ジョーダン・スピースはもともとキャリアを通じてプロV1xユーザー。プロV1xは2年に1度、奇数年にリニューアルされるが、スピースは長くその2017年モデルを使用してきた。
それが、メジャー直前である先週の「バイロン・ネルソン」で2021年モデルにチェンジ。今季はバレロ・テキサスオープンで復活優勝を果たし、上り調子で久しぶりのメジャー4勝目を目指そうというなか、突然ボールを変えたのはなぜなのか?
タイトリストの米国公式ツイッターに投稿された動画のなかで、スピースはこう語っている。
「2021年のプロV1xは、グリーン周りでよりスピンがかかります。そしてよりソフトです。ロングクラブでは打ち出しがより高くなりましたが、スピンが増えてはいません。ボールスピードと打ち出し角だけが増えたのです」(スピース)
スピースは、打ち出し角が増えたことを「ウインドウが高くなった」と表現。トップ選手は、自分の打った弾道がイメージ通りの高さを通過することを「ウインドウ」と表現するが、新しいプロV1xにチェンジすることにより、それがより高い位置へと移動したようだ。
一方で、「7番アイアンから下の番手のフルショットでは、大きくな違いはありません」とも語っている。ロング番手ではより高打ち出し。グリーン周りではより多くのスピンがかかったことがチェンジの決め手だったようだ。
プロV1xボールを自身の使用球として長く愛用するプロゴルファー・中村修は、スピースのボールチェンジをこう解説する。
「タイトリストのプロV1xは、モデルチェンジごとに少しずつ進化しています。そして、モデルごとにわずかですが性格が異なっており、2021年モデルのプロV1xはグリーン周りでのスピン量にとくに優れている印象です。トップ選手であればスピンを抑えるのは容易にできますが、スピンを自分でかけるのにはリスクが伴います。スピースほどの名手であっても、つねにより多いスピンをボールに求めていることがよくわかります」
パーオンを逃した場合にパーかそれよりいいスコアでホールアウトすることを「スクランブル」というが、スピースはPGAツアーの指標で「20-30ヤードのスクランブル率」が全体の5位。グリーン周りのショットのスコアへの貢献度では全体の14位につけている。
小技の名手がシーズン途中でさらに多くのスピンを手に入れたというカタチとなったボール変更。感覚が変わったりしないのか? とも心配になるが、スピースはチェンジ初週の「バイロン・ネルソン」の初日に心配ご無用とばかりに9アンダーのビッグスコアを叩き出し、9位タイの好成績で大会を終えている。
全米プロではスピースのスピンを操るウェッジさばきにも注目だ!