
美しい景観と戦略性の高さで評価が高いボナリ高原ゴルフクラブ(3番・530Y・パー5)
飛ばし屋有利にならないよう、2打目・3打目に違和感を与える
パー5のホールは、3回ショットをしてグリーンに乗せることが基本。現在では多くのパー5の距離が延び、なかには600ヤードを超えることも珍しくなくなっている。クラブやボールの著しい進化により、距離のあるパー5でも簡単に2オンさせてくるツアー選手が多く出現してきている。「飛ばし屋だけが恩恵を受け、ゴルフ本来のゲーム性を損なわないよう、パー5ならではの工夫がコース設計に求められることになります」とは、ゴルフコース設計家の川田太三氏。
飛ばし屋有利とならないための解決策としては「2打目を難しくし、池やマウンドに、バンカーなどのハザードを設定するなどの方法をとる」と川田氏は言う。そのハザードも斜めに配して心理的に違和感を与え、ゴルファーに錯覚を覚えさせる。それにより、ゴルファーは新たに攻略を組み立てることになる。つまり、ただ打てばよいのではなく、ゴルファーに考えさせるような心理的要素を2打から3打地点までの間に組み込むのだそうだ。

川田太三氏が「理想のパー5」という、パインバレーGCの7番。A・W・ティリングハーストが描いた“地獄のハーフエーカー”のアイデア。3打目を成功させるためには1、2打目も成功させてハザードを越えなければいけない。
2オンできる・できない、を組み合わせて変化を生む
18ホールコースを設計する際は、パー5はアウト、インにそれぞれ2ホールずつというのが基本。
「そのうちの2ホールは2オンが可能な距離、もう2ホールは2オンができない距離のホールにします。次にパー3ホールも4つ、こちらも短め・長めのホールを組み合わせることによって変化が生ま
れ、全体にバランスが整うことになります」とは、コース設計家・嶋村唯史氏。
実際の設計では、地形は非常に大きな要素で、敷地に余裕があれば、ダブルフェアウェイでしかも高低差のある2段にするなどして、バリエーションを豊かにすることができるし、デザイン的に遊ぶことも可能だという。その例として、嶋村氏が挙げてくれたのが愛知CC14番(548ヤード)。
「このホールの1打目は打ち上げで、フェアウェイは左右に分かれています。飛距離に自信があれば左側のフェアウェイを狙い、そうでなければ右側のフェアウェイから攻めていきます。攻略の選択肢があるということになり、ゴルファーの技量に合わせてゲームをすることができ、理想的ともいえるパー5のデザインです」(嶋村氏)。
また、嶋村氏は「私の師である井上誠一さんは『同じ番手のクラブを2回続けて使わせない』としていました。その理由は『同じクラブではゲームの変化、面白さにならない』というもので、ドライバーで打ち、次はフェアウェイウッドでグリーン手前まで運び、そして3打目はアイアンでピンを狙う。これがクラブ選択の変化でありゲーム性だとするからです」と話してくれた。

嶋村氏が描いてくれた「ダブルフェアウェイ」の例。フェアウェイをハザードなどで分断することにより攻略ルートはゴルファーの飛距離に応じて多くなる。ハザードを設置することで飛ばし屋有利になることもなく、難易度や景観に変化をつけることができる。

愛知カンツリー倶楽部(14番・548ヤード・パー5) フェアウェイは2段になっていて、左ルートは高く、右は低い。どのルートを使い攻めるのかはゴルファーの判断と技量にゆだねられる。中央の小高い丘を越えて打てれば2オンの可能性もある。
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