マスターズ初日を終え、首のケガが心配された松山英樹だったがイーブンパーの19位タイで無事フィニッシュ。週刊ゴルフダイジェストのツアー担当・ケンジロウがバンキシャらしく、松山の一挙手一投足をレポート!

こんにちはケンジロウです。ジョージア州のオーガスタよりお届けしております。

いよいよ今日からマスターズが開幕しました。ディフェンディングチャンピオンの松山英樹。怪我をかかえての試合で、果たして「どの程度の戦いができるのか」が注目されていまいたが、フタを開けてみたら、3バーディ、3ボギーのイーブンパーでフィニッシュ。4か月まともに試合に出ていなかった状態としては、上々の滑り出しと言えるんじゃないですかね。

3月初旬の「アーノルドパーマー招待」で怪我をして以来、試合でまともにフルスウィングしたのは、先週のバレロテキサスオープンの2日間だけですからね。

先週もスウィングの手探り状態でしたから、今日実際に大舞台の中でしっかりフルショットしたら、「スウィングがボロボロになってしまうのでは」と心配する声もありました。

さらに私が不安要素と感じていたのが、アプローチでした。ほぼ一カ月近く実戦から遠ざかっているので、ショートゲームでいつものような感覚が出せないのではないか。実際にプレーヤーズ選手権を欠場する前の会見で、「アプローチに不安がある」という言葉を口にしていましたし、アプローチが大事な場面で足を引っ張るのではと考えていました。

画像: ケガをかかえ、どの程度のプレーができるのか心配されたが、ギャラリーと関係者の不安を吹き飛ばすようなラウンド内容だった

ケガをかかえ、どの程度のプレーができるのか心配されたが、ギャラリーと関係者の不安を吹き飛ばすようなラウンド内容だった

しかし、そんな心配は1番ホールで杞憂に終わりました。

1番ホールの2打目がグリーンの左サイドにいってしまったのですが、残り37ヤードの上りのアプローチの状況で、そこから見事な距離感で寄せてピンそば60センチにつけました。

その後も2番、6番、8番、10番、12番、17番、18番と、じつに今日は7回も寄せワンを拾っていましたね。

12番ホール、パー3、池に落としてしまったあとの3打目のアプローチも見事でしたよね。松山はドロップする位置を冷静に選び、グリーンへの角度がつく右サイドにドロップ(13番のティーイングエリア側)。残り69ヤードをベタピンにつけてのナイスボギーでした。

あのあたりの冷静さがなんとも素晴らしい。池に落としたあとで焦ってしまったり、力が入ってしまったり、にならないですからね。

思えば昨年優勝したときも、15番ホールで池に入れた後のリカバリーのアプローチは最高でしたよね。松山本人もそのアプローチが「昨年のマスターズでのベストショット」と言っていましたから、やっぱりオーガスタはこうやって“しぶとく拾っていくゴルフ”がスコアメイクにつながるんでしょうね。その12番のナイスボギーが、その後の13番のバーディ、15番のバーディといい流れのきっかけになったのは間違いありません。

画像: アーメンコーナーの12番では池にボールを落としてしまうがドロップ後残り69ヤードをベタピンにつけナイスボギー

アーメンコーナーの12番では池にボールを落としてしまうがドロップ後残り69ヤードをベタピンにつけナイスボギー

実際にその12番ホールあたりから、尻上がりにショットがよくなっていきました。

序盤こそドライバーはタイミングが合わずに右にいっていたのが、そのタイミングもだんだんとあってきて、14番、17番、18番は本当に完璧なティーショットが打てていたと思います。18番のドライバーでのティーショットを後ろから見ていましたが、フェアウェイに見事なストレートボールを打っていました。

画像: 最終18番ホールは見事なストレートボールでフェアウェイをとらえる

最終18番ホールは見事なストレートボールでフェアウェイをとらえる

その中でも私が今日のベストショットに選びたいのが、15番のパー5の2打目。これはZOZOの最終日18番の2打目を彷彿とさせるようなスーパーショットでした(15番グリーンのスタンドのギャラリーの歓声が意外と少なくてびっくりしました。マスターズのパトロンは辛口ですよね……)。

15番の2打目地点、グリーンが空くまでずいぶんと待たされている間、松山英樹はクラブジャッジにかなり悩んでいる様子でした。ヤーデージブックを見ると、ピンまで残り260Y。ボールの位置はフェアウェイのやや左サイドですが、ピンは右奥なので木はまったく気になりません。

5番ウッドでいくか、はたまた刻むのか? 15番のグリーンが空き、松山がバッグから取り出したのはスプーン(3番ウッド)でした。

奥は池、手前も池、グリーンの手前5ヤードぐらいまでは池に向かって戻ってきてしまいますので、グリーンのタテ幅もそんなにありません。

スプーンだと奥にこぼれないのか? カットに打つのか? そんなことを考えて見ていると、松山が放った高い弾道のフェードボールは手前8.5メートルにつきました。2オンに成功して、2パットのバーディ。今年から長くなった15番ホールを見事攻略してみせました。

「距離がアゲンストでピンが260Yだったので、奥の池の心配がなかったので気持ちよく打てました」(松山)

アゲンスト、つま先上がり、奥が池、打ち下ろし、自分のコンディション、そしてスプーンの距離感と、“松山英樹コンピューター”の中にいろんな条件の計算式を入れて、答えをはじき出していたわけですね。

画像: 3バーディ、3ボギーのトータルイーブンパー、19位タイで初日を終えた松山。週末に向けて期待が高まらずにはいられない

3バーディ、3ボギーのトータルイーブンパー、19位タイで初日を終えた松山。週末に向けて期待が高まらずにはいられない

でもその出た答えに対して、実際にその番手を持ってスウィングをやり切るのって、やっぱりすごい。まさにショットの感覚を取り戻した松山英樹。16番はバーディこそ逃したものの、15番の2打目と同じようなフェードボールで3メートル弱につけるスーパーショットを打っていましたよ。明日からのプレーに期待を持てる最後の6ホールでした。

実戦でのフルショットのいい感覚が戻ってきたのかを試合後に聞いてみると、

「さぐりさぐりだったんですけど、後半はフェアウェイにいく回数が多かったんで良かったと思います」(松山)

と本人も手ごたえを感じている様子。序盤こそタイミングが合わずに右に行くことが多かったですが、確かに10番のティーショットあたりからじょじょにタイミングが合ってきたように思えます。

このまま痛みが発症せずに、尻上がりにショットがよくなってくれば、週末に向けて期待が高まりますね。

夕暮れが迫る中で見せた、18番ホールの糸を引くようなドライバーの弾道は本当に記憶に残りそうな素晴らしい打球でした。

写真/Blue Sky Photos

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