました。しかも楽しそうに。
教えなければ選手は考え始める
それをきっかけに、徐々に口酸っぱく指導することをやめてみました。すると、今度は子どもたちからポツポツと質問が出るようになったんです。
「打っているうちにボールが曲がってきちゃったけど、なんで?」
「同じくらいの体つきの子が僕より飛ぶのはなんで?」
そこでも答えを教えるのを我慢して、「なんでだろうね、どう思う?」と聞いてみると、「右手に力が入っちゃってるからですか?」なんて、ちゃんと答えが返ってくるんです。
こんなことがいくつか重なって、僕は打ち方を教えることをやめ、彼らにヒントを与えるようになったのです。教えないことへの不安はありましたが、不思議と結果もついてくるようになりました。
僕はこうして教え子たちから、答えを教えないコーチングを教わったのです。
「打ち方は教えない。」(ゴルフダイジェスト社)より