今年からピンとクラブ契約を結ぶ金谷拓実のエースドライバーと言えば、「G410プラス」。昨年9月に発売された最新の「G425」シリーズではなく1世代前、2019年3月に発売されたモデルを使用し続けている。
金谷とピンとの付き合いは古く、中学生時代に遡る。地元・広島で開催されていたピンの試打会に毎月参加するうち、「PINGフィッターのアドバイスをいただきながら、ドライバー・アイアンを次々に購入し、気がついたらPING ユーザーになっていました」(金谷)という。
金谷は、ピンのクラブを「とにかくやさしい。アマチュアゴルファーからツアープロまで一貫して同じモデルが使える」と評価する。使用するG410プラスは渋野日向子が2019年に全英女子オープンを勝ったときに使用していたモデルでもあり、アマチュアにも大人気となったクラブだ。
そんなG410プラスに組み合わせているシャフト、USTマミヤ「ジ・アッタス」も2世代前のモデル。シャフトはヘッドと異なり、新モデルの登場に“バリエーションの増加”という側面があるため、古いモデルを使うプロは多いが、金谷はこのG410プラスとジ・アッタスをどのような意図で組み合わせているのだろうか?
「自身のプレースタイルにマッチするかどうかというところにあると思います」と、ピンのツアー担当、穂積真嗣氏は話す。
「ドライバーに関しては、顔の見え方、座りなどクラブに対するこだわりはもちろんありますが、自分のプレースタイルにマッチした飛距離を求めながらもコントロール性を重視してG410プラスを選んでいます」(ピンツアー担当、穂積真嗣氏)
ポイントはこの「コントロール性」という部分だ。プロゴルファー・中村修は金谷が使うドライバーのヘッドとシャフトについてこう解説する。
「ジ・アッタスは球が上げやすく弾道のコントロールがしやすいシャフトだと思います。そして、G410プラスは、最近の慣性モーメントの大きいドライバーの中でも比較的ドローやフェードを打ち分けしやすいモデルです。それが金谷選手のプレースタイルにマッチしたのでしょう」(プロゴルファー・中村修)
ちなみに金谷がドライバーに入れているジ・アッタスのスペックは70グラム台のSシャフト。重量帯こそハードだが、フレックスに関してはSを選択。ツアープロのヘッドスピードを鑑みれば比較的柔らかめと言えるが、この選択を「金谷選手ならでは」というのはシャフトメーカー・USTマミヤのツアー担当、石川峻氏。
「スウィングのテンポや切り返しのタイミングを考えて、しなりを感じて打ち急がずにゆっくり切り返したいから。少し硬めのフレックスを選ぶ選手が多い中で、優勝争いの場面でもテンポが変わらずに打てる金谷選手ならではの選択だと思います」(石川)
常に同じテンポやタイミングで振ることができ、ボールをコントロールしやすい。そういった、自分のプレースタイルにマッチしたクラブを選んでいることがわかる。これは、ピンとの“長い付き合い”があるからできることなのかもしれない。自分をクラブに合わせるのではなく、クラブを自分に合わせるということだ。
「(今後の)海外遠征の経験でプレースタイルも進化してくると思いますので、このオフには様々なクラブをテストしてセッティングを決めることになります」と穂積氏。「使用するピンの新しいヘッドをテストするタイミングで、シャフトも新しいものをテストしてもらえると思います」と石川氏も期待する。
2021年初戦のPGAツアー「ソニーオープン・イン・ハワイ」では1打足らずに予選落ちを喫した金谷だが、これからプレーもギアもさらに進化させ、もっと強くなった姿を見せてくれるに違いない。