フェース面の手入れは良いアプローチに必須
鈴木:伊澤さんにアプローチを教わるのを楽しみにして来たんです。どうやったらあんなスピンが掛けられるのかと思って。ぜひ、僕らアマチュアにもやさしくできるように教えてください(笑)。
伊澤:わかりました、お任せください。まあそこまでの激スピンでなくても、こんな感じで打ったらスピンが入るよという部分をお伝えできればなと思います。
――さっそくレッスンを始めようと、鈴木がウェッジを取り出すと、そのフェース面に砂や泥など以前のラウンドの名残がこびり付いているのを発見した伊澤。10分ほど時間をかけ、ソフトワイヤーブラシでフェース面を綺麗にクリーンアップして、一言。
伊澤:鈴木さん。ラウンド前には、クラブのフェース面を綺麗にしておくことが大事ですよ。
鈴木:いや、お恥ずかしい。
伊澤:フェース面を磨くことが、鈴木さんのアプローチの腕を磨くことに繋がりますよ。クラブを悪い状態のまま使っていると、良いショットを打っても悪い結果になることがあるんです。そうすると自分を責めるじゃないですか。それで試行錯誤しているうちにアプローチに自信を無くしてしまうようになる。これはやらないほうがいいですよね。
鈴木:迷路にドンドン嵌っていっちゃうわけですよね。
伊澤:ソレを避けるためにもまずフェースをキレイにして、それでも駄目だった時に、打ち方です(笑)。
鈴木:いやぁ。今日は技術を学ぶために来たんだけど、まずは道具を磨くところからやらないと技術は磨けないんだなということが、分かりました。
スピンの掛かり具合はライによって変わるのでしっかり見極めよう
伊澤:フェース面をキレイにしたところで、実際に打つときのポイントについて触れていきますね。まずスピン系のアプローチを打つうえで、大事なことがライの見極めです。ライによっては僕が打ってもスピンが掛からないという場合もありますから。
鈴木:あ~、それ知りたかったんですよ、このライから打つとどうなるのか、どう打ったら良いのか、分からないんですよね。
伊澤:まず、ボールとフェース面の間にどの程度、芝が噛んでくるかということが大事なポイントになります。例えば、ボールが芝の中に少し沈んでいた場合は、手前の芝がフェースとの間に絡んできますから、基本的にギュッ! と止まるようなスピンは掛からないです。そうすると確実に寄せるのは、スピンを掛けない打ち方になるわけです。
鈴木:そういうライで調子に乗ってスピンを掛けようとしても、そもそも掛からないということなんですね。
伊澤:そうです。だから、良い打ち方をしたのにスピンが掛からなくて、結果的に寄らなかったのでミスショットかなと思いがちなんですが、そうではなく、この状況判断ができていなかったことによるミスだったということなんですよ。
鈴木:なるほど。
伊澤:同じラフでも、球がやや浮き気味で芝があまり絡まないライだと、先ほどよりかは止まりやすくなります。ただ、これでもスピンは入りづらいです。
鈴木:そうなんですね。
伊澤:これが、インパクトでボールとフェース面の間に芝が絡まないライになると、良くスピンは掛かります。大きく分けて、この【1】スピンが掛からない、【2】スピンが掛かりづらい、【3】スピンが掛かる。この3つのライの見極めを打つ前にやっておくことが大事になります。
鈴木:わかりました。
伊澤:では実戦です。鈴木さんのいつもの打ち方で、グリーン周りのスピンが掛かりづらい【2】のライから打ってみましょうか。
――ボールがやや浮き気味のライから鈴木がピッチ&ランで打つと、ピンをややオーバーする。
鈴木:あ~、思ったより行っちゃいましたけど。
伊澤:いや、打ち方的には問題ないですね。
鈴木:ほんとですか。
伊澤:もう一球打ってみましょうか。
――同じライから打つと、今度はスピンが入りピン手前でピタリと止まる。
鈴木:上手くでき過ぎてる! いつもは打てないようなアプローチが、今日はしっかり打てましたね。
伊澤:スピンが掛かりづらいライということをしっかり把握したうえで打てたのもあるでしょうが、フェース磨きの効果も出ていると思いますよ。
鈴木:いや、ビックリしました。フェースにボールが乗っている感じがしました。これマジで、フェースは絶対に磨いたほうがいいです。実はサッカー選手の現役の時に、自分の使う道具は自分で綺麗にしろと、自分でスパイクを磨くように言われていたんですよ。やっぱり、クラブも磨かないとダメですね。
伊澤:その通りです。で、ちょっと気になったのですが、鈴木さん。グリーン周りからのアプローチで56度と60度の2本のウェッジを持ってきましたよね。でも使ったのは56度。普段60度はあまりグリーン周りで使われないですか?
鈴木:ボールの下を抜けちゃったりするので、なんか距離感が合わないというか。今の時代はウエッジは3本だ! みたいな感じがあるので、それで時代に乗りたいなと思って60度を入れてはいるんですけど、バンカーの時とか、どうしても上げないといけないときだけ使うという感じですね。
伊澤:そうなんですね。じゃあ先ほどと同じ場所から、今度は60度で打ってみましょうか。
鈴木:あ、はい。
――56度で良い感じだった鈴木さん、促されて60度で同じようにピッチ&ランで打ってみると、打球は低めに出てからさらにスピンが掛かり、ピンの手前でピタッと止まった。
鈴木:あれ、上手くいった! やっぱり、磨くと違いますね(笑)。
伊澤:そう! フェースを磨くと、今まで60度だと下を潜って飛ばなくて距離感が出なかったのが、打球が前に行ってくれて、56度で打った時よりもスピンが入ったのが分かりましたか?
鈴木:たしかに入ってました!
伊澤:レッスン前に鈴木さんは「プロのアプローチって、低く出してスピンで止まるんだよね」っておっしゃっていましたけど、今まさに鈴木さんがそんな球を打ちましたよね。
鈴木:フェース面を磨くことがプロのようなショットを打つための第一歩ってことですか。
伊澤:その通りです!
鈴木:でもね、僕いつもポケットに砂消しゴムを入れてフェース面は磨いていたんですよ。でも先ほど伊澤さんにフェースを手入れしていただいたときは、ソフトスチールブラシを使っていましたよね。
伊澤:そうですね。
鈴木:砂消しゴムで磨いたときより、明らかにスピンの掛かり具合が違うように感じるんですよね。どちらも手入れはしているのに、何でスピンに違いが出てくるんですかね?
伊澤:実は、僕も以前は消しゴムを使っていました。でもそれだと結構力を入れないと汚れも取れないし、接地面が広くないので取り残しも出てきます。それで何か良いのないかなと思って探していたところ、ソフトスチールブラシに行きついたんです。
鈴木:なるほど! 汚れの取れやすさが違ったのか。
伊澤:ですね。フェース面の手入れの重要性と、ライの見極めを覚えたことで鈴木さんのアプローチの質は大分上がっていて、ショットを見る限り通常のアプローチはしっかり打てていると思います。ただ、まだスピンが掛かりづらい、もしくはミスになる可能性がある要素がありましたので、次回からは伊澤流のアプローチ法を教えていきたいと思います。
鈴木:楽しみです! よろしくお願いします!
※連続レッスン後編は2021年3月28日20時30分公開予定
取材協力/葉山国際カンツリークラブ