飛びを取るか、安定性を取るか。ゴルフライターSはどっちを選んだ?
こんにちは、ゴルフライターのSです。ゴルフ専門誌でフリーランスのライターをしている私が、自腹を切ってドライバーを買うべく、フィッティングを受けた様子をレポート。
前回でまずはシャフトフィッティングをして、いちばん気持ちよく振れるシャフトを選びましたが、今回は、ついに問題の核心であるヘッド選びに突入します。
前回に引き続き、フィッティングは東京・代官山の「プレミアムゴルフスタジオ」の吉田智フィッターにお願いしています。
前回シャフトフィッティングを受けて、ヘッドより先にシャフトをグラファイトデザインの「ツアーAD XC-6(S)」に決めました。
プレミアムゴルフスタジオさんでは、まずはヘッドよりもシャフト選びを優先。基本的にはヘッドに関わらずシャフトとスウィングの相性があり、気持ちよく振れるシャフトでヘッドを選ぶべきだという考え方です。
実際、普段から「シャフトの細かい違いはほとんどわからない」と思っている私でも、個性的なシャフトを次々に打ち比べてみると、振り心地の違いを感じることができ、「振りやすいシャフトでヘッドを選ぶ」という発想の正しさは実感できます。
まずはキャロウェイのエピック3モデルを打ってみた
さて、ヘッド選びに関しては、テーラーメイドの「SIM2」「SIM2マックス」「SIM2マックスD」、そしてキャロウェイの「エピックスピード」「エピックマックス」「エピックマックスLS」の計6モデルが候補。本当はほかにも気になるヘッドはありましたが、あまり選択肢が多すぎても迷宮に入り込んでしまう可能性が高いので、今年に入ってからの取材でとくに気になったこの2シリーズに絞りました。
「Sさんはスピン量が多いですから、まずはここから行きましょうか」という吉田さんの提案により、低スピン性能に定評のある「エピックマックスLS」からテストしました。ロフトは9度です。
実際私は持ち球もフェードですし、不調時はとくに入射角が鋭角になってスピンが多いフケ球になりがち。そこを見越して、浅重心でバックスピンが少ない「LS」を最初に選びました。
ちなみにヘッド試打の場合、素振りナシで打ったシャフト試打と違い、しっかりと素振りをしてヘッドのフィーリングを確かめてから打つようにとのこと。同じシャフトでも、ヘッドによって振り心地が変わることを確認してから実際に打つことが大事なんだとか。
この「LS」は、従来モデルでいうと「サブゼロ」のポジションにあるハードヒッター向けだと思っていたので、ちょっとキツいんじゃないかと予想していましたが、打ってみると全然そんなことはありません。ロフト9度ですが打ち出し角がしっかり出て、低スピンのいい球が出ています。そして噂どおりボール初速がかなり高く、しかも引っかけが出ない安心感がとても魅力的でした。
これをベンチマークに、次はスタンダードモデルの「エピックスピード」を打ってみます。
こちらを構えて初めて気づいたのですが、この「スピード」は全体的に丸っこいいわゆる「キャロウェイ顔」。先に打った「LS」は、「スピード」よりも少し大きく見えるものの、ヒール側がシュッとしていてフェースも真っすぐで、キャロウェイっぽくない顔だったんです。
個人的には「LS」のほうが顔は好みですが、私自身は「いい球さえ出れば顔は慣れる」と思っているので、あまり重視しません。
さてこの「スピード」ですが、実際に打ってみるとヘッドの動きが機敏で、「LS」よりシャープな感じ。初速もスピン性能も「LS」と決定的な差はなく甲乙つけがたいのですが、弾道はなぜか「LS」のほうが安定します。
吉田さんは「ヘッドの重心位置のせいかもしれません。『LS』のほうが『スピード』よりも浅めですが、Sさんはそこに振りやすさを感じているのかもしれませんね」とのこと。
最後に「エピックマックス」を打とうと思ったのですが、「ヘッドのスピン性能やつかまりの感じを考えると、多分『LS』か『スピード』のほうが合うと思いますので、打たなくてもいいですよ」と吉田さん。打たなくてもわかっちゃうんですね。
念のため数発打ってみましたが、スピンも多めで球もつかまりすぎており、吉田さんの言うとおり。「マックス」の「やさしさ」は、私にとっての「やさしさ」ではなかったようです。
SIM2も打ってみた
ここでヘッドをテーラーメイド「SIM2」シリーズにチェンジ。
