昨年9月に変則開催された全米オープンで勝ったデシャンボーに次いで、単独2位に入ったのがマシュー・ウルフだ。3日目までトップに立ちながら最終日「75」と崩れ勝ちを譲ったがコリン・モリカワ、ビクター・ホブランと並ぶ“クラス19”(2019年に大学を卒業あるいは中退しプロデビューした選手たちの総称)の最年少はプロ転向後わずか4試合で3M選手権に優勝し一躍時の人となった。
リッキー・ファウラーの出身校オクラホマ州立大学を2年で中退したばかり。当時20歳2カ月23日での勝利は、ショットを打つ前に腰をクイッとフォワードプレスする独特なスウィングも相まって注目を集めた。
全米オープンで優勝争いした次の試合(シュライナーズホスピタル)でもプレーオフに進出しマーティン・レアードに敗れ2位に終わったものの、その才能を如何なく発揮。だが絶好調だった昨秋から暗い影が密かに忍び寄っていたようだ。
「自分で自分にプレッシャーをかけすぎたあまり、精神的におかしくなってしまった」と今年に入ってから低迷が続き今回の全米オープンの舞台トリーパインズで行われたファーマーズインシュランスで初日78を叩き途中棄権。WGC-ワークデイ選手権では予選落ちのない試合にも関わらず初日83を打ったあと自主的に棄権。マスターズではスコアの過少申告で失格となり、5月の頭から長期休養に入った。
「いつだっていいプレーがしたい。ファンに喜んでもらいたい。テレビを見ている何万、何千万という人々をドキドキさせるようなゴルフがしたい。その気持ちが強くなりすぎて多少のことでは満足できなくなってしまった。いつも不満が渦巻いて全然ハッピーじゃなくなってしまった。辛い決断だったけれどこのままではメンタルがやられてしまうと思ってツアーから少し離れることにしたんだ」
そして8週間が過ぎ復帰戦に選んだのが今週の全米オープン。「今のテーマは、結果はどうあれ置かれた状況を楽しむこと。この舞台に立てる自分は本当にラッキーで幸せだということを噛みしめたい」
本人は「時期尚早かもしれない」と悩んだようだが迎えた大会初日、ウルフは躍動感溢れるプレーで8つのバーディを奪った。その代わりボギーも3個、ダブルボギー2つと「目が回るローラーコースターのようなラウンド」だったが1アンダー70は復帰戦としてはまずまずの暫定11位タイの滑り出しとなった。
「どのスポーツでもアスリートにはいかにメンタルヘルスが重要かということを痛感している。成績の良し悪しで不機嫌になったりしてはもったいない。素晴らしい人生を与えられているんだからどんな状況でも自分はハッピーでいたい。今はハッピーでいることが一番大事。人生を楽しみたい!」
ウルフはまだ22歳。本人の気持ち次第(メンタル次第)でいくらでも未来は変えられるはずだ。