平均スコア85の腕前の元千葉ロッテマリーンズの里崎智也が、さらに上の段階へのスキルアップを目指して、USLPGAティーチング会員の小澤美奈瀬の指導を受ける。今回はピンを刺しに行く時や強風の中で効果を発揮する、アイアンのライン出しショットに挑戦する。
右手首の角度をキープし、腕の力に頼らず体幹だけで振る
小澤美奈瀬(以下小澤):里崎さん、ラウンドでライン出しは打ったりしますか。
里崎智也(以下里崎):あまりやらないですね。やらないというか、引き出しがない感じです。どういう状況でやるのかも良く分からないので。
小澤:そもそもライン出しとは弾道の高さを抑えた方向性重視のショットとのことです。例えば、風が強いときにフルショットでクラブを振り切ると球が曲がりやすかったり、アゲンストでスピン量が多いと球が吹き上がって距離をロスしたりしますよね。そういう状況で活躍しますよ。
里崎:なるほど。
小澤:風がそんなにない日でも、180ヤードをギリギリの番手でフルショットでしっかり振ったときに引っかかったりするミスもよく出たりします。そういうミスをライン出しで防ぐことができるんです。
里崎:今言われたの、まさしく自分がよくやるミスです(笑)。ライン出し、できるようになりたいですね!
小澤:では7番アイアンで挑戦してみましょうか。まずライン出しを打つ際に重要なのが、構えたときの右手首の角度をキープさせ、腕の力に頼らず体幹だけで振ることです。
里崎:手首はリリースしないんですね。
小澤:リリースすることで高さも出やすくなってしまいますし、フェースの戻り方にタイミングのズレが生じ、ボールがつかまり過ぎて左に行ったり、逆につかまらずに右に行くということが起こります。ライン出しは方向性重視のショットですから、球が右に左にブレてはもったいないですよね。腕のローテーションを入れずに右手首をキープすることを意識すれば、インパクトゾーンでのフェースの挙動を抑える打ち方ができるわけです。
まずは「ひざからひざ」の振り幅で、手首をリリースしない動きを身につけていく
小澤:では、右手首のキープを意識して、まずは「ひざからひざの振り幅」でゆっくり振ってみましょうか。
――言われた通り打つ里崎。結果は、真っすぐな弾道で29ヤード。
小澤:では次に、同じひざからひざの振り幅で少しスウィングのスピードを上げて振ってみてください。
――2打目は真っすぐに60ヤード飛ぶ。
小澤:まっすぐ飛ばせていますね。では、少し振り幅を広げて「腰から腰」でゆっくり振ってみましょう。
――その次は腰から腰の振り幅でスウィングのスピードを上げていき、それも真っすぐ飛ばせたら今度は「胸から胸の振り幅」でゆっくり振り……と、少しずつ振り幅とスウィングスピードを上げながら打っていく。最終的には、胸から胸の振り幅で169ヤードのライン出しショットに成功した。
里崎:169ヤード! 7番アイアンで平均170ヤードですから、いつものショットと飛距離も全然変わってないですね。
小澤:しかも、真っすぐで打ち出しも低くなっています!
里崎:今まで僕がライン出しだと思ってたショットは、方向性は悪くないけれど球が弱かったと思うんですよ。でも今日、教えてもらった打ち方だと方向性も良くて風の影響を受けない強い球が打てていますね。
小澤:今里崎さんに実践していただいたように、ひざからひざの小さな振り幅から次第に大きな振り幅へと段階を踏んでいくことでクラブの軌道を安定させて方向性を良くしつつ、同じ振り幅の範囲内でもスウィングのスピードを上げていくことで距離も出る打ち方が身に付いてくるわけです。
里崎:思えば今までひざからひざの振り幅のショットをこんな真剣に練習したこと、なかったですね。
小澤:でも実は、ひざからひざ、腰から腰の範囲をクラブがいかに安定して通過するかってすごく大事なんです。その範囲での安定感によってプロの獲得賞金に大きな影響が出ることから「ビジネスゾーン」とも呼ばれていますね。先ほどのようにまずは短い振り幅で練習し、ビジネスゾーンでのクラブの動きを安定させていくと、曲がらない球が安定して打てるようになってくるんです。
里崎:なるほど。
小澤:里崎さんは右手首のキープもしっかりできていたので、ボールの先のターフを触る量もショットを打つごとに増えていってましたよね。これは長いインパクトゾーンが作れている証拠。インパクトゾーンが長ければ真っすぐが打てますよ。
小澤:あと、小さい振り幅でスウィングすると自分のミスが出やすいんです。里崎さんの場合だと、ちょっと体が前に動いたなとか、肩がフラットになったなということが、分かりやすく出ると思うので、ビジネスゾーンで打つ練習は日々のスウィングチェックをするのにも良いかなと思います。
里崎:分かりました。実践してみます!
取材協力/PGMゴルフアカデミー銀座