まずは「SIM2」の9度を打ってみます。こちらは、現在使っている「M3」から連綿と続くテーラーメイドらしい顔が心地よく、打感もソフトで非常に好み。ボール初速は、「エピックマックスLS」ほどではないですが十分に出ているし、スピンも少ない。第一印象は最高です。
しかし数発打っていると、ミスヒットしても曲がらない安定感はすごいのですが、球のつかまり方がちょっとしっくり来ず、少し球が右に滑ります。
そこで次に「SIM2マックス」。こちらもロフトは9度です。
「SIM2」よりも気持ちよくつかまって、直進性の高い球が出ます。なんとなく打感もこちらの方がフェースに食いつく感じがして、より好みです。構えた顔は「SIM2」よりも少しつかまりそうな雰囲気はあるものの、印象が似ていて違和感ゼロ。「エピック」シリーズほどのモデル別の顔の差はありません。
それにしても芯が広いのには驚きです。実は「SIM2」と「SIM2マックス」は、「エピックマックスLS」と比べると芯を喰う確率がちょっと低いのですが、それを感じさせないほど弾道は安定しています。このミスしても曲がらない感じ、曲がらなさというメリットだけでなく、打点がぼやけるデメリットもあるのではないかと心配になるほどです。
なお、つかまり系の「SIM2マックスD」は、「エピックマックス」同様吉田さんが「打たなくていい」とのことだったので、ちょっと球数が増えて疲れてきたこともあり、素直に従いました。
ここまでの試打の結果から、キャロウェイなら「エピックマックスLS」、テーラーメイドなら「SIM2マックス」が第一候補。低スピンで左に行かない安心感のある「LS」か、打感と顔がよく安定性が高い「SIM2マックス」か。本当に忖度抜きで甲乙つけがたく、世間の評判が割れるのも納得です。
直感的には、顔と打感が好みな「SIM2マックス」を選びたくなる気持ちが強かったのですが、私としてはここで自分の「好み」に引っぱられすぎないようにしたいという自制心が働きます。
というのも、仕事柄私は、私たちアマチュアの「感性」なんてものは、多くの場合「思い込み」の域を出ないということを痛感しているからです。プロのような重厚な経験や技術の土台を持たない我々の感性は、実は技術に対して先行しすぎた知識に引っぱられて思い込んでいるだけというケースは少なくないんです。
とくに「クラブ好き」を自称する人こそ、試打する際にそういった先入観や頭でっかちの知識に引っぱられすぎない注意が必要だと私は思っています。
最終的に私はキャロウェイの「エピックマックスLS」を選びました。その理由は、「振り心地」です。
今回、ヘッドの試打は、すべて先に決定した「ツアーAD XC-6」のシャフトで行っていますが、同じシャフトでもヘッドが変わるとクラブ全体の振り心地が微妙に違ってくるんです。その振り心地は、「SIM2マックス」よりも「LS」のほうが若干気持ちいい。とくにヘッド後方のペリメーターウェイトを少しだけヒール寄りにしたときの振り心地が、今回試打した全ヘッド中で最高でした。
これは「感性」ではなく「結果」として現れました。普通にスウィングして芯を喰う確率が、「LS」のほうが高かったんです。弾道を見ると、「SIM2マックス」の直進性能がその差を埋めてしまうので大きな差が出ないのですが、やはりどちらが気持ちよくゴルフができるかといえば、芯を喰いやすいクラブでしょう。
この差は、吉田さん曰く「ヘッドの重心位置とスウィングの相性だろう」とのことで、性能の優劣ではありません。しかも同じシャフトでさまざまなヘッドを打ち比べてみて初めてわかった微少な差で、比較しなければ私レベルではわからなかったと思います。
しかし言い換えれば、こうやって入念にフィッティングを受けて打ち比べることで、アベレージゴルファーでもこういった微少な差を感じることができたということでもあります。
ここまで入念に試打をしてシャフト、ヘッドを選べれば、自信を持って「自分に合っている」と言えます。さすがカリスマフィッター。本当にいい経験でした。
ということで早速、キャロウェイ「エピックマックスLS」の9度に、グラファイトデザイン「ツアーAD XC-6」のSフレックスを装着したドライバーを自腹で注文。人気ヘッドということで納期が4月半ばになってしまうそうですが、それまで楽しみに待つことにします。
みなさんもぜひ一度、入念なフィッティングを受けて本気のクラブ選びをしてみてください。ゴルフの楽しみがさらに大きく広がるはずです!
取材協力/プレミアムゴルフスタジオ