上田桃子はトータル1オーバーの6位でフィニッシュ
全英女子オープン出場10度目という上田桃子選手は、2日目までの強風の難コンディションの中、75・75と耐え8オーバーの52位タイで予選を通過。「(風でドライバーショットが)50ヤード流されるのが40ヤードになった」という3日目に68(3アンダー)と驚異的な追い上げを見せ、通算5オーバー19位タイにジャンプアップ。
そしてそれまでとはうって変わった穏やかな天候となった最終日を67でプレーし、トータル1オーバー6位でフィニッシュ。自身にとって2008年(サニングデールGC)の7位タイを上回る、キャリアハイの6位でフィニッシュしました。
強風の吹き荒れた3日目を3アンダーでプレーした対応力の高さ、そした最終日の集中力あふれるプレーには感動すら覚えました。過酷な状況で戦う姿に勇気や元気をもらった人も多いのではないでしょうか。
さて、3日目終了後の会見で、私は彼女に風に対する対応について、質問しました。
「この2日間は風に乗せて打っていたが、今日は50ヤードの曲がり幅だったものをフェードっぽく打って30ヤードくらいにおさえようとしました。試合の中で成長できる球を打ててるなと思います」(上田)
右からの風が吹いている状況でフェアウェイにボールを落とそうと思ったとき、フェアフェイ右端からさらに30ヤードも外した右のブッシュを向いて打たなければならないような状況で、それまで風に乗せるように打っていたのを、風とケンカさせるような球筋に3日目から変え、それが上手く機能したということ。この対応力はすごい。そして、ボールをコントロールする高い技術も見せてくれました。
最終日には、集中豪雨の被害にあった故郷・熊本を思い、ひとつでも上位でフィニッシュしようという気持ちの伝わるプレーを見せてくれました。4日間を戦い抜いた気力・体力も含めて、国内ツアーで戦う選手、また、プロテスト通過を目指す選手たちにも大きな力を与えるプレーだったのではないでしょうか。昨年の渋野日向子選手に続き、日本女子ここにありを示してくれました。
また、今回の好プレーには、キャディを務めた辻村明志コーチの役割も非常に大きかったと思います。マネジメントやグリーン上のライン読みといったキャディとしての役割にプラスして、コーチとしてもプレーを支えてくれたと上田選手は会見で話していました。
辻村コーチは、「置きにいくようなショットではなく今後につながるショットをしよう、逃げずにグッドショットをしよう」とひたすら声をかけ続けてくれたといいます。2人の力を存分に発揮した1週間だったようです。上田桃子選手の国内ツアーでの姿を楽しみにしたいと思います。
野村敏京は22位タイ、畑岡奈紗は64位タイでフィニッシュ
さて、日本勢は上田選手のほか、野村敏京選手、畑岡奈紗選手が予選を通過していました。6オーバー22位タイで終えた野村選手は、3日目の9番ホールのダブルボギーから流れが悪くなったと話しました。
「昨日の9番からテンションが下がってしまった。でも、これだけ風が吹いた中でのプレーはやったことがなかった。その中でもいいスコアを出せたこと、いいショットを打てたことは楽しかった」(野村)
強風に対応し、予選の2日間を2オーバー9位タイで通過した対応力の高さは見事でした。この後米ツアーに戻るという野村選手の活躍を期待しましょう。
一方の畑岡選手は、「今まで結果を残せていなかった欧州での大会で最低限の目標である予選通過をしたことは評価できる」と話しましたが、通算14オーバー、64位タイという最終結果には悔しさをにじませていました。
「4日間を通してアンダーパーが出なかった、14オーバーという結果は悔しい。これから残りのシーズンで今週学んだボールの打ち分けをできればいいと思います」(畑岡)
野村選手や、惜しくも予選落ちを喫した河本結選手と同じく、このあと米ツアーに戻って戦いを続ける畑岡選手ですが、秋になると調子が良くなるという本人の弁もありますし、今後の活躍を楽しみにしています。
最後に優勝したソフィア・ポポフですが27歳のドイツ人で世界ランク304位から米女子ツアー初優勝をメジャーで飾りました。もしかしたら無名だった昨年の渋野日向子の優勝は世界中のプレーヤーに勇気を与えたのかもしれませんし、ポポフもそのうちの一人だったのかもしれません。最後まで力強く戦った姿は多くの人々に元気を与えたことでしょう。
渋野日向子、畑岡奈紗、河本結、野村敏京は米ツアーに、上田桃子と勝みなみ、稲見萌寧は国内ツアーと、全英に参戦した選手たちはそれぞれツアーでの戦いが待っています。過酷なコンディションを戦った彼女たちの今後のゴルフに注目してみたいと思います。