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解説/プロトレーナー斎藤大介
柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持ち、ヨガの国際資格RYT200も取得。16年より米女子ツアー選手のトレーナーを務め、20~22年は渋野日向子の専属トレーナーとして活動。現在、国内外の選手をサポートしている。小誌で「らくらくゴルヨガ」を連載中。

ショートゲームの達人 青木瀬令奈
1993年2月8日生まれ、群馬県出身。前橋商業高校卒。2011年プロテスト合格。2017年ヨネックスレディスで初優勝。ツアー通算5勝。コーチ兼キャディは大西翔太プロ。身長153㎝。リシャール・ミル所属。
2015年 | 賞金ランク 27位 |
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2016年 | 賞金ランク 27位 |
2017年 | 賞金ランク 32位 |
2018年 | 賞金ランク 31位 |
2019年 | 賞金ランク 35位 |
2020-21年 | 賞金ランク 21位 |
2022年 | メルセデスランク 11位 |
2023年 | メルセデスランク 12位 |
2024年 | メルセデスランク 21位 |
アプローチの精度を高める軸の安定
上下の分離動作はパッティングだけでなく、アプローチにも効果があると斎藤トレーナーは語る。だが、トレーニングメニューは少し変わるという。

「パーオン率があまり高くない青木選手は、アプローチの精度でスコアメイクしています。上半身と下半身の分離動作が完璧で、軸がまったくブレません」(斎藤)
「アプローチはテークバックやフォローなど、ショットの動きに近くなります。ですので、長い棒を斜め上、斜め下に振る動きが最適なんです。斜めに棒を振ることで水平回転(体の回旋)にはない側屈や屈曲、伸展の動きが加えられます。これらの動作はスウィングのベースになるもので、ねじる動き(ツイスト)が身に付きます。その結果、上下の分離動作によるブレない軸が生み出せます」(斎藤)
青木が実践する「ツイスト」トレーニング
ツイスト①ドライバーのスタンスで斜めにツイスト
「長い棒を斜めに振ることで体にねじり動作(ツイスト)が加わります。水平方向への体の回旋だけでなく、側屈、屈曲、伸展がすべて含まれた上下の分離動作に欠かせないトレーニングです」(斎藤)

棒を斜めに振ってもバランスはキープ

上から下にバランスよく
ツイスト➁前後片足で斜めにツイスト
「難度が上がる前後片足での斜めツイストはおすすめです。完全に片足だと難しすぎるので後ろ足は小さめの台に乗せます。上から下、下から上を両方行うと効果が高いです」(斎藤)

ブレないよう斜めにツイスト
トレーニングの効果は飛距離にも表れていた
2024シーズンにおいて数々の自己記録を更新したという青木。なかでも本人が一番驚いたのが、ドライビングディスタンスだ。2023年より飛距離が5ヤード以上伸びている。
2024年 | 229.06Y |
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2023年 | 224.22Y |
2022年 | 219.78Y |
「平均パット数、平均ストロークは自信につながりますが、実は飛距離も過去イチでした。これこそトレーニングの効果なのかもしれません。ただ飛距離が伸びたことで今までにない負荷が足にかかり、それがケガにつながった可能性も考えています。それは今後見直していくつもりです。私のプレースタイルではFWやUTがスコアメイクの生命線でしたが、アイアンを持つ機会が増えて、逆に難しさもありました。飛ぶようになったことは大きいですが、やはり私には安定したゴルフが合います。飛距離については、大西コーチや斎藤さんと相談しつつ、取り組んでいきます」(青木)

「今季は5月と8月に2回飛距離がグッと伸びました」(青木)
青木の飛距離アップには、どんな要因があるのだろうか? それについて斎藤トレーナーは、
「スウィングは大きく2タイプに分かれます。回転系と踏み込み系です。青木選手は踏むタイプなのですが、体重比で見ても踏む力がとても強いです。そのため、トレーニングもステップ系やジャンプ系のメニューを多めに取り入れていて、それが踏む力の向上につながっていると思います。この踏む力は、スポーツ全般に必要とされるものです。ですので、アマチュアにもおすすめできるトレーニングメニューと言えます。青木選手と同様、飛距離アップは大いに期待できると思います」
青木が実践する「踏む力」トレーニング
「踏み込みや踏ん張りが動きの中で鍛えられる」
「ラケット打ちやバット打ちで踏む力は十分に鍛えられますが、青木選手にはステップ打ちをよくやらせています。ショットでも素振りでもできるのでアマチュアにもおすすめです」(斎藤)

踏む力を鍛える

動きの中で覚えるのが重要

素振りでもできる
斎藤トレーナーおすすめ「「踏む力」を高めるメニュー」
踏む力アップ①棒を肩で担ぎスクワット
「スクワットは踏む力を強化する最も基本的なメニュー。長い棒を肩に担ぐと背筋が伸びた姿勢になり、股関節を使ったスクワットがしやすくなります」

踏む力アップ②重いモノを上下に振る
「メディシンボールを使っていますが、なければ2ℓのペットボトルで代用できます。重いモノを上下に振ったり、前方や真上に投げてもいいです」

踏む力アップ重いモノを斜めに振る
「重いモノを斜めに振るのもいいトレーニングです。上から下、下から上、両方行います。足が動くなど、バランスが崩れないことを心掛けましょう」

女子ツアーは戦国時代一年一年が勝負
30歳を過ぎてなお成長し続ける青木瀬令奈。9季連続でシード権を獲得しているが、国内女子ツアーは20代前半の若手選手の活躍がすさまじい。シードを守っていくことは、容易なことではないはずだ。青木はシード権について、どう考えているのだろうか?
「必死ですよ。いつも今年が最後かもって思ってプレーしています。毎年15人前後のシード選手が入れ替わっている状況です。単純に考えれば、3年で総入れ替えになるようなものです。女子ツアーはまさに戦国時代ですから一年一年が勝負ですね」

目標はファンをリコーカップに連れていくこと。来年は優勝して宮崎に行きたい!(青木)
最後に2025年に向けた目標とオフトレについて聞いた。
「毎年掲げている目標があって、応援してくれるファンをリコーカップ(最終戦・宮崎CC)に連れて行くことです。来季は、優勝してリコーカップに出場したいです。みんなに元気を届けたいですね。1月は国内でトーナメントコースを回ります。今年は日本女子プロが大洗GCですし、茨城GC(サロンパスカップ)も毎年回っています。2月からハワイ合宿や契約するリシャール・ミルの合宿を予定しています」
斎藤トレーナーとは相性抜群
「感覚は変わらないのに、踏む強さとか軸の安定が向上しているのがすごい」
「同じ動作を繰り返すトレーニングは多いですが、斎藤さんはメニューが豊富。飽きないし、長く感じないので90分でもあっという間です。感覚も変わらないので選手にとっては助かります(」青木)

トレーニングはあっという間です!
2025年も青木の自己記録更新が見られそうだ。
PHOTO/Akira Kato、Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa
※週刊ゴルフダイジェスト1月7日・14日合併号より一部抜粋