まずはアドレスから比較してみましょう。アドレス(P1)ですが、2000年と現在の違いは、(1)スタンス幅 (2)左手のグリップ (3)胸の右サイドベント(側屈)の角度の3点にあります。
まず(1)スタンス幅、2000年のほうがが広く、現在のほうが狭くなっています。これは当時のタイガーはテークバックでしっかり右足に体重を乗せて、トップからダウンスウィングでは左足に体重を移動する「左右の体重移動」が大きかったことと関連しています。現在のタイガーは、当時に比べて「左右の体重移動」は少なくなりましたが、それでも2012~2013年のショーン・フォーリーに教わっていた頃と比べると現在のほうが左右の動きは増えています。
次に(2)の左手のグリップですが、2000年のほうはグローブのロゴが見えるストロンググリップで、現在の方はグローブのロゴがあまり見えないスクエアグリップです。これは2000年当時と現在のフィジカル面と関連していて、下半身の素早い体重移動と回転が特徴的だった当時のタイガーは24歳の絶頂期。この頃は体の回転スピードに対してクラブフェースが遅れて右にプッシュするミスもまれにありましたが、現在は身体の回転を減らして、より腕を上手に使った「クラブさばき」を重視したスウィングなので、左手をストロングにするとフェースが閉じて引っ掛けやすくなるため、スクエアグリップにすることで過度なフェースターンを防ぎ、安定したフェードボールを中心としたドライバーショットでゲームを組み立てています。
そして(3)胸の右サイドベンド(側屈)の角度ですが、「スポーツボックスAI」のデータでは2000年は右14度、現在は右10度と、昔より軸がセンター寄りに近くなりました。「ドライバーはアッパーブローに打つクラブだから軸は右に傾けた方がいい」と一般的によく言われますが、右利きの人は両手をグリップして右手が左手の下になり、左足寄りのボール位置にクラブをセットする時点で、自然と左肩より右肩の方が低くなるので、意図的に軸を右に傾けずに自然とアドレスしたほうが、タイガーのようにバランスよく構えることができるでしょう。
それらにともないトップ(P4)にも違いが出ています。大きく違うのが手のポジション(LIFTの項目)で、2000年はアドレスから48.3インチと高い位置にあるのに対して、現在はアドレスから43.9インチと約4.4インチ(11.1cm)低くなり、手の深さも昔より現在のほうがやや浅くなりました。この手の位置と関連しているのが左サイドベンド(側屈)で、2000年は胸マイナス41度、骨盤マイナス6度、左サイドベントに対して、現在は胸マイナス39度、骨盤はマイナス4度、左サイドベンドと、それぞれわずかに側屈量が少なくなっているのが分かります。バックスウィングでの左サイドベンドは、多くなるとトップは高くなりやすく、少なくなるとトップは低くなりやすい傾向があります。
タイガーのトップのデータからアマチュアの方に参考にして頂きたいのは、「トップの高さは左サイドベンドの角度によって変えられる点」です。よくトップを高く大きくしたいと望むゴルファーに見受けられるエラーは、腕を上下に「上げて下ろす」という動きで高くしようとするケースが多いのですが、この場合はトップで前傾角度が崩れて地面と水平に近い「フラットショルダー」というエラーになりやすくなります。こうなると切り返し以降で上半身が過度に突っ込んでアウトサイドイン軌道になって左に引っ掛け又はスライスするか、それを防ぐために右肩が下がるとクラブが寝て下りるので、右プッシュかチーピンといったミスと隣り合わせのスウィングになってしまいます。タイガーのようにトップの高さは左サイドベンド量と関連して変わるものと覚えて頂くと、案外スムーズにスウィングが変わります。実際、身長が低い私(162cm)の私も、この事を意識して練習に取り組んだ頃から以前よりトップの高さは大きく変わりました。
いかがでしたか?タイガーも2000年当時のパワーやスピードを武器に他を圧倒したスウィングと比べると 、老練でコンパクトなスウィングに変わってきましたが、球を自在に操るテクニックは今なお色褪せていません。右足の回復具合にもよると思いますが、またいつかメジャートーナメントで優勝争いのリーディングボードに「WOODS」の名前が見れる日がもう1度きてほしいですね!