大成功となった女子ツアー開幕戦「アース・モンダミンカップ」だが、その開催と選手たちの出場をめぐっては不安の声も多くあった。本当に安全なのか? 海外選手が出られないのは不公平ではないか? 選手と協会の間に入り、“連絡役”を担ったプレーヤーズ委員長・青木瀬令奈は、選手たちの不安の声や、葛藤と向き合う日々を過ごしていた。選手側の代表として大会を縁の下から支えた青木に、話を聞いた。

「コロナ対策がわからないと出欠が決められない」選手の声を教会に届けた

今年の女子ツアーで“プレーヤーズ委員長”を務める青木瀬令奈。プレーヤーズ委員長とは、いわば選手会長的な役職。就任早々、前代未聞のコロナ禍という未曾有の事態に突入した青木は、選手とJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)の連絡役として、3月以降多忙な時期を過ごしていたと言う。

画像: 1バーディにつき2万円を寄付するというキツネチャリティのポーズをとる今季のプレーヤーズ委員長を務める青木瀬令奈(Getty Images/JLPGA提供)

1バーディにつき2万円を寄付するというキツネチャリティのポーズをとる今季のプレーヤーズ委員長を務める青木瀬令奈(Getty Images/JLPGA提供)

「多いときは毎日、朝から晩までライン(でやりとり)とかリモート会議とか、小林(浩美)会長とも先日リモート会議をさせていただいたりと、私自身は協会の方とほぼ毎日のように連絡をとっていました。選手から連絡があれば 1分以内にフィードバックしようと思っていたので、ラインで質問が来たらすぐ協会の方に投げて、返答がきたらすぐ選手にと心掛けてやってました」(青木)

アース・モンダミンカップの開催が決まったあとも、出場をめぐってはやはり選手たちから不安の声もあった。

「大会を開催するにあたって、どれくらいアルコールやコロナ対策の設備が整っているか分からないと出欠が出せないという声が(選手から)ありました。試合会場から家族のもとに(ウイルスを)持って帰ってはいけないという思いがあって、先にガイドラインを出してほしいという要望があったので、早めに開示してほしいとお願いしました。しっかり検温もPCR 検査もしてほしいというのもあったので、そういうところは実現できたところだと思います」

大会は、主催者、協会側は徹底的な感染予防対策をとることで成功裡に終わった。だが、その成功も選手たちが出場したからこそ。「安心して出場して大丈夫」というメッセージを選手に届ける役割を担った青木の役割は小さくなかったはずだ。

自分たちだけが出ていいのか。賞金ランクはどうなるのか。選手たちの葛藤。

そして、選手たちからもっとも多く声が挙がったのが、海外選手に関すること。「海外選手たちが入国できないなか、自分たちだけが試合に出場していいのか。賞金ランキングにはどう反映されるのか」そのような葛藤が選手たちにはあった。そんな中、青木のもとに昨年の賞金ランク3位のシン・ジエから書面が届いたという。

「今まで大会やLPGAを盛り上げてきた一員として、大会を開催してくださるのはすごく嬉しかったというのが、最初にありました。でも(海外選手は日本に)行きたくても行けないというのがあって、なにか協会側が出場するためのサポートをやってくれないのかなという内容がありました。でも、やるからには大会を盛り上げてほしいというジエさんの思いがメインで書かれていました」

海外選手が入国できない中での開催、そして獲得賞金は賞金ランクに加算される。シード権争い、賞金女王争いといった、その後の人生に少なくない影響を与える数字を巡る争いにも、当然ながら影響するだろう。同じツアーを戦う同志として、青木たち選手たちに葛藤がないはずがない。試合が終わった今も、海外選手の出場に関してもう少しどうにかできなかったのかと、という気持ちは残っているという。そのうえで出場するにあたっての気持ちを、青木はこう説明してくれた。

「一選手としては海外選手が出られないというところに対しての複雑な思いもあるけど、開催していただく主催者様、大会関係者の方々が(開催を)判断していただいたからには、私たちはベストパフォーマンスで大会を盛り上げるだけだなという 、その一心で大会を盛り上げられるように頑張ろうと練習してきました」(青木)

「選手と協会をつなぐ役割が私に与えられている」

ただ、残念ながら青木はオフの間に積み重ねてきた成果を発揮できずに、予選を通過することはできなかった。しかし試合に出場する楽しさを改めて実感したという。

「試合っていいな、と思いました。結果は予選落ちでしたが、1試合のためにこれだけの準備期間があって、これだけラウンドをこなしたりスウィングを改造したりこの大会に向けてやってきたという思いであったので(予選落ちの後は)珍しくショック過ぎて5日間外出してませんでした(笑)」

画像: 選手、キャディ、大会関係者の全員がPCR検査を受けた(Getty Images/JLPGA提供)

選手、キャディ、大会関係者の全員がPCR検査を受けた(Getty Images/JLPGA提供)

それでも青木は前を向く。選手としてはもちろん、プレーヤーズ委員長としての役割も、彼女には待っているからだ。

「私自身、翌週の試合に出場できるか、という経済的な苦しさを味わった下部ツアーでの経験もありますし、シード選手以外では試合に出場するのも(経済的に)苦しい会員もいます。そういう選手と協会とをつなぐ役割が私に与えられているのかなと思っています」

新型コロナウイルスの影響で開催が中止になり、支えてくれるファンとの交流も限られていることから、SNSを使ったライブ放送を同期のプロと行ったり、有志を募ってSNSの発信を積極的に行うことも女子プロゴルフ界を思ってのこと。選手とプレーヤーズ委員長、二足のわらじを履く青木瀬令奈の今後のプレーに注目したい。

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