世界ランク1位のダスティン・ジョンソンがまさに王者のゴルフで他を圧倒。タイガー・ウッズとジョーダン・スピースが持っていた大会最少ストローク記録(18アンダー)を塗り替え通算20アンダーで念願のグリーンジャケットに袖を通した。

4打のリードで迎えた最終日。4番、5番で連続ボギーを叩いたジョンソンはイム・ソンジェに1打差と迫られた。しかし続く6番パー3。8アイアンで放ったティショットはピンそば2メートルにぴたり。これを冷静に沈めた彼はそこからまったく危なげない内容で最後は後続に5打差をつけメジャー2勝目を手中に収めた。

5打差はタイガーが97年に記録した12打差に次ぐ2番目のストローク差V。72ホールで4ボギーも大会最少記録だ。

画像: 2020年のマスターズを制したダスティン・ジョンソン(写真はGetty Images)

2020年のマスターズを制したダスティン・ジョンソン(写真はGetty Images)

大会前注目を集めたのは連覇を狙ったタイガーと400ヤードドライブが売りのブライソン・デシャンボー。対するジョンソンはマスターズ直前にコロナに感染し自主隔離。「11日間のホテル生活で動くことといえばシャワーを浴びることくらいだった」とクラブを握れない日々が続いた。

だが蓋を開けてみれば初日から飛んでフェアウェイを外さない抜群の安定感で、飛ぶが曲がるデシャンボーとは対照的な王道のゴルフを突き進んだ。ノーボギーの7アンダー65をマークした3日目はフェアウェイキープ率14の14で100パーセント、パーオン率も18ホール中16ホール。

大会前に「オーガスタをパー67のコースにしてやる」と豪語したデシャンボー(70-74-69-73)は1日も“アンダーパー”で回れなかった計算になるが「パーはあくまでも72」と冷静に語ったジョンソンは淡々と2つのイーグルと20個のバーディを積み重ねた。

とはいえこれまでツアー24勝を挙げながらジョンソンのメジャー優勝はこれが2つ目。マスターズ前は2016年の全米オープンが唯一の勝利で、以前ブルックス・ケプカが「自分はメジャーでチャンスがあれば絶対にそれを掴む。なぜDJ(ジョンソン)が(それをせず)1つしか勝っていないのかわからない」とまでいわれていた。

確かにジョンソンはメジャー獲りのチャンスをことごとく逃してきた。トップから最終日をスタートしたメジャーはこれが5度目。だが2010年の全米オープンでは最終日に82を叩き、やはり2010年の全米プロではバンカー扱いのウェイストエリアでクラブをソールし2ペナでV逸。2015年の全米オープンでは4.5メートルから3パットしてタイトルを逃している。

2018年の全米オープンでも、さらには今年行われた全米プロでも優勝争いを演じながらケプカとコリン・モリカワにメジャーの勲章をさらわれた。

190センチを超す大男なのに肝心なときに勝ちきれず“ノミの心臓”と揶揄されたこともある。だがこうして記録的な大勝を「子供の頃からの憧れていた」マスターズで飾ったことで今後はさらなるメジャー制覇が期待できそうだ。

今回もキャリアグランドスラムを逃したがトップ5に入ったロリー・マキロイはいう。「DJにかかるとゴルフがとてもシンプルに見える。そこが彼の凄いところ」。複雑で難解なゴルフをシンプルでやさしく見せる。超一流の証だろう。

※2020年11月16日17時57分 文章を一部修正いたしました

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